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「CASE」は実装フェーズへ。トヨタのコネクテッドシティ計画が加速させるもの

2020年、IT業界の新年は「CES 2020(米ラスベガス)」においてトヨタが発表したコネクテッドシティプロジェクト、「Woven City(ウーブン・シティ)」と共に幕を開けたと言っても過言ではないでしょう。

同社は2018年に脱自動車メーカーとも言える「モビリティカンパニー宣言」を出していましたが、その意味するところが、いよいよ壮大なスケールで具現化される時がやってきた、という印象です。

このプロジェクトの始動は、トヨタの変革という意味をはるかに超えて、世界中の先進企業が頭に描いてきた未来生活を一気に実現へと向かわせる、ピストルの号砲のようにも思えます。

目次:

「編み込まれた街」ウーブン・シティとは

ウーブン・シティは、2020年末をもって閉鎖されるトヨタ自動車東日本株式会社の東富士工場(静岡県裾野市)の跡地に建設されます。街の広さは175エーカー(約70.8万㎡)で、およそ東京ドーム15個分になります。

都市設計は、デンマーク出身で注目の若手建築家、ビャルケ・インゲルスが担当することになっており、ウーブン・シティのイメージムービーでは、都市の完成形を垣間見ることができます。

モビリティカンパニーによって設計される街であることが強調されているのは、街を走る「3種類の道」です。

  1. スピードの速い車両専用の道(「eパレット」などの完全自動運転かつゼロエミッション(排気ゼロ)のモビリティだけが走行する道)
  2. 歩行者および低速のパーソナルモビリティが共存する道
  3. 歩行者専用の遊歩道的な道

これら3種類の道が、まるで織り込まれるように街中を走り、交通や物流を支えるということで、ウーブン(woven、編み込まれた)・シティの名もその様子から来ています。トヨタのルーツが機織り機にあることから考えても、なかなか気の利いたネーミングではないでしょうか。

また、建物は主に木材を使用して建設され、屋根には太陽光発電パネルを設置するなど、徹底的にサステナビリティが意識されているようです。

CASEを実装レベルまで加速させる?

そして、ウーブン・シティの本質は、モビリティ、家、店舗、その他様々な施設など、街全体がデジタルと繋がっている状態(コネクテッド)を前提としており、それに伴い、「CASE※」にまつわるあらゆる実証実験を行える街である、というところにあります。

※Conected(繋がる)、Autonomous(自律走行)、Shared(共有)、Electric(電動)を総称する言葉。

リアルな場も含めて全てのものが常時オンラインでデジタルに繋がっており、オフラインのものがない世界を「アフターデジタル」と呼びますが、そういった意味でウーブン・シティはまさに「アフターデジタルタウン」と呼ぶのに相応しい街になるのではないでしょうか。

もちろん、これほど壮大な計画の中で、トヨタ1社が全ての実証実験を担うことは不可能であり、ウーブン・シティは、あらゆる企業にその門戸を開いています。つまり、CASEにまつわる技術やサービスを開発している企業にとっては、より大きな規模、リアルな状況で実証実験を行う絶好のチャンスだと言えるでしょう。

現状で明らかになっているのは、トヨタがパナソニックと住宅事業および車載用電池事業を統合する、ということです。パナソニックはスマートシティ事業も手がけているため、今回の事業統合によって、新しいコンセプトの住宅づくりやエネルギー分野での実証実験がウーブン・シティで進められることになるでしょう。

パナソニックの例に見るように、ウーブン・シティに「相乗り」する企業は、スタートアップ系だけでなく、場合によってはGAFAレベルの巨大な企業であることも十分に考えられるのではないでしょうか。

ちなみに、ウーブン・シティにおけるソフトウェア開発などを担当する「TRI-AD(TOYOTA Research Institute Advanced Developement)」のCEO、ジェームズ・カフナー氏はGAFAの一画、Google出身だったりもします。

「工場跡地の再利用」は有利なポイント

Googleといえば、兄弟会社となるSidewalk Labsが、カナダのトロントで独自のスマートシティ計画「IDEA」を進めています。しかしながら、様々な懸念事項(主に、そこで取得される個人データの取り扱いに対する地元住民からの反対など)に阻まれ、スムーズな計画の実現には至っていないという実情があります。

その点ウーブン・シティは、建設予定地がもともとトヨタの工場跡地であり、“最初の住人”となるのは今の所、関係者のみの予定となるため、地元住民との軋轢といったハードルは存在しません。また、工場跡地の有意義な再利用、という位置付けられるという点も、世論にはポジティブに働く要素だと言えるでしょう。それらに鑑みると、自社開発の技術/サービスを実現するスピード感が重視される場合、GAFAクラスの大企業も、ウーブン・シティに参画するという判断をするかもしれません。

一方で、ウーブン・シティに触発されて、様々なコネクテッド・シティ計画が世界中で加速する可能性も当然あるでしょう。民間企業だけでなく、自治体による「国家戦略特区」に対する申請が今後増加することも考えられます。

いずれにしても、CASEに関わる様々な技術やサービスは、すでに様々な実証実験が行われていますし、ウーブン・シティの存在は、それらのレベルが一段押し上げられ、一気に実装可能という段階まで進んで行きそうな期待を抱かせてくれると言えるでしょう。

世界のコネクテッド・シティ

ここからはウーブン・シティにちなんで、世界のコネクテッド・シティ系の事例をいくつかご紹介します。

Amazon Experience Centers

GAFAの一角、Amazonによって全米15箇所に開設された、家全体がAmazon仕様になっているモデルハウスです。シティ規模ではなく、コネクテッド・ハウスというミニマムな規模の実証実験の場となっています。Amazon Keyをはじめ、全部屋にAlexa対応家電が設置されており、朝起きてから寝るまでのあらゆることをAlexaで制御する、完全なスマートホーム体験が可能となっています。

スペイン・バルセロナ

スペインのバルセロナでは、20年ほど前からスマートシティプロジェクトが進行しています。交通量のセンサー情報や小電力無線、Wi-fiを活用し、駐車場の空き情報を提供するスマートパーキング、バスの運行状況を提供するスマートバスストップ、ごみ収集箱の容量情報を提供するスマートごみ収集管理などを展開しています。

City 24/7(ニューヨーク)

ニューヨーク市とCiscoの共同プロジェクトであり、市内を訪れる人々に「必要な情報を、最も役立つ場所とタイミングに提供する」ことをコンセプトとしたOMO的な会話型プラットフォームです。バス停や駅、ショッピングモールなどにスマートスクリーンを設置し、行政、ローカルビジネスおよび住民からの情報を統合して使用者に提供する仕様になっています。

柏の葉スマートシティ

日本の自治体にもスマートシティの事例があります。千葉県柏市「柏の葉スマートシティ」は、街全体を活用した実証実験タウンとして様々な取り組みを行なっています。プロジェクトの推進には柏市だけでなく、三井不動産や東京大学、千葉大学などが参画しており、公民一体となって、IoT/AIを活用した未来の街づくりを行なっています。

さいごに

ウーブン・シティの着工自体は2021年になってからなので、実際に街が稼働するのはまだ数年先と考えられますが、ひとたび稼働し始めると一気に未来がやってきそうな気配が感じられますね。

店舗運営のミライを考えるメディアとしては、街を制御する基幹システムや、様々な接点で集めた住民のデータがどのように一元管理され、様々なサービスに活用されるのか、というバックグラウンドにも非常に興味が湧きますので、引き続き、ウーブン・シティの動向についてはフォローしていきたいと思います。

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