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「決済のオムニチャネル化」はなぜ実現しないのか

DXシニアコンサルタントの清水です。

多くのリテール企業が、オムニチャネル化やデジタルトランスフォーメーションを掲げてシステム投資を進めているように感じます。POSとECのDBを統合するなど、オムニチャネルやOMOを実現するためのシステム構築を第一歩として、今ではEC購入商品の店舗受け取りや在庫の共通化など、消費者の利便性を高めるオムニチャネル的なサービスも珍しくなくなってきました。

これは、それだけ各企業がオムニチャネルの重要性を認識し、努力を積み重ねていることの証と言えるでしょう。

しかし、現時点でたった一つ、どれだけオムニチャネルの最先端を走っている企業でも抜け落ちている、つまり実現できていない部分があります。

それが、決済手段なのです。

■目次

どう考えても不便すぎる、現状の決済手段

はじめに、ちょっと想像してみてください。リアル店舗での決済と、ECでの決済について。

「リアル店舗、ECなど全てのチャネルをシームレスに繋ぎ、消費者はオンライン/オフラインの分け隔てなく、どのチャネルでも同じ購買体験を得ることができる」というオムニチャネルのコンセプトに照らし合わせた時に、決済手段がどれだけ「オムニチャネル化」できていないかが分かるはずです。

そもそも、ECでは現金払いが不可能、という事実があります。そして、そのためにECでは「銀行振込」という後払いの手段が一般化していますが、それがECで可能なのであれば、リアル店舗でも後払いができて然るべきなのではないでしょうか(一部、「ツケ払い」など後払い系のサービスを導入しているケースもありますが、オムニチャネルという観点から見れば、それらはもっと普及していいと思います)。

対面決済と非対面決済はフローが異なる

クレジットカードは、リアル店舗でもECでも同一のものが利用できる、という意味では問題ないようにも感じますが、対面では物理的にカードを店員に渡して、それをスキャンしたりICチップを認識させたりする必要があります。一方、非対面ではカード情報を予め登録しておき、決済ごとに本人であることを認証する必要があります。つまり、対面(リアル店舗)での決済方法と、非対面(EC)での決済方法が全く異なるフローを持っているのです。

最近ではQRコード決済も増えてきていますが、基本的にはリアル店舗に寄った決済手段であり、ECで利用するには、クレジットカードと同様、情報を予め登録しておく必要があります。そこに紐づいたID情報としては同一のものではありますが、消費者の行動としては全く別物と言えるでしょう。

唯一、リアル店舗とEC共通で使えるのが「ポイント払い」と言えますが、特にリアル店舗においては、店員が支払い方法を都度確認し、それに合わせてPOSの操作を変える必要があり、そもそも決済完了までの時間が遅くなる傾向にあります。

本質的なオムニチャネル化といえるのか

ざっと挙げただけでも、決済においては、リアル店舗とECでこれだけ「購買体験」の質が異なってしまうのに、それは本質的なオムニチャネル化と言えるのでしょうか?

そもそも決済は、セキュリティという側面に鑑みても購買行動の中でもっとも手間がかかるパートであり、それだけにリアル店舗とECでのフローの違いは消費者にとっても事業者にとっても負担になっているはずです。ただ、現状は「そういうものだ」と思っているに過ぎません。改めて考えてみれば、こんなに不便なことはない、と多くの人が感じるはずです。

決済手段が抱える問題点

このような状況に陥ることになった要因の一つには、決済手段があまりにも乱立し過ぎたことが挙げられると思います。特に、決済手段が増えれば増えるほど、端末も同様に乱立し、リアル店舗のPOS側では連動対応が追いつかなくなるのが1番の問題と言えます。

政府としてはキャッシュレス推進を掲げていますが、このような状況ではその号令自体が事業者に優しくありません。どの決済手段を導入するにも、そのインフラを整えるのにコストと時間を要する訳ですが、どれを選択するのが効果的なのか現時点で判断を下すのが難しいばかりか、実際に運用する際には決済事業者に手数料を支払う必要もあり、店舗の負担が増すばかりです。特に中小企業を筆頭に全事業者が頭を抱えている実態が浮き彫りです。

消費者視点での「決済手段の多様化」とは

消費者側の視点に立ってみても、現状では、あらゆる決済手段が使える店舗が「利便性が高い」とされていますが、オムニチャネルの視点で考えた時、それは果たして本当にそうでしょうか。

例えばコンビニで、ポイントカードの有無を聞かれる、カードを渡す、決済方法を聞かれる、iDなど、非接触型決済を選択する、ポイントカードを受け取る、スマホを決済端末にかざす、ポイントカードを財布にしまう……これが面倒と感じない人などいるのでしょうか?

コンビニで言えば最近出てきたコンビニごとの決済アプリでポイントを連動させればいいという話もありますが、登録できるカードの縛りが厳しかったり、そもそもブランドごとにアプリが変わるというのも、消費者の立場からしたら正直なところ面倒でしかありません。本質的にはもう、全て「コンビニペイ」で統一してくれた方がいいわけです。

そうならない背景には、やはり決済事業会社の利益があり、「消費者のためのオムニチャネル化だ、キャッシュレス推進だ」と言いつつ、その実、事業者や当の消費者がその犠牲になっている、という見方もできますね。

決済のオムニチャネル化を推進するためには

今、戦国時代にある国内の決済業者はこの先、徐々に淘汰されていき、勝者が見えてくるのかもしれませんが、もう少し、本質的にオムニチャネルという観点を入れて努力を積み重ねれば、もっと支持され、市場を掌握できるのではないか、と勝手ながら夢想してしまいます(それを実現するのは並大抵なことではないことは重々承知です)。

最終的に、消費者一人一人のお財布は一つですから、店舗ごとに細かく分割されればされるほど、逆に利用率が下がったり、消費意欲そのものが下がったりするリスクもあるのではないでしょうか。

このような状況に鑑みて、決済業者も含めたリテール業界がまず着手すべきなのは、キャッシュレスのための新たな決済手段を立て続けることではなく、本質的な「決済のオムニチャネル化」であると、私は思っています。

理想的な「決済のオムニチャネル化」

では、どうすればいいのか。

まず、ECで物理的な現金払いは不可能である以上、リアル店舗は物理的な現金決済を放棄する、という考え方が必要です。その上で、消費者はECでマイページにログインすればアプリを経由して、リアル店舗でもFeliCaで支払いができるのが理想的です。

やはり、非接触型で、動作回数がもっとも小さいFeliCaで決済するのが、一番いい購買体験に繋がるはずです。しかも、それがどの決済業者の手段を使っているかも、端末側で判別できるというのが、本来あるべき姿でしょう。

そうすれば、消費者は店員から何も聞かれなくても、とにかくスマホを端末にかざすだけ、という動作に統一されます。これだけで、回転率がかなり変わるはずです。

「デジタルPOS」の構想

この場合の店舗におけるPOSは、正確な言い方ではないかもしれませんが「デジタルPOS」というイメージになります。店舗POSで読み取った商品情報はWeb上のカートに保管され、スマホ内のアプリで決済完了(従来のEC決済)するか、店舗端末にかざして支払完了。
しかも、その情報は「支払い済み」「未会計」という二重のカートなどにすることで消せない仕組みにするのが理想的でしょう。

更に消費者に選択肢を与えるとするならば、冒頭で申し上げた「ツケ払い」など後払い系のサービスを利用するのも利便性を高めるには有効だと思います。
(支払い行為を行わない場合は銀行から引き去りが走る仕組みが必要ですが)

また、クレジットカードの扱いについて、弊社ではECにおける非対面決済用に登録した情報を対面決済で利用できるシステムを構築した実績もあるので、同一クレジットカードを決済行動まで含めて統一させることは技術的に可能となっています。

さいごに

私が申し上げた「決済のオムニチャネル化」は、物理的には可能なことなはずです。様々な権益、思惑、法律など、そのほかのハードルは非常に高いのですが、日本のリテール業が本当の意味で世界をリードするオムニチャネル大国を目指すのであれば、企業を横断して、どこかで本気で取り組むべきテーマなのではないかなと常々思っています。

中国のリテールマーケットが進んでいる理由は、国策で決済のデジタル化が進んでいるから(しかも2強体制に限定している)。
欧米のキャッシュレスが進んでいる理由は、利用者が銀行口座を持つこと自体に手数料が発生し、デビットを利用する事業者の負担が少ないから。(日本では口座はタダだがサービスに手数料がかかる)

このように私は考えています。

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この記事を書いた人

清水秀大
株式会社エスキュービズム DXコンサルティング部 シニアコンサルタント
銀行・証券・保険を中心としたのシステム営業を10年勤めた後、満を辞して小売業界へ。年間200社以上の企業と商談を重ねるITコンサルのエキスパート。セールスという立場でありながら、クライアントから要件定義へのアサインをリクエストされることもしばしば。趣味はゴルフと長距離ドライブ(沖縄以外の46都道府県を走破)。

■DXコンサルタント 清水秀大 の執筆記事


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