店舗運営のAtoZ全31回

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Lesson5 店舗のICT活用編

23在庫管理システムの構築未学習

ここで学ぶ概要

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在庫管理という業務は、余剰在庫を少なくして無駄な経費を抑え、店舗の純利益を高めていくうえで重要な位置を占めていますが、様々な要因から正確性向上や効率化を進めていくのは、なかなか難しいものです。

そこで、今回は、在庫管理がなぜ難しいのかについて触れた後、それを容易にするICTツールの活用法について、以下の項目に沿って解説をしてまいります。

  • 在庫管理が難しいわけ
  1. ヒューマンエラーの発生
  2. 情物一致がなされていない
  • ICTツールの活用による在庫管理システムの構築
  1. パソコンソフトやアプリの活用
  2. POSシステムの活用
  3. 倉庫管理システムの活用
  • まとめ

在庫管理が難しいわけ

スーパーマーケットや雑貨店などの小売業では、日々の営業で売れた店内商品を適時補充するため、バックヤードなどにおいて予備商品を保管しておく必要があります。

また、飲食業や製造業では料理や商品を作るための原材料を、大型冷蔵庫や倉庫などで管理しておかなければ、店舗の営業が滞ってしまいます。

そして、商品や原材料の保管状況を把握し、コントロールすることを在庫管理と呼びますが、以下で触れていく2つの理由から、その正確性が損なわれていることが多くなります。

1、ヒューマンエラーの発生

店舗における、在庫管理業務の内訳を簡単に整理しておくと、例えば小売店であれば、

 (ア) 販売スペース内にある商品数量の把握と記録
 (イ) バックヤードにある予備商品数量の把握と記録
 (ウ) 不足分の発注や余剰在庫の廃棄
 (エ) 消費期限・鮮度など商品特性に合わせた品質管理

などがそれにあたります。
店舗の商品数や業種によって様々ですが、一般的に上記「ア~ウ」の作業を担当者が目視で商品や原材料を数え記録し、それを元に「発注数量」を決めていくことになります。

しかし、そこは人間のすることですから、どれだけ気を付けていても、数え間違いや記録ミスが発生してしまうことがあります。

特に、「発注数量」を決める業務は難しく、正確に店舗における当該商品の売上実績を把握し、将来的な売上予想を立てて、余剰在庫が出ない発注数量を決定する必要があります。

そして、市場は非常に流動的なため、いかに優れたスキルを持つ担当者であっても、在庫発注の過不足が出てしまうのは仕方のないことです。

こういった、否応のないヒューマンエラーこそが、正確な在庫管理を難しくしてしまう、真っ先に挙げられる理由です。

【ここがポイント!】
~棚卸をまめにすることで正確性がアップする~
在庫管理業務の正確性を向上させるため、多くの店舗では定期的な「棚卸」をしているはずです。

棚卸をまめにすれば、長期的な商品の動きを把握できるため、売上予想を立てるのも容易になり、最も大変な発注数量決定もやりやすくなります。

ただ、店舗営業をしながらの棚卸には大きな労力と時間がかかり、商品数やバリエーションが増えれば、より大変な作業となってきます。

この時おすすめなのが「棚卸の分割」で、例えば1年に1度すべての商品について棚卸を行っている場合なら、それを4に分け「3ヵ月に1度」の実施に変更してみるのもいいでしょう。

こうすれば実質的に、すべての在庫を「1年に4回棚卸」したことになり、より正確性がアップしてくるうえ、1度の棚卸に必要な労力や人員を減らすことができ、そして所要時間も大幅に短縮可能です。

2、情物一致がなされていない

正確な在庫数の把握や、発注数量のコントロールができたとしても、まだ在庫管理を難しくする要因は残されています。

在庫商品や原材料は、「数量データ」としてしっかりと管理されていても、生鮮食品なら痛んで売り物にならなくなっていたり、製造業においてはサビの発生などによって、使い物にならなかったりしている可能性があります。

つまり、データとして管理している数量と、物質的な価値が残っているかどうかが一致できていない、「情物不一致」になっている可能性があるということで、これが在庫管理の正確性を妨げるもう1つの要因です。

【ここがポイント!】
~大型小売店・飲食・製造業ではより在庫管理の正確性維持が困難に~
小売店の場合「在庫品=販売品」であるため、小規模店舗の場合では目視による数量確認と売上実績の分析、さらに定期的な棚卸の実施によって、ある程度在庫管理の正確性を維持することができます。

しかし、スーパーマーケットやコンビニのように、数多くの商品をラインアップする大型商店の場合、手作業による在庫管理では、ヒューマンエラー発生の可能性がグンと上がってしまいます。

また、飲食・製造業を営む店舗の場合、たった1つの原材料やごく小さな部品に不具合があるだけでも、料理が完成しなかったり製品を作れなかったりするため、確実な品質管理による「情物一致」の重要性が増してきます。

ICTツールの活用による在庫管理システムの構築

「ICTツール」を活用することにより、在庫管理がスムーズに、かつ正確に行うための「在庫管理システム」を構築する必要があります。

ここからは、店舗の規模や業種それぞれで活用をおすすめするICTツールついて、お話をしてまいります。

1、パソコンの活用

手書きによるアナログな在庫管理体制では、ヒューマンエラーが発生するリスクがどうしても高くなるものですが、パソコンソフトやアプリケーションを活用するだけでも、そのリスクを大きく減らすことが可能です。

在庫数を数えそれを「紙」に書き写して管理をしていると、破損や汚れなどによって、数字が確認できなくなってしまう可能性があります。

こうなると、再度在庫を数え直す手間がかかったり、数字を誤って認識してしまう可能性もありますが、在庫管理システムでデータ化さえしておけば、いつでも正確な在庫数を把握できるうえ、数字の誤認識による発注ミスが起こるリスクも大きく減ってきます。

パソコンを活用した在庫管理システムの構築には、それほど大きなコストがかからないため、販売する商品数の少ない小売店や、個人経営の飲食店などにおすすめとなります。

【ここがポイント!】
~入力の正確性と手間は求められますが…~
パソコンに在庫データを管理する際は、正確に在庫状況を入力する必要と多少の手間はかかりますが、入力したデータはプリンターの活用で、容易に「見える化」することも可能です。

在庫管理業務は、翌営業日の販売に備えて商品補充を実施する、営業時間終了後に合わせて行うことも多いのですが、担当者が考えていた以上に販売実績が伸び、在庫が足りなくなってしまう可能性も、ゼロではありません。

在庫管理担当者も、毎日朝から出勤するわけではありませんから、在庫管理状況がパソコンで管理されていれば、見える化によって出勤スタッフがそれを容易に確認でき、適時不足しそうな商品の発注できます。

また、スマホなど携帯可能なモバイル端末にデータを送信することで、在庫管理に携わるスタッフでの共有も容易になるため、在庫管理状況の相互チェックが「リアルタイム」で可能になります。

2、POSシステムの活用

コンビニチェーンや、大型スーパーなどで採用されている、販売時点情報管理Iツールである、「POSシステム」を活用すれば、かなりヒューマンエラーの少ない在庫管理が可能です。

在庫管理状況に合わせて、商品発注を自動的にコントロールする機能が備わっているPOSシステムも多いですから、商品のバリエーションや管理する在庫量が多い小売店の場合は、その導入を視野に入れておくといいでしょう。

【ここがポイント!】
~情物一致の確認は必要~
導入には一定のコストがかかるものの、POSレジスタにおいて商品バーコードを読み取るだけで正確な在庫数の把握と、発注コントロールができるPOSシステムは、大変優秀なICTツールです。

ですが、商品の状態把握による「情物一致」を同時にしないと、せっかくの在庫管理サポート能力を生かしきることができません。

ですので、POSシステムを導入したから安心だと、在庫管理をシステムに任せっきりにするのではなく、在庫場所の温度・湿度など保管環境の整備を進めるとともに、適時在庫の品質を自分の目で確認するように心がけましょう。

3、倉庫管理システムの活用

これは、主に製造業を営む店舗におすすめの在庫管理システムですが、原材料や部品にタグやバーコードなどを付与し、それを専用デバイスで読み取ることでパソコン端末に在庫データを送り、在庫管理を実施する方法もあります。

この倉庫管理システムは、長期間保管してもなかなか痛まず「情物一致」が容易な、工業的原材料や部品の在庫管理において特に有効で、多くの製造業者が在庫管理システムとして導入しています。

【ここがポイント!】
~管理する単位を工夫してみる~

この項で紹介した倉庫管理システムは、点数が多くなる原材料や部品の数量把握を、ヒューマンエラーなく進められるとあって、主に規模の大きな店舗でその活用が進んでいます。

しかし、すべてにタグやバーコード付与をするには手間も必要ですし、管理システムの複雑化に伴って、その構築に大きなコストがかかってきます。

例えば、細かい個数把握がそれほど必要ではない、

  • ねじ・ボルトなど「ロット数」が多いもの
  • ペンキ・燃料のような「液体」

などのような、原材料や部品の在庫管理の場合は、1つ1つにタグやバーコードを付与するのではなく「棚ごと」にそれを付与するなど、在庫管理の単位自体を大きくするという手もあります。

こうすることで、システム構築を大幅に簡易化できるため、導入コストを幾分下げることができます。

まとめ

今回解説してまいりました在庫管理システムとは、正確性を維持することが難しい在庫管理をサポートする、「仕組み」のことを指します。

そして、「仕組み」である在庫管理システムは、最新鋭のICTツールを活用した大規模システムほど複雑化し、導入・管理・運用コストも嵩んできます。

数あるICTツールの中から自分の店舗の業種や規模、さらに割ける構築コストに合ったものをチョイスし、継続的に管理・運用できるシステムの構築を、目指していきましょう。

ここがまとめポイント!

  • 否応なく発生するヒューマンエラーと、情物不一致によって、在庫管理は難易度が増してくる。
  • パソコンを利用して、在庫管理状況を見える化すれば、複数の店舗スタッフによる相互チェックやりやすくなるため、在庫管理の正確性がアップする。
  • POSシステムを導入すれば、簡単にヒューマンエラーを減らせるうえ、自動発注機能による適切な在庫管理も可能になる。
  • タグやバーコードの付与による、在庫管理システムである倉庫管理システムは、工業系製造業を営む店舗で特に有効。
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【正解】3:在庫管理システムの導入・運用には、大きなコストがかかることもあるので、店舗の規模や業種に合わせて、活用するICTツールをチョイスする必要がある。

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