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コロナ禍で迎えた初売り 2021年の小売はどうなる

全世界の小売企業にとって、未曾有の事態となった2020年。そして2021年も、かつてない形でスタートを切ることになりました。それを顕著に表しているのが、国内の小売店では恒例となっている「初売り」、そして「福袋」の売出し方でしょう。

そして2021年も、引き続き新型コロナウイルスの影響は大きく、急場を凌ぐだけではない、恒常的な感染対策が小売企業には求められます。それは、近年大きなキーワードとなっているDXと決して無関係ではありません。

本稿では、2021年の初売りで国内各社が取った感染対策事例を挙げるとともに、今後求められていく店舗の在り方について考察していきます。

【目次】

2021年の初売りは「分散型」がキーワード

例年、小売店舗の新年といえば、初売りセールに福袋と、集客力の高い施策とともに幕を開け、特に百貨店などでは毎年それらを求めて来店した顧客で行列ができることで、良くも悪くもめでたい雰囲気に包まれていたものです。

しかし、2021年は全く様子が違っていました。

大手百貨店をはじめとする多くの小売店で実施されたのが、福袋の前倒し販売です。通常、新年を迎えると同時に販売を開始していた福袋を、2020年の年末から売り出すことで、正月三ヶ日に店舗に人が集中することを避けよう、というのがこの施策の主な狙いです。

加えて、三越伊勢丹やそごう・西武、丸井、パルコなどでは、福袋のオンライン予約販売も実施されました。

特に、パルコでは2020年の11月中旬から、2021年の1月中旬までという非常に長い販売期間を用意することで、実店舗の集客が一期間に集中しないよう考慮していました。また、そごう・西武やルミネなど、そもそも福袋を年始に売ることはせず、予約・販売を年内で完了したり、福袋の受け取り自体も宅配で対応する小売店もありました。

集客分散という視点から、福袋だけでなく、SHIBUYA109などでは「初売りセール」を年内に前倒しする、という事例も見られました。もはや「初売り」というめでたさを感じさせる意味は消失してしまった感は否めませんが、小売企業にとっては毎年売上の大きいセールであり、感染対策との両立を目指した上での苦肉の策なのでしょう。

このように、これまで恒例・常識だった新年の小売店の風景は見られなくなったわけですが、依然として新型コロナウイルスの収束に見通しが立っていない以上、今後はむしろ今年のような風景が通常な状態になることは十分に考えられます。

加えて、これは初売りという特別な時期のみならず、今後の小売店が一年を通して考慮し、その中でパフォーマンスを最大化するよう、システムや運営方法を最適化していく必要がある課題であるとも言えます。

2度目の緊急事態宣言発令の影響

2021年の年明け早々、7日には、東京、神奈川、埼玉、千葉に2度目の緊急事態宣言が発令され、続く13日には、大阪、兵庫、京都、愛知、岐阜、福岡、栃木も対象地域に追加されました。

今回の緊急事態宣言は、2020年に発令された最初のものと比べて、その内容も、それを受けての消費者のマインドも全く異なるものになっている、と考えた方がいいと思われます。

まず、緊急事態宣言の内容そのものについて。前回が、人との接触を8割減らす、ということが唱えられていたのに対し、今回発令されたものは、感染リスクが高いとされる飲食店を避ける、という観点に立脚したものとなっており、飲食店やカラオケボックスなどに時短要請を出す、というものが施策の中心となっています。

しかし、この緊急事態宣言を受ける消費者のマインドは、全く初めての経験だった最初の発令時と比較すると、かなり緩んでいる危険性があります。極端なことを言えば、飲食店さえ避ければ何をしても大丈夫、という状態になっており、そのため、飲食店ではない場所で「密」な状況を作ることに抵抗がなくなっている可能性もあるのです。

例えば、ショッピングモールや百貨店など、小売の実店舗なども、「セーフ」と捉えられる場所の一つであり、そういった意味でも、店舗を運営する側が感染拡大を防ぐのに有効な施策の徹底を求められている状況であると言えます。

そもそも人々の移動は抑制できるのか、集客は行いつつも「密」を避けられるのか、営業時間を短縮してもしっかり売上を確保できるのか。今回の緊急事態宣言の煽りを思い切り受けている飲食店も含めて、感染拡大を防ぎつつ、自社の売上もしっかりと確保する運営の仕方を確立することが、今後も引き続き大きな課題となるのです。

ここには顧客だけでなく、自社で働くスタッフも守る、という視点も含まれるため、解決することが非常に難しい課題です。

DXの推進がこれからの小売業では明暗を分ける

感染拡大を防止しながら、売上を伸ばすという課題解決と切っても切り離せないのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)です。

例えば、感染拡大防止として最も有効なのは、対面での接触を限りなくゼロに近づけることですが、そのために小売企業が求められるのはオンライン購買チャネルの整備と、そこに利便性を付け加えるならば、やはりBOPIS(Buy Online Pick-up In Store、オンライン販売で店内受け取り)のシステムなどでしょう。

コンビニなど、購入するのにあまり迷わない商材を扱う店舗では、ゆくゆくは無人店舗を完備することが、感染対策という視点に立った場合は最も理想的なはずです。

逆に、高額商品など、購入するのに迷う商品、実物に触れながら比較検討したい商品を扱う小売企業などは、実店舗への来客数を予約で制御する、というスタイルが今後は一般化していくかもしれません。これを実践し始めたのが、パタゴニアです。パタゴニアでは、2021年の1月15日から事前予約システムを一部の直営店に導入、同システムを順次全国に広げていくことを公表しています。

もっと手軽に講じることができる部分で言えば、やはりキャッシュレス決済の整備が挙げられます。中でもタッチ決済と呼ばれる、クレジットカードや自分のスマートフォン以外には触れずに決済を完了させることができるシステムは、今後もその需要が拡大し、あらゆる小売企業が早急に完備すべきシステムであると言えます。

飲食店においても小売店と同様の視点で、オンラインでの事前オーダー、キャッシュレス決済、そして店外ピックアップのシステムを早急に整えるべきでしょう。今ではこれらのシステムが手軽に導入できるサービスが数多く存在しているため、特に規模の小さな事業者に関して言えば、今すぐに動き出すべきです。

一方で、事業規模の大きな企業に関して言えば、どうしてもシステム全体の構築に多大なコストと時間がかかるため、コロナ禍以前からデジタルに投資できていたか否かで、現状の明暗がくっきりと分かれている状態と言えます。

例えば、米国の小売最大手・ウォルマートは、以前から積極的にデジタルに投資してきたことが奏功し、多くの小売企業がコロナ禍の逆風に喘ぐ中、好調を維持しています。

同社のCEO、ダグ・マクミロン氏は、新型コロナウイルスが収束した後も、オンラインによる消費は成長し続けると見通しており、その時に最も重要になってくるのが物流の効率改革であると述べています。

物流効率を高めるウォルマートの施策の一つとして注目されているのが、IoTを活用した宅配ボックスです。スマートフォンのアプリと連動した温度管理や殺菌機能も備えており、生鮮食品の宅配を簡単にするものです。

Amazonなどが「置き配」を実施していますが、対面での接触を限りなくゼロにする、という観点からも、IoTやAIを活用し高度化した宅配ロッカーの需要は今後ますます高まっていくでしょう。

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