店舗運営のAtoZ全31回

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Lesson5 店舗のICT活用編

18POSシステムの活用術とは未学習

ここで学ぶ概要

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店舗運営の安定化と売上向上を目指すうえで、これまでも情報通信テクノロジーのことである「IT」という言葉は浸透し、パソコンとインターネットなどによって、多くの店舗・企業が活用してきました。

しかし近年では、消費者ニーズの多様化やグローバル化に伴って、そこにITで得た情報や知識の共有、伝達を意味する「Communication(コミュニケーション) 」を加えた、「ICT」への注目度が高まり、対応するツールも多く世に送り出されています。

そこで、「店舗のICTの活用編」では全10回にわたり、店舗のICTについて1つずつ紹介し、その活用法を解説していきたいと思います。

第1回目となる今回は、最も身近で採用している店舗も多い「POSシステム」について、詳しくお話してまいります。

  • POSシステムとは
  • POSシステム活用のポイント
  1. いつ・どんな価格で売れたのかの把握と分析
  2. 購入者の年齢層・性別などの把握と分析
  3. 天候やイベントによる売上動向の把握と分析
  • まとめ

POSシステムとは

まずPOSとは、「Point Of Sale(ポイントオブセール)」の略称であり、店舗で販売された商品について、

  • 商品名
  • 価格
  • 数量
  • 日時

といった販売実績情報や、購入者の年齢層・性別・当日の天気などといった、関連データも併せて収集・管理できるシステムを総称して、「POSシステム」と言います。
POSシステムには、

一体型POSシステム:
POSレジスターや、専用モバイルを媒体として収集した販売データを一括管理・分析し、各店舗と共有するシステムのこと。膨大なデータを管理する高性能なOSが必要なため大企業や、コンビニ・ファミレスなどといった大型チェーンで採用されることが多い。

単独型POSシステム:
自前のパソコンやタブレットなどにPOSアプリをインストールし、パソコン内でデータの分類や、管理をするシステムのこと。コストが安上がりなため、個人商店などでも採用・有効活用ができる。

の大きく分けて2種類がありますが、この後お伝えする有効活用のポイントは、どちらにも共通する内容となってきます。

POSシステム活用のポイント

前項では、POSシステムとはどういうもので、どんなデータを入手できるか説明しました。

しかし、入手できたデータを眺めているだけでは、それを店舗運営に生かすことは できません。POSシステムで入手したデータを有効活用するためには、意識しておきたいポイントが「3つ」あります。

そこでここからは、入手したデータをどのように活用すればいいのかについて、項目ごとに解説をいたします。

1、いつ・どんな価格で売れたのかの把握と分析

店舗で製造・販売をしている商品やサービスが、「いつ」その売れ行きが伸びているかを把握するのはとても大切で、POSシステムが威力を発揮する大きなポイントの1つです。

例えば、「A・B・C」という3種類の商品を販売しているとして、

  • A・・・オープン直後
  • B・・・お昼時
  • C・・・夕方、夜間

の時間帯にそれぞれの販売実績が伸びているというデータを、POSシステムで把握できたとしましょう。

すると、販売実績の良い時間帯に合わせた製造数の調整や、製造スタッフの配置を適切に行うことで、作りすぎによる商品ロスや、人員の過剰配置による人件費の上昇を未然に抑えることが可能です。

また、マーケティングの一環として分析・活用すれば、

  • 販売実績の良い時間帯に、対象商品の陳列数を増やす。
  • それぞれの商品知識が深く、販売スキルの高いスタッフを重点的に配置する。

などといった、効率の良い販売戦略を立てることもできます。

さらに、「○割引」などといったステッカーを付け販売する事も多い、訳あり商品や消費期限が迫った商品が、その割引効果で販売実績が伸びているかを、正確に把握・分析することも可能です。

加えて価格改定をした場合、その商品の販売実績がどう変化したかも確認することも可能なため、もし売り上げが低迷してしまったケースでは、販売方法の改善や価格改定幅の見直しを図ることも、視野に入れておくとよいでしょう。

【ここがポイント!】
~長期的な販売実績の把握・分析も大切~
POSシステムを活用すれば、「いつ売れたか」というデータについて、1日の範囲にとどまらず、「1週間・1カ月・1シーズン・1年」といった、長期的なスパンでの販売実績まで把握できます。
冬場の寒い時期のおでんや、真夏のかき氷など、誰でも簡単に売れ行きが伸びやすいタイミングを把握できる商品も多いですが、

「理由はわからないが、なぜかそのタイミングで売れるor売れない。」
という商品や、サービスが存在します。

POSシステムは、そういった日常の店舗運営ではなかなか肌で感じられない、「長期的な隠れ販売実績」を把握することもできる、非常に優秀なICTツールです。
ですので、時間ごとの販売実績だけでなく、長期的な販売実績の推移についてもスタッフ全員で共有し、販売戦略の材料に利用するといいでしょう。

2、購入者の年齢層・性別などの把握と分析

米や塩、灯油やガソリンなどの生活必需品は、それほど年齢や性別による販売実績の変化が大きく見られません。

ですが、年齢や性別によって購入傾向が大きく変化する、

  • ファッション
  • グルメ
  • おもちゃ・嗜好品

などを取り扱う店舗においては、購入したお客様の属性は非常に重要なデータです。お客様の性別と年齢層が把握できれば、提供する商品・サービスを決定するうえで、大きな分析材料となります。

POSシステムでは、会員証やポイントカードなどで個人情報の入手し、そのデータを入力することにより、購入者の性別や年齢層の分布を数字やグラフによって「見える化」できるため、簡単に目で確認・共有することが可能です。

会員証やポイントカードの作成は、お客様の囲い込みによるリピーター数の増加にもつながりますので積極的に行い、少しでも多くの情報をPOSに蓄えていきましょう。

【ここがポイント!】
~「データの多様化」がうまくいけば客単価アップにも活用できる~
購入したお客様の性別や年齢層にマッチした、ピンポイントでの商品ラインアップに役立つPOSシステムですが、実は客単価の向上にも活用できます。

例えば、対象商品を購入したお客様について、

女性・既婚・子供アリ

という情報がPOSにあるとしましょう。

この時、「母親」であるお客様が購入した商品に加えて、「子供向け」の商品がラインナップされていれば、「抱き合わせ販売」による客単価向上も狙うことができる、という訳です。

もちろん、細かい個人情報をお客様に提供してもらうには、信頼感を高めて「お店のファン」になっていただき、情報提供への抵抗感を減らしていく必要があります。

ですので、日々接客スキル向上や、商品の品質アップをしながら「データの多様化」を進め、販売戦略の幅を広げていくと良いでしょう。

3、天候やイベントによる売上動向の把握と分析

時間的な販売実績とともに、天候による販売実績の変化や、開催したセールなどといったイベントごとの販売実績も、POSシステムを活用すれば把握と分析ができます。

まず天候については、昔から伝えられている「風が吹けば桶屋が儲かる」ではないですが、どういった天候で商品が売れたのかという事実と併せて、「なぜ売れたのか」という分析を加えていくようにしましょう。

わかりやすい例を挙げるなら、激しく雨が降ってお客様が公共交通機関での通勤を避け、車通勤をチョイスしたとすると、

  • 駅やバス停などの近くにある店舗は売上がダウン
  • 郊外だが駐車スペースが広い店舗は売上がアップ

といった現象が起こりやすくなってきます。

天候を操ることはできませんし、天気予報も100%的中するものではありませんが、商品の在庫数や出勤するスタッフのシフトを調整するなど、天候による販売実績データに沿った対策を練っていくことも大切です。

また、セールなどのイベントによる販売実績の変動については、イベント開催にかかったコストや割引などによる純利益の減少と、販売実績の伸びや来店者の増加とのバランスを、POSシステムを活用してしっかり分析しましょう。

【ここがポイント!】
~周辺のイベントもデータ化するとより効果的~
天候については、おおむね店舗の営業範囲内であれば、ほぼ同じ天候なので問題ありません。

ただし、イベントについては周辺のライバル店が開催した時にも、自店舗の販売実績が変化する可能性があり、ほとんどの場合一時的なものですが顧客が流れ、店舗の売上がダウンします。

そして、販売実績が下がった原因をつかめずに事後対策が遅れると、一時的な顧客流出が長期間に及んでしまうこともあります。

ライバル店のチラシや看板、HPでのイベント開催予告情報を入手し、POSシステムにおいてデータ管理・共有することで、すぐに対策がとれる体制を整えることも可能になってきます。

まとめ

POSは、さまざまな条件の変化に合わせた、商品と店舗全体の販売実績を即座に把握できる、非常に優秀なICTツールです。

お伝えした3つのポイントを意識して、より効果的なマーケティング戦略ができるよう、有効活用していきましょう。

まとめポイント!

  • POSシステムには、大企業や大手チェーン店などが採用している一体型と、パソコンがあれば活用できる単独型がある。
  • POSシステムを活用すれば時間単位だけでなく、把握しづらい長期的な販売実績についても把握・分析ができる。
  • POSが保有する個人情報データが多様化すれば、単独での購入ニーズにピンポイントでマッチするだけでなく、複数の購入ニーズにアタックをかけることも可能。
  • 自店舗だけでなく、周辺の競合店によるイベント情報もデータ化しておくと、顧客の流出防止に役立つ。
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【正解】3:天候による販売実績の変化は、その事実を確認すると同時に、なぜそうなるのかを分析し対策を練ると良い。

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