• このエントリーをはてなブックマークに追加

トヨタの自動運転モデル「e-Palette Concept」が新しい移動販売をつくる

トヨタ自動車は、自動運転車の新しいコンセプトモデルである「e-Palette Concept」を開発、発表しています。
「e-Palette」は箱型の車体で床が低く、内部は自由なカスタマイズが可能。そのため、バリアフリーの移動手段としてだけでなく、移動オフィス、ホテルや病院、店舗などさまざまな活用が見込まれています。
これまで、店舗での購入は「消費者が店舗まで出かける」スタイルが当たり前でしたが、トヨタ「e-Palette」の登場により小売の現場にまったく新しい風が吹くかもしれません。

本記事では、「e-Palette」の概要や可能性と、現在試みられている自動運転と小売の取り組みについて紹介します。

【目次】

どこへでも移動販売が可能になるe-Palette Conceptとは

トヨタは、2018年1月に米国で開催された「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」で、「e-Palette Concept」を発表しました。
これは、車を乗り物としてだけでなくデバイスとして活用できるように、技術をオープンにするというものです。

スマホのようにプラットフォームとして利用できる

これがどういうことなのか、スマートフォンを例にとって考えてみましょう。スマホは、さまざまなアプリをインストールすることでその可能性が拡大します。多くの人はスマホをただの携帯電話として使ってはいません。機能を拡張するためにアプリを搭載し、財布(モバイル決済)、手帳(スケジュール管理)、パソコン(ワードやエクセルファイルの共有)として活用しています。これは、スマホがプラットフォームとして機能しているからできることです。

自動運転車がプラットフォームとなる

トヨタの提唱するe-Palette Conceptも、スマホの活用とイメージは似ているといえるでしょう。つまり、車に関する技術をオープンにしてプラットフォーム化することで、移動手段以上の便利な機能を備えることが可能になるのです。
「e-Palette」の全長は4〜7m。フラットなバリアフリーデザインが特徴です。
イメージされるのは自動車というよりも「移動する箱」でしょうか。その「箱」が、ライドシェアリング(人の移動手段)だけでなく、医療設備を備えた病院や宿泊できるホテル、キッチンを備えた店舗など、要望に応じてさまざまな姿に変わっていきます。

トヨタの掲げるMaaSで自動運転の店舗がやってくる

e-Paletteは、小型バスのような形状で内部の改造ができるようになっており、クライアントの要望にしたがって小売店にも病院にも整備可能になっています。
トヨタはこの実現に際して、MaaS(Mobility as a Service)という概念を掲げました。このMaaSは、移動のサービス化という意味で、トヨタが造語として作り出したものです。
トヨタ自動車とソフトバンクによる共同出資会社「MONET」は、このMaaSには展開の目標として、

  • 既存交通の高度化
  • 新たなライフスタイルの創出
  • 社会全体の最適化

といった3つの柱があると発表しています。
バリアフリーで安全に人を運ぶことができれば、従来の公共交通機関をさらに便利に使いやすくする可能性がうまれるでしょう。
物流や物販にe-Paletteを活用することは、2つめと3つめの柱である、「新たなライフスタイルの創出」や「社会全体の最適化」に該当する項目と想定されます。
店舗や物流への活用については、すでにAmazonやUber、ピザハットといった企業がトヨタのe-Patelleを活用した協業体制をとることを前向きに検討しているとされています。

e-Paletteが買い物の概念を変える?

現在は、買い物に「行く」という言葉が当たり前に使われています。ECにおいても、「サイトに行く」という表現をみることがあるかもしれません。
しかし、e-Paletteのようなスタイルや、車の自動運転が可能になればそのかたちは大きく変わります。
買い物は行くものではなく、アプリから自宅近くへ自動運転車両を「呼ぶ」ものになるのかもしれません。

なお、e-Paletteの実用車第1弾は、東京オリンピック・パラリンピックの選手村で使用される予定で、オリンピック仕様車は現在「東京モーターショー2019」での先行公開を控えています。

e-Paletteの車両活用における仕組み

トヨタは、e-Paletteの車両を制御するために必要となるハードウェア、ソフトウェアのインターフェイスを公開します。
提供されるのは、車両に搭載する車両制御インターフェース「ガーディアン(高度安全運転支援)」と、MSPF(Mobillty Service Platform)です。ガーディアンは、自動運転制御コンピューターやカメラ、センサーといった自動運転キットと連動し、出される制御コマンドによって走行や停車を制御できる仕組みになっています。

MSPFは、ほかの自動運転技術企業が提供するモビリティサービスや運行管理などを扱うAPIと連携可能です。なお、車両の速度や位置といった情報は、トヨタが開設したTBDC(トヨタ・ビッグ・データ・センター)を経由してMSPFが把握します。自動運転キット上のソフトウェア更新も、このTBDCを経由しておこなわれます。
これらは外部ネットワークからの攻撃に対応できるようになっていて、一定のルールの下で誤った指示が出ていないかどうかをチェックし、車両を安全に制御するシステムになっています。

トヨタのTBDCは、2017年以降に米国で販売されたDCM(データ・コミュニケーション・モジュール:車載通信機)搭載車の車両データをも扱っているデータセンターです。DCM搭載車両は、事故発生時のエアバッグ展開、およびそれに連動した緊急通報システムの発動が標準設定されていますが、TBDCは膨大なデータを処理してこの迅速な初期対応を可能にしているITインフラでもあります。

自動運転が小売に革新をもたらした各国の事例

世界には、ほかにも自動運転車両や自律走行型のロボットを開発している企業が数多くあります。また、自動運転技術を小売に活かそうとする取り組みも、大企業からスタートアップ企業までさまざまな協業体制のもと、おこなわれています。

開発の目的は、配送にかかるコストの削減や、僻地や都市部における安全かつスムーズな物流、ラストワンマイルの解決策などさまざま。ECでの購入が年々増加しているなかで、輸送費の高騰や配送分野の労働力不足といった問題は全世界的に深刻化しています。これを解決するひとつの手立てとして、自動運転は有力視されているのです。
世界の事例を3つご紹介します。

自動運転と小売:米国ドミノ・ピザ

ドミノ・ピザは2019年以内に、米国ヒューストンで無人配送を実施することを発表しています。
配達には、自動運転技術による無人配達車両を開発するNuro(ニューロ)製のラストマンワイル向け自動運転車両「R2」が使われます。
ドミノ・ピザは、2018年からスーパーマーケット大手のクローガーとともに無人配達の実証実験をおこったり、今年2月にはソフトバンクからおよそ9億ドル(100億円)の資金調達をして話題になったりと、自動運転関連のプロジェクトのためにアクションを起こしてきました。
「R2」を使った配達では、アプリから注文と車両の追跡チェックができる予定で、受け取りは商品注文後に発行されるパスワードを入力しておこなう形になると報じられています。

なお、ドミノ・ピザは、オーストラリアのスタートアップ企業で、宇宙関連開発を手がけるMarathon Targetsとも手を取り合い、商業用無人自動運転宅配ロボ「DRU(Domino’s Robotic Unit)」を発表しています。このロボットは、20km圏内に宅配が可能な時速20kmの低速自動運転ロボと伝えられています。

自動運転と小売:イタリアe-Novia

イタリアのe-Noviaは、2017年から公道での自動運転に関する走行実験をおこなってきました。
同社の開発した配送用ロボット「YAPE」は2輪型で、最大積載量は70キロ。急な坂や石畳といった足場のよくない道でも問題なく走行できるようになっています。
2輪構造はバランスをとることに長けていて、都市部の細い道や十分に整備されていない地方道路にも対応することができます。配送のラストマンワイルをいかに効率化するかという課題は全世界共通ですが、「YAPE」は現代の道路事情に沿った自動運転配送用ロボットといえるでしょう。
35メートル先まで測定可能な3Dセンサーと、120度の視野角をもつ4つのカメラ、8つの近接センサーによって、人の目よりも早く障害物を検知し、歩道を認識することができるとされています。
ちなみに、日本郵便も「YAPE」を使って、2019年1月に福島県の南相馬市、浪江町で無人配送の実験をおこなっています。

自動運転と小売:ドイツDeutsche Post AG

Deutsche Post AG(ドイツポスト)は、ドイツで郵便と物流を担う多国籍企業です。
同社が開発した追従運転と自律走行が可能な配送ロボット「Post BOT」は、高さ150cm、幅70cmのボックス型走行車。「Post BOT」は、横浜ランドマークタワー、札幌市内の商店街、九州大学箱崎キャンパス跡地など日本国内でも、複数回の走行デモや実証実験がおこなわれています。

小売におけるロジスティック(物流)の重要性

小売における物流に重要性と発展の可能性を示す事例には、中国アリババの「盒馬鲜生(ファーマーシェンション)」もあります。
アリババの掲げるニューリテール戦略の旗頭である「盒馬鲜生(ファーマーシェンション)」は、スーパーマーケットにオンラインショップとレストラン、ロジスティックという役割を複合的に果たしており、上海や北京などに13店舗を展開しています。

ここではバックヤードに在庫をおかず、商品はすべて店頭の棚に置いて管理されています。エリアごとに配置されたスタッフは常時オンラインの注文を確認し、注文が来た時点で陳列棚から商品を取り出し袋に入れ、棚の上に設置されたベルトコンベアーにセット。ベルトコンベヤーが商品を箱詰め担当部署へ流すという方式を採用しています。これによって、アプリ注文から30分以内に商品が届くという驚きのスピードを可能にしています。

注文後に商品がすぐ配送されることで、顧客はオンラインとオフラインを区別することなく自由に買い物ができるようになっています。「e-Palette」や各国で導入され始めている配送ロボットを、具体的にどのように活用するべきかというヒントは、ここにも見ることができるかもしれません。

まとめ

トヨタの「e-Palette Concept」は、多くの可能性を秘めており、それだけにイメージがつかみづらいという人もいるかもしれません。確実なのは、車が移動手段としてのみ使われていた時代から一歩進み、物流や医療などさまざまな分野にコネクトできるようになりつつあるということです。
ほんの少し先の未来には、自動運転車両が当たり前に街を走っている光景が見られるのかもしれません。

PR:アフターデジタル時代を生き抜くためのDXコンサルティング

記事に関連するサービス
  • ORANGE POS
  • デジベル

S-cubism ニュースレター登録

S-cubism ニュースレターとは

ページ上部へ戻る