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クイズ!CXを改善せよ。顧客のペインポイントはどこ? 〜DXは「売った後」までを考える〜

デジタルトランスフォーメーション(以下DX)には、どうすれば購買体験の質を高められるのか、という顧客視点が欠かせません。

本稿では、現役DXコンサルタントの実際の購買体験に基づいて、ペインが発生しやすいCXのポイントと、改善策についての考察をクイズ形式でお届けします。クイズに挑戦しながら、顧客視点を持ったDX施策への意識を高めていきましょう。

目次:

顧客視点を養うエクササイズに挑戦!

こんにちは。DXコンサルタントの村上です。

職業柄、消費者として行動すると、店舗での対応やウェブサイトなどを通じて、見えてくること、気になることが色々と出てきます。

そこで今回は、私の購買体験の中で感じた「最大のペインポイント」がなんだったのか、そしてそれはどのように改善できるのかについて、クイズ形式でお伝えしたいと思います。

ペインポイントとその解決策は、そのまま流通小売企業がDXを実行する際に考慮しておきたいポイントとも言えます。もちろん、消費者が10人いれば、10通りのペインポイントがあると思いますが、ペルソナがハッキリとした個人の体験に基づいてそれを想像することは、ある種のエクササイズとして機能すると思いますので、関係者各位はぜひ、そのつもりでチャレンジしてみてください。

では、早速問題です。

Q:国内大手シューズメーカーでスニーカーを購入。私が感じた最大のペインポイントは?そしてその解決策とは?

以下に、私のある購買体験をフェーズごとにレポート形式で記していきます。それらを通じて私が顧客として感じた最大のペインポイントはどこでしょうか。そして、そのペインポイントの解決策も併せて考えてみてください。

1、購買前

私は日中ほとんどの時間クライアントを訪問してまわるため、革靴だとそれなりに足への負担を感じていました。そんな中、男性でありながら今年話題となった#KuToo運動に感化され、ビジネスユースでも違和感のない黒のスニーカーが欲しいとかねてから思っていたのです。

インターネットでリサーチしたところ、ある国内大手のシューズメーカーが、まさに私のイメージ通りのスニーカーを出していることを知りました。そこで私は、そのスニーカーを実際に見てみたいと思い、会社に近い銀座の店舗に該当商品の在庫を電話で確認した上で試着の予約を申し込みました。

このときは、その商品を気に入ろうが気に入るまいが、いずれにしてもあくまで試着のみの予定で予約を取っています。なぜなら、これは家庭の事情ですが、そのスニーカーを購入するためには妻の承認が必要だからです。試着して、もし気に入れば、その段階で妻の承認を取るつもりでした。

2、銀座店舗にて取り置き

さて、いざ店舗を訪れてみると、私の想定する着用シーンを伝えた販売スタッフからもともと目当てにしていた商品以外の型番も提案されました。それは、WEBサイトのリサーチでは見つけられなかった商品です。

私は新たに提案されたスニーカーの方がデザイン・履き心地ともに気に入ってしまいました。価格は目当てにしていたものよりも5000円ほど高かったのですが、そんなことは問題ではなく、それを購入することに(私の中では)決めました。

妻の承認を得るのにどれぐらいの時間を要するか不明でしたが、念の為、余裕を持って1週間の取り置きをその場で申し込みました。その際に、スタッフからは受付用紙を手渡され、必要事項を手書きで記入しています。

3、自宅にて

銀座店からの帰宅後、早速妻にスニーカーの購入申請を行ったところ、めでたく承認が降りました。しかし、あいにくその週末は、子供が楽しみにしていたミニカーイベントが横浜で開催されるため、銀座に行くことが出来なくなりました。

しかし私はすでにそのスニーカーを早く手に入れたくてたまらなくなっています。そこでWEBサイトを確認したところ、横浜にも同ブランドの店舗があったため、早速横浜店に電話をかけ、取り置きしているものと同モデルの在庫があるかを確認しました。幸い横浜店でも同モデルで希望サイズの在庫があったため、週末に購入することを伝え、横浜店でも取り置きをお願いしました。

4、横浜店にて、いよいよ購入

イベントの帰り、横浜店に立ち寄ると、(すでに銀座店で試着を済ませているため)該当商品を出してもらい、即決済を行います。店舗での滞在時間はものの10分といったところでしょう。そして、横浜店を後にするのと同時に、銀座店に電話をかけ、事情を伝えて取り置き解除と謝罪の意を伝えました。

5、横浜からの帰宅後

横浜店で商品を受け取るとき、しっかりと確認しなかった自分が悪いのですが、帰宅後に箱から取り出すと、スニーカーの左足側面に大きな傷が付いていました。最初は汚れかと思ったのですが拭いても落ちず、そこで傷であることに気がついたのです。スニーカーが黒いため傷が非常に目立っており、これは看過できないレベルです。

そこで、横浜店に電話をかけて交換してもらいたい旨を伝えました。この時に応対してくれたのは、声からの憶測ですが比較的若いスタッフです。彼の言い分では、再度来店してもらうしか交換する方法がないということでした。しかし、自宅から横浜は気軽に行ける距離ではありません。交通費もそれなりにかかります。そこで私は、会社帰りに立ち寄りやすい銀座店での交換が可能か彼に尋ねました。

しかし、彼の回答はNO。購入した店舗でしか対応できないの一点張りでした。

6、その翌日

横浜店を再度訪問することに気が進まない私は(遠いし、交通費も高い、そもそもスニーカーの交換のためだけに横浜に行く必然性が見つからない…)、同ブランドのECサイトで交換対応してくれるのではないかと思い立ち、ECサイトの問い合わせ先を確認するも、電話対応はしていないようでした。

しかし、さらにサイト内をくまなく確認したところ、ECでは着払いで該当商品を送れば交換に応じてもらえる旨の記載を発見したのです。

ここで一つの疑問が頭をもたげます。これほどメジャーな企業であれば、店舗でもECと同じサービスレベルを維持していないことなどあり得ないはずではないかと。

私は再び横浜店に電話をかけました。対応したのは、昨日のスタッフとは別の女性で、その口ぶりから明らかに職位は高そうです。私はこれまでの経緯と共に、ECサイトでは着払いでの交換に対応しているのだから、店舗でも可能なはずではないかと伝えました。

これでもしそれが受け入れられなかったら、その時私は初めて強硬な態度へとスイッチを切り替えるべく準備していたのですが、彼女が発したのは「着払いで送っていただければ交換させていただきます」という一言でした。

私の購買体験レポートはここまでです(おかげさまで、無傷のスニーカーは入手済みです)。

さて、お分かりになったでしょうか?

解答編:私が感じた最大のペインポイントは……

「それならそうと、最初から言ってくれよ!」

です。

最終的に横浜店へ電話をして、「着払いでの交換対応が可能かどうか」を確認した時のことですね。

もちろん、それまでにも積み重なっていた「交換対応が不自由」ということにまつわる細かなペインポイントが布石となって、この時点で最大化された、というのがより正確な言い方かもしれません。

ここまでで私とブランドの間にできた接点、関係性において改善すべきポイントが浮き彫りになっています。

一貫して感じたのは、この企業は現状オムニチャネル化が全く進んでいないということです。仮にオムニチャネル化へ向けて在庫の一元化、そして売上成績などの交通整理が進められているのであれば、今回のような対応にはならなかったはずです(横浜店に最初電話した時に「購入した店舗でないと交換対応ができない」と言われたのは、明らかに売上管理と在庫管理が縦割りになっていることによる弊害でしょう)。

購入したスニーカーは非常に履き心地がよく、またデザインも好みで気分がアガるだけに、購買体験でネガティブな感情を持ってしまったことが残念です。購買体験がいいものであれば、もっと素直にブランドのファンになり、次回の買い物を今から楽しみにしているような状態になっていたことだって考えられます。

では、このような購買体験をポジティブなものにするには、何を解決すればいいのでしょうか?

回答編:解決策は……

「統合DBと顧客IDの一元管理実現」

です。

他にも色々と改善ポイントはあると思いますが、現状のCXを改善するために真っ先に着手しなくてはならないのが、DBを統合し顧客IDが一元管理されている状態を構築することに他なりません。

その上で、今回の購買体験を最も理想的な形にするとしたら、以下のような感じでしょう。

  1. 銀座店で取り置き用の規定用紙への記入は必要なし(その代わり、新規会員登録は必要→これでIDを一元管理する準備が整う)
  2. 横浜店で取り置きし直した時点で、銀座店でもその情報をチェックして自動的に取り置き解除(私が自主的に取り置き解除の電話をかける必要もなし)
  3. 傷みに気づいた時の返品対応として、たとえ横浜店で購入した商品でも銀座店に持ち込めばOK。
  4. 仮にそれを知らなかった私が横浜店に電話で問い合わせたとしても、最寄りの店舗へ持ち込めば良い(あるいは着払いで送れば対応できる)ことを販売スタッフがスムーズに案内できる。

DXの観点から言えば、上記項目を実現できるシステムおよび組織体制の構築を考えることこそが、身のあるDXに直結するのです。

今回挙げたものは、あくまで私が感じたペインポイントから逆算した改善案の域を出ません。実際には、もっと膨大なポイントを抽出した上で、プライオリティを決めて要件に落とし込んでいくことになりますが、店舗もECも一貫したサービスを提供し、顧客との関係性を強固なものにするためのDXを実現するのであれば、考えるべきことのエッセンスはこの記事にも盛り込まれているはずです。

まとめ

今回、特にフォーカスしたかったのは、商品を購入した後のCXについてです。

DXやOMOを語るとき、「どこでも買える、どこでも受け取れる」という部分、言い換えれば商品を「売る」部分に重点が置かれがちです。しかし、今回の購買体験を通じて、実は商品を売った後のCXを考えることは、売る部分のCXを考えるのと同じぐらい大切だということを、顧客の立場だからこそ痛感しました。今回で言えば、「どこでも返せる、交換できる」をどう実現するか、ということですね。

みなさんも、ご自身が顧客だった場合、どこにペインポイントを感じるのかを可能な限り具体的に想像して、それを自社の事業に当てはめてみてください。そうすると、自ずとDXの方向性、改善策の糸口が見えてくるかもしれません。

この記事を書いた人

村上 永吉
株式会社エスキュービズム DXコンサルティング部シニアコンサルタント
アミューズメント施設店舗責任者やエリアMGに6年従事した後、ORANGE POS販売拡大時期のエスキュービズムに入社。200社以上の店舗システム導入実績に由来する豊富な業務知識と理解に基づいたIT構想の実現提案を得意としている。趣味は麻雀。好きな役はドラが頭のメンタンピン一盃口三色で倍満。

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