• このエントリーをはてなブックマークに追加

ドイツの小売業はなぜ世界で戦える?合理性を追求した経営戦略とは

デロイトトーマツの調査によると、2017年の世界の小売業ランキングではアメリカの企業が3位までを独占しました。

参考:デロイトトーマツ ニュースリリース 世界の小売業ランキング2017 発表
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/news-releases/nr20170404.html

1位がWal-mart(ウォルマート)、2位がCostco(コストコ)、3位が多数のスーパーチェーンの持ち株会社であるKroger(クローガー)です。

そして4位につけているのがドイツの企業、Schwartz Unternehmenstreuhand KG(シュバルツ・ウンターネーメンストロイハンド)と呼ばれる企業です。シュバルツグループはドイツ国内で大手の小売企業で、その傘下にはLidl(リドル)やKaufland(カウフランド)というディスカウントスーパーがあります。2015年/2016年の売上高は857億ユーロ(1ユーロ130円で計算した場合、日本円にして約1兆1,141億円)にのぼります。

出典: IGD Lidl reports 9% revenue growth in 2015/2016
https://retailanalysis.igd.com/news/news-article/t/lidl-reports-9-revenue-growth-in-20152016/i/11290

Lidlはヨーロッパ各地に進出しているスーパーですが、近年はアメリカにも勢力を伸ばしています。

また、8位にもドイツの企業でAldi Einkauf GmbH & Co. oHG(アルディ・アインカウフ)がランクインしています。Aldiも同じくドイツ国内に多くの店舗を持つスーパーマーケットです。

一方、日本の小売企業は何位かというと、イオングループが14位で日本の小売企業としては最高位、セブン&アイ・ホールディングスが20位、ファーストリテイリングが67位にランクインしています。

LidlもAldiも、元々個人経営の小さなスーパーマーケットから始まりました。今では本国ドイツだけではなくグローバル展開を行う巨大企業に成長し、小売業で世界ランキングトップ10に入っています。なぜドイツの小売業が好調なのか、その秘密を探っていきたいと思います。

なぜアメリカに次いでドイツの小売業が強いのか?

アメリカのスーパーと言えば、売り場面積が広く豊富な種類の商品から選べることが特徴としてあります。しかし、ドイツのスーパーはそれほど売り場面積も広いわけではなく、商品の数も非常に限られています。これだけ聞くと、ドイツの小売が好調な理由がよくわかりません。売り場面積も広くなく、商品の数が少ないのになぜ世界の小売ランキングトップ10の中に入るのでしょうか?

【1】プライベートブランド商品(PB商品)が多くある

どのスーパーもプライベートブランド商品を多く置いています。PB商品は大量に製造されすべての店舗に置くことができるため、ひとつあたりの価格を低く設定することが可能です。結果、来店した客がPB商品を購入することにつながるため、ドイツのどのスーパーにもPB商品は多く置かれています。Business Insiderの記事によると、Aldiに置かれている商品の90%はPB商品であると述べられています。

You won't find many brand names at Aldi.
About 90% of the products at the grocer are private label. By eliminating the middleman, Aldi can pass the savings on to consumers.
(訳:Aldiではたくさんのブランド名を見つけることはないでしょう。スーパーにある90%の商品は自社商品です。中間業者を取り除くことで、Aldiは消費者に節約させることができるのです。)

出典:Aldi's secrets for selling cheaper groceries than Wal-Mart or Trader Joe's
http://www.businessinsider.com/why-aldi-is-so-cheap-2015-4?IR=T

PB商品は卸業者を間に挟まないため、その分コストを下げることができるのです。

【2】全店舗一斉値下げ

ドイツのスーパーはどの店舗もセール情報のチラシを発行します。1週間単位で特売品の宣伝がされており、それはドイツ国内のどこの店舗でも同じです。つまり、全店舗で適用する値下げを行っているため、仕入れ先からの大量買い付けによって大規模な値下げを行うことができるのです。また、全店舗適用のセールのため、チラシを発行するにしても同じものを印刷すれば良いので宣伝費も抑えることができます。以下のリンクからLidlのチラシを見ることができますが、チラシは店舗ごとにあるわけではなく、たった1種類しかありません。

参考:Lidl Online Prospect
https://www.lidl.de/de/online-prospekt/s1002

【3】陳列に時間はかけない

商品の陳列に時間をかけないことも特徴的です。
すべての商品を一つずつ箱などから取り出して陳列するのではなく、箱ごと商品を置きます。最低限取り出しやすいように上側の段ボールだけを取り除くだけです。よく売れる商品は箱ごと山積みにされており、上の段がなくなれば下の段から客が箱をどけたり、ビニールを破ったりして必要な分だけ取り出します。客にも動いてもらうことで、業務の効率を高めていると言えます。

サービスに重きを置かないのも安さの理由

ドイツのスーパーマーケットではスタッフの数が非常に限られています。人件費をかけないことで運営にかかるコストを下げるという目的もあります。
大型店になれば数人のレジ係がいますが、常時待機しているわけではなく混雑していないときはレジに誰もいないことがよくあります。レジ係が一人しかおらず10人くらいの列になると、やっともう一人のスタッフがレジに向かうという感じです。その間、客は辛抱強く待つしかありません。レジにいないときにレジ係は何をしているかというと、品出しや陳列、バックヤードでの作業等を行っています。

また、レジの処理スピードも非常に速いです。客はまず会計する商品をベルトコンベアに置いて、レジ係がバーコードを読み取っていくという方式ですが、日本のように(時には商品の置き方にも気を配りながら)読み取った後の商品を別のカゴに移し替えることはなく、客が急いで自分の袋に入れていかなければいけません。客がもたもたしていてもお構いなしにバーコードを読み取った商品を狭いスペースに置いていきます。

ドイツではサービスに対する意識はそれほど高くありません。特に小売業で言うと、「安ければそれなりのサービスを受けられないのは当たり前」という意識があるため、店員は客に対してそれほど気を遣いません。むしろ効率を重視するために、商品を陳列するため通路をふさいでいても、避けるどころか客に避けさせようとします。

ドイツのサービスは日本と比べると雲泥の差があり、サービスを重視していません。こちらの記事ではドイツのサービスは「サービス砂漠」として述べられています。

参考:ハフィントンポスト なぜドイツはサービス砂漠なのか?
http://www.huffingtonpost.jp/toru-kumagai/germany-service_b_8058340.html

ドイツのスーパーに関して言うと最低限のスタッフしか配置されていないため、効率を高めるためにサービスは二の次になるという印象を受けます。

ドイツのスーパーは日曜日に営業しないにもかかわらず世界的競争力が高い

ドイツは日曜日に開店している店は非常に限られています。その理由というのも、ドイツには「閉店法」という法律があり、日曜日は飲食店や小さな個人商店以外は基本的に営業を行ってはいけません。近年はこの閉店法を緩和させる動きがあるようですが、未だに日曜日はほとんどの店が閉まる日で、週末になると買いだめする客でいっぱいになります。

スーパーも日曜日に営業しているところはほぼなく、月曜日から土曜日までの営業です。その代わり、店舗によって異なりますが朝は7~10時の間に開店し夜8~10時に閉店にするところも多いです。営業日・時間が限定されているにもかかわらず、小売業で世界ランキングに入るほどの大企業に成長しています。それはビジネスモデルやノウハウが確立しており、上記のような徹底した業務効率化や、商品の価格を下げる取り組みがなされているからです。

日本の小売企業がさらに業績を伸ばしていくためには何が必要か?

日本はこれから少子高齢化で市場の規模は小さくなっていきます。市場が小さくなっていくのであれば、特色のある経営を行う必要があります。価格や品揃え、サービスなど、顧客が何を求めていて何を提供できるかをわかりやすく打ち出さなければいけません。

国内で市場の規模が小さくなってくるのであれば、海外進出はどの小売企業も考えることでしょう。海外進出のためには市場の事前調査を徹底的に行う必要があります。例えばユニクロブランドを世界に広げたファーストリテイリングでは現地の人に受ける商品を取り揃えており、デザインも日本で販売されているものとは大きく異なります。

現地の人に必要とされる商品でなければいけないため、市場調査の段階で現地の人がどういったものを求めているか、適正な価格帯はどれくらいか、競合企業はどんな商品を販売しているかなどを正確に見極める必要があります。また海外に進出するにあたっては現地の人に企業名やブランドまたは商品を覚えてもらわなければいけないので、広告・宣伝方法についても戦略的に行う必要があります。日本の小売企業が世界に進出するためには、ブランドの価値を高め、価格競争に打ち勝ち、効果的なマーケティングを行うことにあります。

ドイツ・ベルリンのユニクロ(筆者撮影)

まとめ

ドイツの小売業が好調な理由としては、国内での売り上げもさることながら、国外においても現地のスーパーマーケットと十分渡り合えるだけの競合力があるからです。ドイツを起点にして、ヨーロッパ・さらにアメリカと次々に勢力を拡大しているのは、それぞれの会社の経営戦略が海外進出においても成功を収めていることの証と言えます。

徹底的に合理性を追求したドイツのスーパーから学ぶことは多くありそうです。

記事に関連するサービス
  • ORANGE POS
  • デジベル
ORANGE POS構築事例

S-cubism ニュースレター登録

お役立ち資料ダウンロード
軽減税率対策5つのチェックリスト
店舗運営に役立つ流通用語集
体験させて購買に結びつける「売れる」デジタルプロモーション x Commerce(クロスコマース)
店舗スタッフの動画投稿から販売につなげる動画コマース「TIG commerce(ティグコマース)」
ページ上部へ戻る