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軽減税率についてもう一度考えてみる(※18/5/25追記)

私たちが一番身近に触れている税として、消費税があります。
現行ではご存知の通りほとんど全ての商品に8%の消費税がかかっていますが、2019年から10%の消費税が適用されます。いつから適用されるかということですが、国税庁のホームページには以下のように掲載されています。

消費税率及び地方消費税率の8%から10%への引上げ時期が、平成 31 年 10 月 1 日とされました。
国税庁 消費税法改正のお知らせ
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/shohi/h27kaisei.pdf

また、同日に軽減税率制度が適用開始となります。

軽減税率制度実施のお知らせ
平成31年10月1日より軽減税率制度が実施されます。
出典:国税庁ホームページ 消費税の軽減税率制度について
http://www.nta.go.jp/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/index.htm

今回はこの軽減税率について、押さえておきたいポイントを述べていきたいと思います。

目次

1 軽減税率とは?
軽減税率導入の目的
法人税はどうなる?
軽減税率が適用される対象の品目
外食は対象外。外食の線引きとは?
食玩やサプリメントは?
証券への軽減税率
なぜ新聞に軽減税率が適用される?

2 食品を扱う飲食店への影響
仕入れの仕訳はどうなる?

3 軽減税率開始に伴う補助金の申請と適用時期
補助対象期間はいつからいつまで?


4 インボイス方式とは?
免税事業者はどうなる?

5 まとめ

1 軽減税率とは?

軽減税率とは、「消費税を上げられるところは上げて、抑えるところは抑える」という税の徴収方法です。ニュースでたびたび取り上げられているので説明は不要かもしれませんが、飲料や食料品といった生活に密接にかかわる商品と新聞の税率は軽減税率8%に抑えられ、その他のものは標準税率10%に引き上げられます。

1 消費税率及び地方消費税率

平成31年10月1日(適用開始日)以後に行われる資産の譲渡等、課税仕入れ及び保税地域から引き取られる課税貨物に適用される税率は、次のとおりとなります。

標準税率は10%(消費税率7.8%、地方消費税率2.2%)です。
軽減税率は8%(消費税率6.24%、地方消費税率1.76%)です。
なお、適用開始日以後に行われる資産の譲渡等のうち一定のものについては、適用開始日前の税率を適用する等の経過措置が講じられています。
詳しくはコード6950 社会保障と税の一体改革関係をご参照ください。

出典:国税庁 商品の軽減税率の実施
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6102.htm

軽減税率導入の目的

消費税が8%から10%に増税される目的は、財源の確保にあります。
そして軽減税率導入の目的は、消費税を増税する際に伴う逆進性の緩和があります。逆進性は馴染みがない言葉ですが、このような意味です。

それぞれが逆の方向に進む傾向。例えば、消費税率が上がると低所得者ほど収入に対する食料品などの生活必需品購入費の割合が高くなり、高所得者よりも税負担率が大きくなるということ。

出典:コトバンク 逆進性
https://kotobank.jp/word/逆進性-476062

税制抜本改革法第7条に基づき、消費者税引上げに伴う低所得者対策として導入されます。

法人税はどうなる?

法人税については租税特別措置法第42条の3の2(中小企業者等の法人税率の特例)により、中小企業については平成24年4月1日~平成29年3月31日までの間に開始する各事業年度の所得のうち、800万円までは法人税を15%に抑えることができます。これ以上の所得については現行23.4%の法人税が適用されます。

中小企業者等の平成24年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する各事業年度の所得金額のうち年800万円以下の金額に対する法人税の軽減税率を15%(本則:19%)とする。
(注)中小企業者等とは、次の法人をいう。
普通法人(資本金の額等が5億円以上である法人等との間にその法人等による完全支配関係があるもの等を除く)のうち各事業年度終了の時において資本金の 額等が1億円以下であるもの又は資本等を有しないもの
公益法人等
協同組合等
人格のない社団等

出典:財務省 中小企業者等の法人税率の特例の概要
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/215.htm

しかしこの特例は2年間延長の見通しで、平成31年、つまり2019年3月31日まで適用されることになります。

参考:日本経済新聞 中小減税特例を2年延長 法人税15%維持 政府・与党方針
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS12H1T_S6A111C1MM8000/
参考:財務省 平成 29 年度税制改正(租税特別措置)要望事項
http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2017/request/meti/29y_meti_k_19.pdf

軽減税率が適用される対象の品目

海外ではVAT(英語:Value Added Tax, 付加価値税)が日本で言う消費税にあたりますが、品目によってかかる税率が異なります。
例えばイギリスは一般消費税が20%ですが、食料品・書籍・新聞・雑誌などの出版物・子供用品などについては無税となっています。
ドイツのVATは飲食料品など生活に密接に関連する品目では7%課税されますが、それ以外は19%です。

日本において軽減税率が適用される品目とはいったい何でしょうか。

1 飲食料品(酒類を除く。)
2 週2回以上発行される新聞(定期購読契約に基づくもの)
なお、1の飲食料品の譲渡には、いわゆる「外食」や「ケータリング」は含まれません。
また、保税地域から引き取られる飲食料品についても軽減対象課税貨物として軽減税率 の対象となります(改正法附則 341一、二)。
出典:国税庁 消費税の軽減税率制度に関するQ&A (制度概要編)
http://www.nta.go.jp/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/02.pdf

酒類を除く飲料・食料品と新聞が8%で据え置きです。また、保税地域から引き取られる飲食料品とは輸入貨物のことを指し、飲食料品であれば軽減税率対象です。

外食は対象外。外食の線引きとは?

飲食料品は普段購入する飲食料品が対象で、お菓子や飲料も含みます。対象にならないのは、レストラン等での外食とケータリングや出張料理です。外食の線引きがわかりづらいですが、「テーブルや椅子に座って飲食品が提供される状態」であれば外食にあてはまり、持ち帰りができるものは軽減税率の対象となります。ただし、有料老人ホームや学校で提供される食事は、軽減税率の対象となります。

コンビニのイートイン利用は「外食」、価格表示はどうなる?(※18/5/25追記)

2018年5月、消費者庁・財務省・経済産業省・中小企業庁は、イートイン設備のあるコンビニなどの店舗では「同一の飲食料品の販売につき適用される消費税率が異なる場面が想定される」として、価格表示についてのガイドラインを示しました。

「事業者の判断により、テイクアウト等及び店内飲食の両方の税込価格を表示することが考えられる」とし、「テイクアウト等と店内飲食との間で税込価格が異なる場合は、事業者は、顧客の意思表示により異なる税率が適用され、税込価格が別途計算されることがあり得る旨、店舗内の目立つ場所に掲示するなどの手段により、一般消費者に対して注意喚起を行うことが望ましい」としています。

たとえばテイクアウトの場合は税率が8%のため、税込価格の表記もイートインより低く表示し、消費者に対しテイクアウトかイートインかで価格が変わることを知らせる必要があるということです。

画像出典:https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/20180518kakaku_2.pdf

あるいは、「事業者の判断により、テイクアウト等及び店内飲食の税込価格が同一になるようにテイクアウト等の税抜価格を高く設定、又は店内飲食の税抜価格を低く設定した上で、当該一の税込価格を表示することが考えられる」とも書かれています。
たとえば外食には当たらないとされる「出前」の場合、配送料を上乗せして店内飲食と同一価格にする、といったケースを例として挙げています。

ぜひ、経産省のガイドラインをご確認ください。

参考:https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d02.htm

食玩やサプリメントは?

おまけつきのお菓子はどうなるのかというと「一体資産」というものにあたります。
以下の2点を満たす場合のみ軽減税率の対象になると説明されています。

  1. 1万円以下
  2. 食料品にかかる価値が全体価格の3分の2以上

またサプリメントに関しては、特定保健用食品や栄養機能食品などは軽減税率の対象になります。医薬品や医薬部外品は対象外です。

こちらの資料では対象などについての詳細が掲載されています。

参考:財務省 消費税の軽減税率制度等に関する資料
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d02.htm

証券への軽減税率

株式への投資において軽減税率が適応されていた期間もありました。適用された目的としては投資を増やすためです。
軽減税率適用期間中は証券に適用される税率は10%でしたが、2013年末日に廃止されました。現在は株式等に適用される税率は20%です。

出典:金融庁 http://www.fsa.go.jp/ordinary/zeisei/index3.html

なぜ新聞に軽減税率が適用される?

ところで、軽減税率の対象として新聞が入っているのにお気付きの方もいると思います。
新聞が軽減税率の対象になる理由として、「新聞は思想のために必要なもの」「読者の負担を減らすため」という理由が挙げられています。日本新聞協会のウェブサイトでは、海外において新聞の税率が低く設定されていることを引き合いに出しています。

参考:日本新聞協会 なぜ新聞に軽減税率が必要なのですか?
http://www.pressnet.or.jp/keigen/qa/

昔は情報を得る媒体として定番だった新聞ですが、近年はネットで電子版のニュースが簡単に見られるようになったため、新聞を購入して読む人は激減しました。
ここで新聞の税金が上がってしまうと、さらに新聞離れが進んでしまうと懸念した業界関係者が新聞の増税に反対したのではないかと言われていますが、あくまでもそれは推測の域を出ていません。

このように、軽減税率については様々な意見がありますが、2019年10月には予定通り導入される予定です。

2 食品を扱う飲食店への影響

次に、消費税増税と軽減税率が導入されることにより飲食店にどのような影響があるのか?また軽減税率導入に伴い設備投資に対する補助金のあらましと、インボイス方式について述べていきたいと思います。

飲食店にはどのような影響がある?

軽減税率適用開始により懸念されるのが、外食産業やケータリング業(出張料理)への影響です。前半でも説明した通り、外食やケータリング・出張料理は「外食」にあたり、一般消費税10%が課税されます。
外食ではない食料品の購入には軽減税率8%が適用されるため、ただでさえ競争が激しい外食産業は大打撃を受けるのではないかと考えられます。外食産業やケータリング業にとってデメリットこそあれ、メリットはありません。

飲食店の最大のライバルとなるのが、コンビニやスーパーです。コンビニやスーパーでは弁当や惣菜が売られていますが、これらは軽減税率の対象になるためこれまで通り8%で課税されますが、飲食店で提供される料理や飲料は10%の課税です。このため両者を比較した時にコンビニやスーパーに消費者が流れていくのは想像に難くないでしょう。

また、レストランでも通常通り食事を提供するのに加えてテイクアウト商品を扱っている店舗もあります。そのような店舗ではレジの税率の計算を切り替えなければいけないため、混雑時に手間がかかったり、税率の切り替えミスが発生することも予想されます。

仕入れの仕訳はどうなる?

仕入れの際は、帳簿をつける時には通常税率10%と軽減税率8%で分けて計上しなければいけません。

なお現行では仕入税額控除を受けるために「帳簿および請求書等の保存※」が必要となりますが、軽減税率導入開始後はこれに加え区分経理に対応した帳簿及び請求書等の保存が必要になるため、経理の業務が増えることになります。※請求書等には納品書・領収書・レシート等も含まれる

仕入税額控除の意味は、以下の通りです。

消費税額を計算するうえで必要となる控除。事業者が国に納める消費税額は、売上時に受け取った消費税額から、事業に必要な物品購入など仕入れのために支払った消費税額を差し引いた額を納める。仕入れ時に支払った消費税額の方が多かった場合は、国から払いすぎた分の還付を受けることができる。

(2010-09-29 朝日新聞 朝刊 2社会)
出典 朝日新聞掲載「キーワード」朝日新聞掲載「キーワード」について

3 軽減税率開始に伴う補助金の申請と適用時期

日本政府は増税と軽減税率適用開始において伴う飲食業などにおけるレジの設備投資や受発注システムの改修支援に補助金を交付すると発表しています。予算は予備費966億円が計上されており、「A型:複数税率対応レジの導入等支援」と「B型:受発注システムの改修等支援」の二つ種類の補助があります。

レジ導入の場合は3分の2の補助率(ただし3万円以下のレジを導入の際は4分の3の補助率。タブレット等端末は2分の1の補助率)、受発注システムの改修等支援は4分の3の補助率が適用されます。適用条件等の詳細はこちらのページを参考にしてください。

参考:軽減税率対策補助金事務局 軽減税率対策補助金とは
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/2015/151218keigenzeiritu.pdf

補助対象期間はいつからいつまで?

設備費用は一旦事業者が負担し、申請することによって補助金が給付されます。補助対象期間と補助金交付申請受付期間が延長されていますので、それぞれご確認ください。

■補助対象期間:複数税率対応レジおよびレジシステムの導入又は改修の完了を要する期間
平成28年3月29日~平成31年9月30日
※ 導入完了日(設置日)が対象期間内であっても、レジの購入日が平成28年3月28日以前である場合は補助対象期間外です。
※ リース契約を利用する場合は、リース契約日及びリース開始日が当該期間であることが必要です。
■補助金交付申請受付期間:補助金申請書類の提出を要する期間(消印日)
平成28年4月1日~平成31年12月16日
※ 導入及び改修完了後、これに係る代金の支払いを終えた場合は速やかに補助金申請を行ってください。
※ リース契約を利用する場合は、リースの開始日以降に補助金申請を行ってください。

出典:軽減税率補助金対策事務局 図解でわかる申請のポイント
http://kzt-hojo.jp/applicant/schematic_faq/

4 インボイス方式とは?

日本国内においては請求書を発行する際「請求書保存方式」が用いられています。
請求書保存方式とは、適用税率・税額を記載する義務はなく、請求額は税込合計額を記載できるものを指します(もちろん、税率や税額を記載しても問題ありません)。また、請求書の項目名も簡易なもので記載されています。

一方、インボイス方式は欧州で取り入れられている方式で、すべての商品に詳細な情報が記載されているものを指します。インボイス方式は財務省の定義では以下のように記載されています。

・「インボイス方式」は、課税事業者が発行するインボイスに記載された税額のみを控除することができる方式。
1 課税事業者は「インボイス」の発行が義務付けられており、また、自ら発行した「インボイス」の副本の保存が義務付けられている。
2 「インボイス」に適用税率・税額の記載が義務付けられている。
3 免税事業者は「インボイス」を発行できない。したがって、免税事業者からの仕入れについて仕入税額控除ができない。
(注)「インボイス」とは、適用税率や税額など法定されている記載事項が記載された書類。欧州においては、免税事業者と区別するため、課税事業者に固有の番号を付与してその記載も義務付けているが、「インボイス」の様式まで特定されているものではない。

出典:財務省『請求書等保存方式』と『インボイス方式』
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/401.htm

インボイスに適用税率を記載しなければいけない理由として、欧州では品目によって異なる税率が適用されているため、請求書1枚毎に記載をしないとどの税率を適用したのか管理が難しくなるためです。

免税事業者はどうなる?

税負担が免除されている免税事業者は、今回の増税は対岸の火事のような印象を受けますが、実は免税事業者にも影響があります。

免税事業者とは、「前々年度の所得が1,000万円以下のため、課税対象にならない事業者」を指します。法人の場合は前々年度の所得ですが、個人事業主の場合は前々年の所得が対象です。所得が低いために消費税を支払う義務を免除されている事業者は、増税に関する一連の動きのなかでインボイス方式が導入されることにより、取引から排除されてしまうのではという懸念があります。

どういうことかというと、インボイス方式では課税事業者番号と税率を記載する必要がありますが、免税事業者は課税事業者番号が割り振られないためインボイスを発行できません。

例えば免税事業者の本の卸販売店(A)から課税事業者の書店(B)が書籍を購入するとして、1冊の本を本体価格1,000円で仕入れるとします。このとき、免税事業者はインボイスの発行ができません。

そして本を購入した(B)はこの本を消費者に1,500円で売るとします。消費者は消費税10%を含めた金額を支払うので(B)は1,650円受け取ります。消費税は150円受け取っていることになりますが、最初にもし課税事業者から仕入を行っている場合、(B)は仕入価格の10%つまり100円の税額控除を受けられるので50円を納付すればよいですが、免税事業者には消費税を請求できないため税額控除を受けられず、この場合100円を仕入側が負担しなければいけなくなります。

現行であれば課税事業者も免税事業者も仕入税額控除と言って、仕入と売上にかかる消費税を差し引いた金額を納付できますが、免税事業者がインボイスを発行できないために仕入税額控除ができず仕入側が損をすることになります。このため、仕入れ先は普通に考えて価格が同じであれば免税事業者ではなく課税事業者から商品やサービスを購入したいと思うでしょう。このような理由で免税事業者の排除が行われるという懸念があります。

まとめ

軽減税率の導入は長年議論されてきました。一時期は財務省が提案した案で消費税を一律10%で徴収し、低所得者に対してマイナンバーと紐付けて還付をしたらどうかという案もありました。
結局この案は税に対する負担感を大きくさせるため、立ち消えになってしまいました。消費税は一番一般消費者の目に付きやすいものなので、政府も慎重に議論を重ねてきました。

2019年10月にスタートする増税と軽減税率の適用によって実際にどのような混乱があるのかはわかりませんが、事前によく理解しておくことで冷静に対処できるでしょう。飲食業界などでは新しいレジの導入やシステム改修が必要になるため、補助金の申請や期間についてはしっかりと把握しておく必要がありますね。

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