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アフターデジタルの小売ビジネスはOMO型店舗へシフトする

アフターデジタルを生き残るために重要なOMOというトレンド。
世界的な傾向であるにも関わらず、日本はどうしてもリアル店舗寄りの視点でビジネスを展開しがちと指摘する声もあります。
今回は、タオバオがシンガポールにオープンした「OMO型店舗」や、顧客体験を重視して成功したスタートアップ企業「b8ta」の事例を紹介するとともに、OMO発祥の国である中国の最新動向についてひも解いてみました。

【目次】

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中国発のOMOがアフターデジタルの主流になる

別記事でも何度か取り上げているアフターデジタル。人がデジタルに常時つながり、オンラインの中にオフラインが含まれている状態であることを示す概念です。
今後のビジネス展開においては、このアフターデジタルを理解し、それに沿って施策を講じていくことが重要とされています。日本は物流や小売について考える時、ついリアル店舗(オフライン)をベースとして考えがちなので、注意が必要という専門家もいます。

アフターデジタルにおいて重要なOMOというワードは、「オンラインとオフラインの融合」をあらわす「Online Merges with Offline」の頭文字をとったものです。
Googleの中国トップを務めた経験をもつ、SINOVATION VENTURESの創業者、李開復(リ カイフ)によって提唱され、現在では世界的によく知られるワードになっています。

OMOについての基本的な概念や、OMO以前のトレンドであったO2Oの違いについては、「OMOとは:O2Oとの違いとアフターデジタルのマーケティング」を参照してみてください。

タオバオがOMO型家具ショップをオープン!

2019年9月5日にタオバオ(淘宝網)がシンガポールにオープンした「Taobao Store by Virmall」は、ニューリテール型の家具ショップです。
ここで顧客は、リアル店舗である「Taobao Store by Virmall」に展示してある実際の商品を体感しながら買い物をすることができ、在中している店員に商品についてたずねることもできます。

ほかのショップと異なっている点は、購入する際は商品についたQRコードをスキャンすること。スキャンするとタオバオのオンラインショップに移動します。つまり、大きな家具やかさばる家電品は、タオバオのオンラインショップで決済され、中国かシンガポールの倉庫から購入者の自宅へと品物が送られるのです。シンガポールのタオバオ倉庫に商品がある場合、1~3日以内に商品が手元に届く仕組みになっているようです。

もちろん、小さな商品はその場で購入して持ち帰ることができますが、家具店という特性上、多くの顧客はオンラインショップで購入し、配送を待つことになるでしょう。
ニューリテール戦略と越境ECが融合した、新たな小売のかたちがここにあります。

シンガポールでは、すでに若年層の間でOMO型店舗の利用やショッピングが定着しつつあるということで、リアル店舗で大きな家具や高額な商品を購入する従来の購買スタイルは時代遅れとみなされることもあるようです。

http://www.virmall.asia/taobao-store/

シリコンバレー発体験型テクノロジーショップが好調!

2015年に開設されてから、米国の主要都市の独立店舗と、ホームセンター大手のLowe’s内店舗、併せて80店舗以上を展開している「b8ta」は、顧客体験型店舗の先駆け的存在のひとつです。
この「顧客体験」重視も、アフターデジタルにおけるOMO型店舗において必要な概念といえるでしょう。というのも、ECの唯一の弱点が「実物を見て購入できない」というものだからです。
クリックひとつで24時間どんな場所でも欲しいアイテムを購入できるECは、確かに便利です。しかしPCやスマホでは、購入前に材質を確かめたり、使い勝手をチェックしたりすることはできません。
これは、これまでになかったまったく新しい製品をリリースする時や、こだわりの質感、風合いをもつ製品を販売したい時は、著しく不利な点といえます。OMO型店舗が世界のビジネストレンドになっているのは、こうした弱点を克服できる可能性が見出されているためでもあるでしょう。

b8taは、最新のプロダクトを迅速にそして効率的に市場に届けることをモットーとしています。プロダクトをリリースするスタートアップ企業と協力関係を結び、顧客がプロダクトに触れることができる場所として運営。革新的なプロダクトを世に送り出すスタートアップ企業は、b8taに製品を置くことで、顧客に実際に製品を体験してもらうことができます。

また、店内カメラによって顧客の行動や販売履歴を計測しているので、それらのデータを受け取り、次の製品開発に活かすこともできるようになっています。

b8taをひとつの事例としてみる際、重要になるのはb8taが「プロダクトを販売することで収益を得ている」のではなく、「プロダクトの展示やそれに触れる顧客のさまざまなデータを提供することで収益を得ている」という点です。
販売スペースの提供ではなく、顧客の集まる場の提供、そして彼らの行動データの提供が、b8taのビジネスです。
b8taについて、b8taのCo-founder、PresidentのPhillip Raubは、ある種のメディアの役目を果たすビジネスであり、ショールームとリテールストアのコンビネーションという形をとっていると語っています。

https://b8ta.com/

中国では当たり前の「OMO」を日本が理解するためのおさらい

タオバオの家具ショップに代表されるように、デジタルとリアルを切り離さない考え方は、世界で主流になりつつあります。当たり前の概念であるがゆえに、中国では「OMO」という単語自体がほとんど使われなくなっているという声もあります。
しかし、日本企業はその波に乗れていないとみる専門家は多く、企業の考え方自体が変わらないとOMO型店舗の登場や浸透は難しいものがあるでしょう。
では具体的に、OMO型店舗とはどのような条件や状態の店舗をいうのでしょうか?
それを知るために、OMOというワードの提唱者である李開復が挙げた、OMOが発生する4つの条件についておさらいしておきたいと思います。

OMOの発生条件1:モバイルネットワークの普及

OMOの発生条件として李開復が言及している、モバイルネットワークの普及。これは、いつでもデータを取得することが可能になり遍在的な接続をもたらすものです。
ひとり一台のPCやスマホ、タブレット端末の普及がこれに当てはまります。2020年からは学校の取り組みにおいてプログラミング教育もスタートするため、今後の若い世代はよりモバイルネットワークと近い状態で成長することになるでしょう。

OMOの発生条件2:モバイル決済浸透率の上昇

次はモバイル決済浸透率の上昇です。
日本のモバイル決済の浸透率は、ほかの先進国と比較すると総じて低い傾向にあります。
これは、日本が現金文化であることと、決済リーダーの統一規格が定められずに各社の端末が混在していることが一因といえるかもしれません。
海外では、ペットボトル1本、雑誌1冊をクレジットカードで支払うことが日常化している国も少なくありませんが、日本はそのような文化的背景をもたないため、モバイル決済が政府の思惑ほど日常生活に浸透しないということも考えられます。

とはいえ、世界各国がモバイル決済に向かって突き進んでいるかというとそうではなく、米国では「現金お断り(モバイル決済かカードのみ)」を禁止する動きも出てきています。モバイル決済には引き落としのためのクレジットカードが必要ですが、米国には一定数クレジットカードを持たない貧困層がいるからです。モバイル決済かカードのみでしか支払えない店舗は、こうした人々を差別するものだとして不当とする動きがあります。

モバイル決済が浸透していくと利便性は高まりますが、世界的な情勢をみるかぎり、現金支払いがすべてモバイル決済に置き換わるというわけではなさそうです。
そのため、この項目の意図するところはあくまで「浸透率の上昇」であり、幅広い年齢層が気軽に支払いの選択肢としてモバイル決済を選べるような環境にするというイメージになるでしょうか。

OMOの発生条件3:豊富な種類のセンサーが遍在すること

3つめのOMOの発生条件として、店舗側、企業側の設備に不可欠といえるのがさまざまなセンサーです。
現実の動きをオンラインで捕捉するためには、カメラやタッチセンサーといった機器が必要になります。現実の顧客の動きをデジタル化し、データを分析ツールで解析できるようにするためには、高品質のセンサーが安価で手に入るような社会になっている必要があると、李開復は解説しています。

OMOの発生条件4:ロボットやAIの普及

4つめはロボットやAIの普及です。自動化されたロボットやAI(人工知能)が収集したデータを余すことなく分析できるようになります。最終的に、物流(サプライチェーンプロセス)も自動化することが可能とされています。

オフラインにオンラインをつけるのではなく、オンの中に取り込む

日本企業がおちいりがちな思考に、オフライン(実店舗や企業の現在のあり方)に、オンラインを付随させるというものがあります。
日本の企業やビジネスのあり方は、オフラインを土台として考えることに慣れてしまい、現在の主流であるオンラインを土台とする考え方にシフトしきれていません。
中国をはじめとする海外諸国では、「オンラインが土台であり、実店舗などのリアルチャネルは顧客とコミュニケーションがとれる貴重な場」という考え方が浸透しています。
オンラインとオフラインの融合とひとくちにいっても、どちらを土台とするかでビジネスのあり方は大きく変わってきます。今後OMO型店舗を日本で確固たるものにするためには、この違いをしっかり理解しておかなければなりません。

AIの4つの波をみるとOMO型店舗のその先が見えてくる

李開復は、AIと人間が今後どのように関わっていくのかというテーマについて「AI Superpowers: China, Silicon Valley, and theNew World Order」という本を書いています。
米国Amazonでベストセラーとなったこの本では、AIに4つの波があると説明されています。

  1. Internet AI(インターネット上の行動予測AI)
  2. Business AI(企業のデータ最適処理、予測AI)
  3. Perception AI(物理世界をデジタライズするAI)
  4. Autonomous AI(AIの自律機械化)

この3つめの波(Perception AI)は、OMOだとされています。
第1、第2の波までは、パソコンをはじめとするデジタル機器でのみしか、インタラクションを得られませんでした。AIを活用するための接点が非常に限られていた状態です。
しかし第3の波においては、AIが我々の行動や表情、声といった材料を認識することができるようになり、接点が爆発的に増えています。また、接点というよりはオフラインとオンラインの垣根を超え、シームレスにつながっている状況といえます。

この第3の波を迎えたことで、店舗だけでなく、家の環境のOMO化も進むだろうと彼は記しています。中国は、Perception AIにおいて重要なハードウェアの開発、実験においても多大な役割を果たしており、諸外国に比べてAI分野で大きくリードしている状況にあると考えられています。

まとめ

常時デジタルとつながっている現代社会に浸透しつつある、OMO型店舗。日本でこうした形態のビジネスが一般化するかどうかは未知数ですが、世界のトレンドは確実にOMOへとシフトしています。
顧客との接点(タッチポイント)の作り方が従来とは大きく異なってきていることは、多くの経営者も実感していることでしょう。問題は、そこからどのような視点で新たな接点をつくっていくかということです。

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