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「RaaS」日本上陸でD2C企業に追い風。海外の企業事例とメリットについて

「D2C戦略をもっと軌道に乗せたい」
「新しい付加価値を作りたいが、リソースが不足している」
とお悩みの方へ。

小売業も時代と共に新しい戦略が求められ、つねに進化しなくてはなりません。自社だけで進化し続けるのは多大なコストがかかるものです。しかし「RaaS」(ラース)というビジネスモデルの登場により、他社と協力して付加価値を作るという動きが起こっています。

「RaaS」の概要やメリットについて、RaaSをソリューションとする企業の事例を交えて解説します。

目次:

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RaaSは「サービスの小売業」

RaaSとはRetail as a Serviceの頭文字を取った言葉です。「Retail」とは小売のことであり、直訳すると「サービスとしての小売」という意味があります。

RaaSは小売業ですが、顧客ではなく企業相手にサービスを小売りするBtoBのビジネスモデルです。別の企業に自社のサービスを販売することで、新しい収益を生み出そうとする目的があります。

RaaSをビジネスモデルとした企業は増えており、新しいチャンスとして大手小売業者も積極的に導入しています。

他社の持つデータやテクノロジーを自社と掛け合わせるRaaSモデルなら、消費者にパーソナライズされた商品やサービスが提案できるようになり、付加価値の創造につながるのです。

RaaSは「ロボティクス・アズ・ア・サービス」を指すことも

実はRaaSには、サービスとしての小売以外の意味もあります。「Robotics as a Service」、つまりロボットメーカーがロボティクスサービスを提供するビジネススタイルもRaaSというのです。

ロボットを活用するRaaSには、主に2つのビジネスモデルがあります。

  • 顧客が支払った金額に応じて、ロボットの能力やストレージを提供する
  • 一定期間契約することで、RaaS企業がロボットそのものを貸し出す

つまりRaaS企業には、ロボットの機能のみを提供する場合とロボットそのものを提供する場合があるということです。

多様化するaaS(アズ・ア・サービス)のビジネスモデル

RaaS以外にも、「サービスとして」という意味を持つaaS(アズ・ア・サービス)のビジネスモデルは多様化しています。

  • SaaS(Software as a Service)…ソフトウェアとしてのサービス
  • PaaS(Platform as a Service)…プラットフォームとしてのサービス
  • IaaS(Infrastructure as a Service)…ハードウェアとしてのサービス

RaaSをソリューションで提供する「b8ta(ベータ)」

米国ではRaaSモデルをソリューションとしている企業として、“店舗”を提供するb8taが知られています。

b8taは2015年に米国サンフランシスコで生まれた小売企業であり、RaaSモデルとして他社製品のプレゼンテーションの場を提供しています。そしてRaaS戦略が大成して、2020年時点でドバイにも1店舗出店、実店舗としては世界で25店舗も展開しているのです。

創業当時からRaaSモデルでビジネスを行っており、今ではガジェット以外にもアパレルなど多ジャンルの商材を取り扱っています。

2018年から他企業への提供をスタート

創業から3年が過ぎた2018年、b8taはRaaSモデルとソフトウェアプラットフォームを他企業に提供し始めました。

b8taが手を組んだ企業は国内でも著名な企業も含まれており、多くの企業がRaaSというビジネスモデルの魅力を感じています。

たとえば、b8taは以下のような企業にRaaSサービスを提供しています。

  • Google
  • Macy’s
  • トイザらス

b8taが成功を掴んだ「体験型小売店」とは

b8taは4年間で1,500を超える新製品を市場に送り、前述したような大手小売店も低迷期から救ってきました。

b8taが提供するRaaSモデルが成功した背景には、「店舗の体験」という大きな付加価値があるのです。

店舗運営サービスをRaaSとして提供するb8taには、「お店で実際に製品を体験できる」という付加価値があります。

ガジェットやソフトウェアを開発するスタートアップ企業にとって、実際にユーザーに触れてもらう機会は得難く、大変重要なものです。b8taはRaaSによって「顧客の体験」までを創り出す戦略で、ECサイトでは得られない付加価値を創り出したのです。

b8taの場合、提供先の企業には以下のものをRaaSとして提供します。

  • 店舗の場所(商品やサービスの展示スペース)
  • 販売スタッフとその教育
  • POSデータや顧客の行動データ

提供先の企業は、b8taのRaaSモデルを活用することで以下のメリットを受けられます。

  • 自社で店舗や販売スペースを確保しなくて良い(b8ta店舗内で展示される)
  • スタッフの募集や教育にコストをかけなくていい
  • 顧客の行動データをb8taからもらうことで、製品やサービスがニーズにマッチしているかチェックできる

b8ta(ベータ)が2020年夏に日本に参入。日本の大手企業と提携

RaaSモデルで成功しているb8taが、ついに2020年に日本に進出します。b8taは日本進出にあたり、米国の企業ベンチャーキャピタルと共同で日本法人「b8taJapan」を設立しました。

参考:https://b8ta.jp/

新宿と有楽町に2店舗同時出店を予定しており、その後も国内へ進出する見込みとなっています。

そしてベンチャーキャピタルには、大手の国内企業が複数出資しているのです。

b8taJapanには国内企業が出資している

b8taJapan設立に出資した国内企業は、以下の4社があります。

  • 株式会社カインズ
  • 株式会社丸井グループ
  • 三菱地所株式会社
  • 凸版印刷株式会社

b8taが2020年夏に出店する新宿と有楽町は、実は丸井グループが保有する新宿マルイ本館と三菱地所が保有する有楽町電気ビルなのです。

上記4つの国内企業が出資した理由は、b8taJapanが展開するRaaSモデルが提供する「体験型小売店」という点です。

どの企業も「D2C」スタイルのビジネス戦略を考えており、RaaSはD2Cモデルを成功させる大きなステップとして考えているのです。(D2Cについては後述します)

b8ta出店の流れ

RaaSを利用したい企業がb8taに出店する時は、以下の手順となります。

  1. 企業はb8taに製品を納める
  2. 企業はb8taに「場所代」を支払う
  3. b8ta店舗内に製品が配置され、ディスプレイが割り当てられる(ディスプレイでPRや説明動画を流せる)
  4. b8taは店舗スタッフに製品の説明や企業の考え方などの教育を行う
  5. ユーザーがb8ta店舗内に配置された製品を試したり購入したりする
  6. b8ta店舗内に設置されたカメラでユーザーの行動や消費データを蓄積。ユーザーの行動データはb8taが分析まで行う
  7. 企業はオンライン上でPOSデータや顧客の行動データを取得。マーケティングに活かせる

b8taを利用する企業が支払うのは場所代のみで、b8ta店舗内で製品が売れてもコミッションは発生しません。

また米国のb8taでは、b8taのWebサイトで製品の紹介・販売までしてもらえます。「自社製品をぜひ試してほしい」という企業にとっては、大きなメリットとなるでしょう。

RaaSはスタートアップ企業に多くのメリットをもたらす

RaaSという新しい小売モデルの登場で、スタートアップ企業はさまざまなメリットを得ることが可能です。

潤沢な資金がなくても立ち上がりが早い

スタートアップ企業が製品を開発して世に広めるためには、資金調達が欠かせません。

製品開発以外にも、顧客に購入してもらうまでには多くのコストがかかります。軌道に乗せるまでには資金調達に苦労する企業も多く、どうしても立ち上がりが遅くなりがちです。

しかしRaaSを利用すれば、少ない資金でも他社の優れたサービスを利用できます。

たとえばb8taの店舗運営サービスを利用した企業なら、出店資金がなくても製品をユーザーに試してもらうことができ、その反応データまで手に入ります。

前述したようにb8taのRaaSモデルを利用すれば、月額料金を支払うことで従業員や店舗スペース、POSや物流サポートまで“使い放題”となるのです。b8taはサブスクリプションなので、撤退も容易。その点も“身軽さ”も大きなメリットとなります。

顧客の行動データを分析できる

RaaSサービスを提供する企業はデータ分析技術を持っているケースが多く、利用する企業にデータ分析のノウハウがなくてもデータを活用できるのも魅力です。

b8taも顧客データの分析サービスを提供していますが、このサービスはb8taに限ったことではありません。

米国オハイオ州にある食品雑貨販売業Kroger(クローガー)は2018年にRaaSモデルを始めると発表。Microsoftとパートナー契約を結び、「EDGE」というスマートシェルフサービスを展開しました。

クローガーはMicrosoftに対して、売り場知識のノウハウと顧客データをRaaSとして提供しています。そしてMicrosoftはクローガーの提供するデータを基に情報配信を行うことで協業しているのです。

参照:Bizzine「小売業のサービス化「RaaS」とは──多様化する「生活者の購買接点」を再構築し、業態を越境するには?」
https://bizzine.jp/article/detail/4078

Microsoftがデータ分析技術を持っていないわけではありません。しかし小売業のノウハウや食品購入に至る消費者データを取得して分析するのは、やはり食品雑貨を販売するクローガーのほうが専門的な知見を持っているでしょう。

このように大手小売企業とITベンダーが手を取り合うことで新しい価値が生まれ、企業同士のシェアリングエコノミーが生まれているのです。

中国企業もRaaS戦略を発表

RaaSを始める企業は世界中で増えており、中国の大手企業もRaaS戦略を発表しています。

SuningがRaaSで小売業界のデジタル化を目指す

中国の家電小売り販売店であるSuningは、2019年1月にRaaS戦略を発表しました。Suningは小売業界のデジタル化を進めることを目的に、RaaS戦略を練っています。

Suningは以下のような独自ノウハウを保有しており、それらをRaaSとして他企業に提供すると思われます。

実店舗における熱的分布分析

店舗内の客の流れを計測して、パーソナライズされた好みを把握。熱分析によってヒートマップを作成して、消費者の習慣を分析する

Biu Robot

店舗内を循環するロボット。軽量認識技術で顧客がピックアップした商品を認識して、支払処理を行う。顧客はロボットのQRコードをスキャンするだけで支払いが完了する。

Suningは中国内2位の商業企業

1990年創業のSuningは中国非国有企業で2位/500位のトップ企業であり、「業界のエコシステムを主導する」という使命を持っています。

その言葉通り、RaaS戦略を発表した後もSuningはシステム開発を深めており、世界各国のAIユニコーン企業ともパートナー契約を結んでいます。

Suningは日本国内にも上場企業を保有しているため、RaaS戦略を日本で広める時期が来るかもしれません。

RaaSの広がりはD2C企業に追い風となる

企業の独自ノウハウや技術をB to Bとして提供するRaaSは、とくにD2C企業にメリットが大きいといわれています。

リソースや技術者不足で伸び悩むD2Cこそ、RaaSを活用することが飛躍のきっかけとなるかもしれません。

D2Cのビジネスモデル

D2Cとは、Direct to Consumerの略です。流通業者や小売店を経由せずに、メーカーが直接顧客に商品を販売する業態を指しています。

D2Cでは企画からそのメーカーが行うので、商品企画から販売までをすべて自社で完結できるのです。D2Cでは、企業にとって以下のメリットがあります。

  • 顧客との距離が近く、信頼関係を築きやすい
  • 利用者の声や行動データが直接手に入る

RaaSなら店舗を“広告”として利用できる

b8taのように店舗運営というサービスを提供してくれるRaaS企業があれば、「自社商品を知ってもらう・体験してもらう場所」としても活用できます。

最近では“ショールーミング”という言葉も生まれました。商品を実店舗で見た後にECサイトで購入する消費行動を指し、「購入前に実際に手に取ってみたい」という消費者のニーズが現れています。

ユーザーが自社で保有する店舗で商品を見て、Amazonなど別のECサイトから購入されると企業に利益は発生しません。そのため、店舗を保有している小売業にとっては対策が必要となります。

参照:小売業が「ショールーミング」対策するための5つの方法

しかし顧客に直接自社商品を販売するD2Cであれば、b8taのようなRaaSで「顧客が商品を試す場所」を提供できます。

このように企業同士が協力するRaaSモデルが広がれば、新しい付加価値でさらにビジネスチャンスを広げることができるのです。

まとめ

「サービスとしての小売」を意味するRaaSについて、事例を交えて紹介しました。ITが発達した現在では、BtoCだけではなくBtoBのビジネスにも変化が訪れています。

「自社に付加価値を付けたい」「足りない技術があるが、コストが追い付かない」という企業は、ぜひ他社の提供するRaaSの導入を検討してはいかがでしょうか。

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