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日本に初上陸した売ることを目的としない小売「b8ta」は、何がすごいのか?

2020年8月1日、話題の“体験型店舗”b8taの日本初上陸店、b8ta Tokyo Yurakuchoと、b8ta Tokyo Shinjuku Maruiがオープンしました。

COVID-19感染拡大という予想外の影響を受けた状況下でのオープンとなりましたが、初日から来店者数は各1,000人を越え、連日地上波、ウェブメディアなどで取り上げられるなど、注目度の高さが伺えます。

なぜ、b8taがここまで注目されるのか?

それを、企業の視点、顧客の視点それぞれから深掘りすることで、今後の小売業が在るべき姿を描くヒントを見つけたいと思います。

目次:

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米国発、RaaSのパイオニア

b8taはもともと2015年に米国サンフランシスコで生まれた小売企業です。創業当時から、“RaaS(Retail as a Service、サービスとしての小売)”企業を謳っており、現在店舗数は米国内で23店舗とドバイに1店舗を展開。日本のb8taは、それに続く25店舗および26店舗目ということになります。

日本におけるb8taは、ベンチャーキャピタルとの合弁会社として設立されたベータ・ジャパン合同会社が運営しており、出店場所にもなっている丸井グループをはじめ、三菱地所や凸版印刷などの企業から総額11億円の投資を受けています。

米国、ドバイときて次に選ばれたロケーションが日本というのも面白い展開だと感じますが、これについてはベータ・ジャパンのカントリーマネージャー北川卓司氏は、「日本にはガジェット好きな人が多く、高いサービスレベルが求められる日本で成功すれば、今後進出を見据えるアジアのいずれの国でも通用すると考えた」という趣旨のコメントを残しています。

“売ることを目的としない小売”

b8taは「売ることを目的としない小売」というコンセプトがたびたび取り上げられます。

コンセプトが示す通り、彼らのビジネスモデルは、商品を販売した利益を得る、というものではありません。b8taは、言うなれば“リアル店舗のプラットフォーム”であり、そこに商品を出品した企業から得る「出品料」が収益の柱となっているのです。

出品料は、1区画(60cm×40cm)月額30万円、最低契約期間は6ヶ月のサブスクリプションモデル。什器や商品を説明するためのタブレットなどは全てb8taが準備し、接客もしっかりと事前に商品について学習したb8taのスタッフが行ってくれるため、出品者は比較的気軽にリアル店舗で顧客との接点を持てるのが魅力です。

加えて、b8ta最大の特長は、来店客の店内の行動を、AIカメラなどを駆使することでマーケティングデータとして可視化、出品企業にフィードバックすることにあります。出品企業は幅広いデータをフィードバックされることにより、商品のさらなる改良や、販売計画に活かせるというわけです。

このスタイルはサンフランシスコでの創業当時から一貫しており、b8taがRaaSの草分けである所以です。

日本版のb8taに出品されている商品は、日本初上陸のガジェットから便利な調理器具、コスメ、アパレルなどライフスタイル全般に及んでいます。b8ta側では特に商品をキュレーションすることはないとのことですが、陳列する枠に限りがあるのと、実際に出品するにあたり、商品の打ち出し方やストーリーを練り込む「企画」の期間が必要となるため、出品料を払えば今すぐ陳列できる、というものでもないでしょう。

b8taによれば、出品の企画から実際に商品を陳列して運用を開始するまでは約4週間ほど、ということになっています。

https://b8ta.jp/

b8taのストロングポイント

売ることを目的とせず、来店者が実際に商品を体験できることに価値を置いた小売の形態は、近年の大きな潮流となりつつあると言えるでしょう。国内でも、類似したスタイルの店舗が複数出てきています。

例えば、蔦屋家電+(プラス)や、渋谷パルコに出店しているBooster Studio by CAMPFIREなどは、b8taと同様、テクノロジーを駆使して来店客の行動データを収集するスタイルを取っています。

このあたり、各社がしのぎを削っている状態とも捉えることができ、「店内の行動データ収集する場である」ということは、新たなリアル店舗の価値の一つになっていく可能性もあるでしょう。

その中でも、b8taが出品企業にフィードバックする顧客データは、その数、種類共に現時点では圧倒的に充実していると感じます。

リアル店舗でのデジタルマーケティングを可能に

出品企業が閲覧できる「b8taダッシュボード」では、製品の前を通り過ぎた人数、商品デモが実施された回数、販売実績などを含めた、実に13種類ものデータが確認できます。

かつ、独自に定義されたデータもユニークです。

例えば、商品の前を通り過ぎた人々のうち、商品前での滞在期間が5秒未満の人は「IMPRESSION」、5秒以上滞在した人は「DISCOVERIES」としてカウントされます。当然、「DISCOVERIES」の方が商品に対する関心が高かった人々と考えられます。

IMPRESSIONからDISCOVERIESへ、そしてDISCOVERIESからDEMOSへ、の移行率を見ることができるなど、b8taの店内だけで“マーケティングファネル”が出来上がっており、出品企業は、出品している6ヶ月間、それらの数字に基づいて様々な仮説を立て、PDCAを回したり、新たな販売計画に活かしたりできる——これはまさに、これまで困難とされてきた、リアルな場でのデジタルマーケティングを可能にする画期的なサービスなのです。

D2Cとの相性は抜群

D2Cブランドの多くは、もともとECなどオンラインチャネルからスタートしており、それらのブランドが、顧客と繋がるリアルな接点を持ちたい場合、b8taは最良の選択の一つと言えるのではないでしょうか。

コストを抑えて効率よく出店できますし、上で述べたようにPDCAを回すためのデータも入手できます。しかも、場所は東京の一等地です。デジタルマーケティングで言えば、「良質なトラフィックが見込めるメディアに出稿する」かのような気軽さ、手軽さで商品を出品できます。しかも、デジタルマーケティングだけでは不可能な、商品のリアルな感触まで顧客に伝えることができ、生の声をフィードバックしてもらえます(実際、b8taダッシュボードでは、接客したスタッフから定性的な顧客の声をフィードバックしてもらうことも可能とのこと)。

中・小規模のD2Cブランドだけでなく、例えばこれまでダイレクトなチャネルを持っていなかった大企業が、実証実験的な商品をローンチする場としてもb8taは理にかなっているはずです。

“セレンディピティ”が生まれる店舗

顧客側としてのb8taの価値は、実際に商品を手にとって触れること以外に、「セレンディピティ(偶然の出会い)」が生まれる、という部分が非常に大きいと感じます。

b8taが語られる際、企業側からの視点だと、どうしてもマーケティングデータの話などのインパクトが強くて見落とされがちですが、60cm×40cmmの売り場が100区画も並んでいるわけです。そしてそこには、b8taの特性上、比較的目新しいものが数多く陳列されています。b8taは出品者をキュレーションしないとはいえ、店内を歩くこと自体が新鮮な購買体験となるはずです。

良質な書店で全く目的にしていなかったのに気になる本に出会う、それを実際に手にとってしばらく立ち読みする、それが楽しくて、何度も訪れたくなる——それと同じような体験価値がb8taには詰まっています。

気になったとしても、決してその場で買う必要はなく、あとでどうしても欲しくなったら、その時に一番便利なチャネル、方法で手に入れればいい。それは、まさにOMO時代の買い物の在り方でもあるわけです。

さいごに

現状、まだb8taのような小売店の存在は、肝心の消費者にとってまだまだ広く認知されていません。

もちろん、消費者はRaaSがいかに画期的かという類の話には興味がないので、b8taの当面のミッションは、その存在感を消費者に対してどれだけ高められるか、という所にあるのではないでしょうか。

消費者が求める店舗になれば、b8taのシステムはますます価値が高まり、小売業全体に相乗効果をもたらすことになると思います。

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