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ドラッグストアの実証実験「RFIDと省人化」の結果を公表

電波を使うことで、非接触の読み書きができるRFID。
電波が届く範囲すべてのタグを一気に読み取ることができるため、バーコードよりも運用の幅が広がるとされています。
日本チェーンドラッグストア協会は、今年の2月にこのRFIDを用いた実証実験をおこない、8月に結果を公表しました。
物流と検品で大幅な省人化が進むとされるRFIDですが、この実験ではどのような結果が得られたのでしょうか。

公表された実験結果とともに、RFIDにおける省人化についていま一度考えてみたいと思います。

【目次】

ドラッグストアの検品・棚卸にRFIDを用いた実験

日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は、2019年2月におこなった「電子タグ(RFID)を用いた店舗オペレーションの実証実験」について、8月23日に結果を公表しました。
この実験は、「ウェルシア千代田御茶ノ水店」と「ココカラファイン清澄白河店」、「ツルハドラッグ目黒中根店」の3店舗で2月12日~28日におこなわれました。

実証実験は、経産省とJACDSの「ドラッグストアスマート化宣言」に基づくものです。ドラッグストアスマート化宣言は、人手不足と労務コストの上昇に直面する小売業と、消費の多様化に対応するためにドラッグストアをスマートストア化しようという目標と、その仕組みの構築を目指すために策定されました。

スマートストアは、AIやカメラ、電子タグといったデジタルツールを用いて流通を効率化し、それに付随するデータの蓄積と活用によって新たな価値創造を目指す店舗をさします。
JACDSと経産省は、RFIDの研究および実証実験をおこない、2025年までにドラッグストアで取り扱う商品にRFIDタグを利用することで合意しています。

・経済産業省「ドラッグストアスマート化宣言」を策定
https://www.meti.go.jp/press/2017/03/20180316002/20180316002.html

ドラッグストアのスマートストア化とは

ドラッグストアのスマートストア化は、2017年に策定された「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」の趣旨に同意するものです。
「コンビニタグ1000億枚宣言」は、2025年までに主要コンビニチェーンである、セブンイレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、ニューデイズで取り扱うすべての商品にRFIDを利用するという目標を掲げて策定され、こちらでもさまざまな実証実験がおこなわれていました。

スマートストアの主眼は、さまざまなテクノロジーを活用して流通をデジタル化するという点にあります。デジタル化を端的にいえば、人材を単純作業から解放するということになるでしょう。オートメーション化できることはデジタルツールに担ってもらい、従業員には人しかできないことや人だからこそ企業に貢献できるという仕事をおこなってもらうというわけです。
また、業務効率化だけでなくサプライチェーンに内在する課題を解決し、従来にはなかった新たな価値を創造するという目標が掲げられています。

・経済産業省「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」策定
https://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170418005/20170418005.html

RFID実験の目的は2つ

RFIDの実証実験における目的は2つ。
1つは、ドラッグストアが取り扱う商品、店舗運営オペレーションにおける作業効率化の検証で、もうひとつは、電子タグ(RFID)の読み取りが誰でも簡単に、かつ正確に実施できるのかということです。

さらに実験項目は4つあり、店舗によって実施項目は異なります。

  1. RFIDの貼付
  2. 入出荷時の読取
  3. 販売
  4. 棚卸・在庫確認

ドラッグストアRFID実験項目1. RFIDの貼付

タバコ、雑誌、新聞をのぞくすべての商品にRFIDの貼付をおこなったのは、「ウェルシア千代田御茶ノ水店」のみです。その商品数は2万4,000SKU(Stock Keeping Unit)。手作業で1つ1つの商品にRFIDを貼付しました。
ほかの2店舗では、RFIDを貼付した商品がそれほど多くありません。それぞれ22SKU、39SKUと少ない数になっています。

ドラッグストアRFID実験項目2. 入出荷時の読取

入出荷時の読取作業、つまりRFIDによる検品を実験したのは、「ココカラファイン清澄白河店」、「ツルハドラッグ目黒中根店」の2店舗です。
2万SKU以上の商品にRFIDを貼付した「ウェルシア千代田御茶ノ水店」ではRFIDを活用した検品作業はおこなっていませんでした。

ドラッグストアRFID実験項目3. 販売

レジ精算にRFIDを用いたのは、3店舗すべてです。
「ココカラファイン清澄白河店」ではレジ決済もRFIDを活用しておこないました。

ドラッグストアRFID実験項目4. 棚卸・在庫確認

棚卸し作業と在庫確認でRFIDを利用したのは「ウェルシア千代田御茶ノ水店」のみです。ここではRFIDを活用して確認の精度も併せて検証しました。

公表されたRFID実証実験の結果:効率化を確認

RFIDにより、3店舗とも検品・棚卸し作業に必要な作業時間を77~81%短縮することに成功しました。

また棚卸し作業の際の読取精度は、97.1~100%を達成、従業員の誰もが簡単に、そして精度を保って作業を効率化できることが実証された結果です。
実証実験に携わった参加企業からは、「RFIDの活用を万引き対策にも応用できるのではないか」という意見が出ています。

新たな課題

一方で、水気を多く含む商品やアルミ包装商品などの場合、RFIDの読取がしづらく、貼付が不可能と判断せざるを得ない商品への課題も浮き彫りになりました。

RFIDを本格的に導入するにあたり、商品のすべてに貼付できることが求められます。RFIDとデータ取得システムなどを連動させる場合に、そのデータ網からもれる商品があってはならないからです。

売上や業務管理に活かせる分析をおこなうには、正確なデータを取得する必要があります。そのためには、すべての商品をRFIDによってリスト化し、余さず情報を得なければなりません。

RFIDのついた商品とついていない商品が混在するまま実用化すると、今まで以上に業務に混乱をきたすことは必至です。こうした点をどのようにクリアできるかが、今後のRFID活用やスマートストア化の焦点となることはいうまでもないでしょう。
これらの課題や、結果の詳細を記した報告書は、JACDSの会員企業向けに改めて報告されることになっています。

RFIDは本当に省人化を実現できるのか

今回の実証実験は、もうひとつ大きな課題を再認識させます。
それは「RFIDを手作業で貼付することは省人化なのか」という点です。
RFIDを活用すれば、商品の検品、在庫確認、レジ精算など業務のほぼすべての時点での効率化を期待できるでしょう。

しかし、商品にRFIDを添付する作業は人的コストを消費します。2万点を超える商品の1つ1つにRFIDを貼付する作業と、バーコードなどを用いておこなう従来の業務フローを天秤にかければ、RFIDが省人化を解決する魔法のアイテムとは決して見なせないことでしょう。

RFIDの効率化ポイント

では、本当の省人化を目指すためにはどのようにRFIDを活用していくことが求められるのでしょうか。
ここで改めて小売業におけるRFID活用の効率化ポイントをみていきたいと思います。

RFIDによる効率化ポイント1. スキャナ1台で複数のタグを読取可能

入出荷時や在庫管理などで効率化が期待できるポイントです。
バーコードは、1つ1つ商品ごとにスキャナをかざし読み取らなければなりませんが、RFIDはスキャナをかざすだけで、多くの商品を一度に読み取ることができます。バーコードで比べた場合、棚卸し作業の作業時間や手間をおよそ10分の1にカットできるといわれています。
読取範囲が広いため、高い棚の上にある商品や、箱の中に入ったままの商品も読み取ることができます。こうした特長は、RFIDの活用の幅を大きく広げているといえます。

RFIDによる効率化ポイント2. 表面が隠れていても汚れていても読取可能

バーコードは、上からテープを貼られてしまったり汚れが付着してしまったりすると読取不可となってしまいます。
一方、 RFIDはたとえ表面が汚れていても読み取ることは可能です。この点は、倉庫や物流での使用可能性を広げる特長ですが、店舗においても有用といえます。バックヤードが汚れやすい環境であったり値札シールとRFIDが重なってしまったりした場合でも商品のタグを読み取ることができるからです。

RFIDの貼付によって期待されるのは省人化だけではない

こうしたRFIDの特長をふまえて期待されているのは、省人化だけではありません。

  • 商品が移動した履歴のデータ化
  • 過剰在庫や食品ロスの防止
  • 賞味期限管理による値引き表示
  • レジ作業の低減

商品が倉庫から店舗へ、在庫管理されている店舗から店頭へという移動履歴はこれまで自動的な連携がおこなわれておらず、データ化されていない情報が多分にありました。
これらをデータ化して分析システムを構築することで、過剰な在庫を減らし食べられる食品の廃棄、つまり食品ロスを減らすことができると期待されています。
この問題にともなって、値引き表示(ダイナミックプライシング)の必要性も高まっています。

消費期限の近い商品や賞味期限を数時間過ぎた商品を割引販売する場合、バーコードで商品を管理していると、値引きシールを貼ったり、セール品のワゴンに移動させたりする手間を必要とします。

しかし、RFIDと電子棚札を併せて活用できれば、消費期限や賞味期限が過ぎているなど一定の条件を満たす商品の値引きを自動でおこなうことができます。つまり、人的コストを余計にかけなくても食品ロスを減らす施策を講じることができるわけです。
過剰在庫や食品ロスを減らすことは、長期的にみると業務効率化にもつながるとされており、こうした面を試すRFIDの実証実験もおこなわれています。

道具と策に溺れない!真の省人化とは

RFIDは、小売店舗の運営にとって強力な味方となるテクノロジーです。その点について疑問の余地はありません。しかし、導入すれば省人化を一気に達成できるような奇跡の道具ではありません。
これは、スマートストア実現のために活用するほかのツールにもいえることです。AI、IoTテクノロジー、各種センサーやカメラ、分析ツールも日々進化を遂げていますが、適切なシステムを構築しなければ「便利に」使うことはできないでしょう。

真の省人化とは、限定的なリソースである人材を最大限活かすという目的のためにおこなわれるべきではないでしょうか?
省人化というと、人的コストの削減(給与分の削減)がまっさきに思い浮かび、ここをゴールのように考える経営者が多いのも現実です。ですが、この場合、省人化のシステム構築は設備投資にとどまってしまい、新しい価値創造まではいたりません。

必要な部分をオートメーション化して、人が携わった方が企業の価値や店舗の存在意義を高める部分には限られた人材をきちんと投入する、これが従来とは異なる価値を創造する真の省人化といえます。

たとえば、店舗であれば棚卸しやレジ決済業務をオートメーション化して、接客にスタッフを回すなどといったケースが想定されます。省人化の理想とは、限られた人材を人を活かす適材適所に配置できることでしょう。
そういった点から考えれば、2万点以上の商品に1つ1つ電子タグを貼付するというのは真の省人化とはいえず、実用化に向けてはそこから一歩踏み出す必要があるということです。

また、「RFIDを貼付する作業」自体を効率化するソリューションを活用するという手段もあります。RFIDの管理を運用オペレーションでおこなうことで、電子タグを準備する人的コストの削減「省人化」をおこなうことができます。
大量にRFIDを発行する企業向けの「ラベル自動印字貼付機」は、印字とエンコード、貼り付けを自動かつ高速でおこなうことができます。また店舗で使いやすい「ICラベルプリンタ」の導入も、RFID関連の省人化をはかる一助になるでしょう。

まとめ

RFIDは、一度に大量のスキャンができる、表面が汚れていても読取可能など、さまざまな特長をもつ電子タグです。
一方で、本格的に導入するにあたっては、商品に手作業で貼り付ける手間や人的コストなどを考慮する必要があり、社会問題である人的コストの低減を一挙に解決できる手段とはいいがたい部分もあります。
各企業が実施している実証実験を通して、RFIDのもっとも効率的な運用や本当の利便性が追求されていくことでしょう。

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