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ダイナミックプライシングとは?企業への導入事例と日本への影響について

マーケティングにおいて非常に重要である値付け。値付け担当者はコストや売り上げ予測の分析など、あらゆる情報を集めて適正価格を算出しています。

最近では、市場の需要によって価格が変動する“ダイナミックプライシング”が注目され日本でも導入が進んでいます。

ダイナミックプライシングにはメリットだけでなくデメリットもあるので、導入の際には特徴を踏まえた上での慎重な判断が必要となります。

ダイナミックプライシングの概要や注意点、導入事例についてご紹介します。

【目次】

ダイナミックプライシングの概要について

ダイナミックプライシングは、市場の需要に応じて価格を変える方法を指します。同義語として、変動料金制や動的価格設定などがあります。

ダイナミックプライシングは、商品にかけたコスト、つまり原価や品質によって価格が決まるのではなく、シーズンや時間帯など“需要の大きさ”によって価格が変動していきます。

すでになじみのあるダイナミックプライシングとしては、大型連休に値上げされる飛行機のチケット代やホテル代、急な大雨で値上がりする傘などがあります。

ダイナミックプライシングのメリットについて

ダイナミックプライシングは、お客様側にも企業側にもメリットがあります。

お客様側のメリット

ダイナミックプライシングは需要が高まる時期に商品(またはサービス)が値上がりする代わりに、需要が下がる時期は値下がりします。

そのため需要が下がる時期にあえて購入することで、定価よりも安い金額で商品を手に入れることが可能となります。

スポーツ観戦やコンサートで座席ごとにチケット料金が変わる場合は、見やすさを取るか安さを取るか選ぶこともでき、選択肢がさらに広がります。

企業側のメリット

ダイナミックプライシングは、市場の需要に合わせて価格に弾力を持たせることで収益の最大化が期待できます。

需要が高まる時期であれば、商品の品質を変えずとも高額で売れていきます。需要が下がる時期に価格を下げれば購入者も増えるため、なるべく避けたい在庫残りを減らすことができます。

ダイナミックプライシングのデメリットについて

市場の需要に合わせるプライシングはメリットばかりと思いがちですが、デメリットも忘れてはいけません。

お客様側のデメリット

ダイナミックプライシングにより、今まで定価で購入していた商品価格が高騰するデメリットがあります。

またお盆の帰省や大型連休の旅行など価格が高騰する時期にしかサービスを利用できない場合も多くあり、サービスの品質はそのままに値段だけが上がります。

企業側のデメリット

ダイナミックプライシングは、様々な外的要因を洗い出した上で市場の需要を把握し、適正なプライシングをしなければなりません。

外部要因には、競合の価格だけではなく天候や周囲で行われるイベント、さらにはSNSでの評判まで多岐に渡り、計算が煩雑になりがちです。

また、市場の需要と照らし合わせた結果であっても値上げ額が大きくなれば、「価格のつり上げである」と消費者に不信感を与えてしまう可能性もあります。

プライシングのアルゴリズムをAI(人工知能)が担い始めた

企業側にとって算出が煩雑であるダイナミックプライシングですが、最近はAIに算出を任せる企業が増えています。

AIといえば、あらゆる情報を検索して集めたり、ビッグデータを基に正確な計算をしたりするのが得意。さらにディープラーニングによって回数を重ねるごとに精度が高まるので、価格の算出にうってつけです。

最近はAIビジネスが盛り上がっていますが、ダイナミックプライシングにおいても独自アルゴリズムで計算できるサービスを展開するビジネスが始まっています。

AIにプライシングを任せることができれば、値付け担当者の作業時間が大幅に削減できるので企業にとって大きなメリットとなります。

ダイナミックプライシングを採用する企業が続出

ダイナミックプライシングは、ホテルや航空会社では一般的なこととして受け入れられています。たとえばホテルの場合は年末年始や大型連休に限らず、人気アーティストがコンサートを行う場合にも宿泊料金が高騰します。

これも市場の需要が高まっていることが原因であり、遠方から来た参加者は納得せざるを得ません。「高くても仕方ない」という理由から、早々に客室は満席となります。

格安航空会社(LCC)も安さを売りにしているものの、連休や人気のフライト時間は需要が高いため運航費用が高額になっています。

小売業界のトップ企業Amazonも採用

常に最新技術を取り入れ市場に大きな影響を与えるAmazonも、ダイナミックプライシングを導入しています。Amazonの場合はAIが自動で市場を分析して、Webサイト上の表示価格に反映させます。

特定の商品に人気が出た場合は市場の需要が高まるので、それに伴い価格も上昇します。そのため、まったく同じ商品であっても購入のタイミングで値段が上がってしまうケースがあります。

ダイナミックプライシングを導入している企業

米国最大スーパー「ウォルマート」

小売業者として世界最大規模を誇るウォルマートは、いつ来ても他店より安いという「EDLP(エブリデーロープライス)」という戦略で成功しています。

そんなウォルマートもダイナミックプライシングを取り入れ、市場の状況によって価格を変える戦略にシフトしはじめています。

ただ、“最安値”を最大の武器にしているウォルマートですから、+αの工夫があります。

2014年にはオンラインアプリ「セービング・キャッチャー」を始めており、ウォルマートで購入した後同地区の競合店より高かった場合、差額を返金するという戦略まで取り入れています。

スポーツ業界

ダイナミックプライシングはアメリカが発祥ともいわれており、特にアメリカのスポーツ観戦チケットではダイナミックプライシングが一般的に導入されています。

メジャーリーグや首位攻防戦・有名選手の引退試合など付加価値が高い場合は、その分チケット価格もあがります。そのほか、開催日時や当日の天候をはじめ、スポーツチームの調子までが価格に影響しています。

米国有名歌手のライブチケットでも採用

シンガーソングライターとして世界的に人気があるテイラー・スウィフトも、自身のライブチケットにダイナミックプライシングを取り入れています。

あるコンサートツアーは一瞬でコンサートチケットが完売したものの、別のコンサートツアーでは空席が目立つという観客動員の不安定さがありました。その状況についてコンサート関係者は、「瞬時に完売するチケットは、価格設定が適正ではない」と見ています。

また、人気アーティストのコンサートチケットは転売が盛んに行われており、ダイナミックプライシングはそれを阻止するためのアーティスト側の対処法ともされています。

ただ、ダイナミックプライシングを導入したことで、最初は6万円程度であったチケットが3か月後には10万円を超えるケースも発生しており、ファンは戸惑っています。

音楽業界で働く同業者であってもダイナミックプライシングは賛否両論あり、導入しないと決めているアーティストもいます。

参照:マイナビニュース「テイラー・スウィフトのチケット販売戦略:価格変動型セールスは革新的か?需要低下か?」
https://news.mynavi.jp/article/20180411-615163/

ダイナミックプライシングは日本でも導入され始めている

エンターテインメント・スポーツ業界

USJ

大阪にあるユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)も、2019年1月から変動入園料としてダイナミックプライシングの導入を開始しました。

USJは2000年代には入場者数の減少が合ったものの、その後マーケティング戦略に成功。今や東京ディズニーリゾートを超える勢いがあり、9年連続で入園料を値上げしています。

ダイナミックプライシング導入前の入園料は一律7,900円でしたが、春休みの学生が増える3月は8,700円、中国の旧正月である春節にあたる2月は8,200円となっています。その代わり閑散期に入る1月の入園料は、7,400円まで価格が下がっています。

参照:東洋経済ONLINE「USJ、春休み料金「8700円に1割値上げ」の思惑」より
https://toyokeizai.net/articles/-/241126

経済産業省もダイナミックプライシングを推進

ユニクロでも取り入れられているRFID(電子タグ)を活用して、賞味期限が近くなった商品をダイナミックプライシングする実証実験が経済産業省主体で行われています。

スーパーでは賞味期限が近くなった商品を値下げして売れ残りを防いでいますが、同じようにコンビニにも消費期限や過剰在庫で価格を変えるダイナミックプライシングにより、社会問題である大量廃棄を軽減する狙いがあります。

経済産業省は実証実験を経て、2025年までにコンビニの商品すべてにRFIDを取り付けるよう進めており、ダイナミックプライシングに積極的になっています。

RFID+ダイナミックプライシングで食品ロス削減!次世代店舗実証実験スタート」でも解説していますので、ぜいご覧ください。

H.I.S×コンビニがタッグを組みダイナミックプライシングを実施

旅行業者であるH.I.Sとポプラが協力し、アプリを使ったダイナミックプライシングを行っています。

消費期限が近付いた商品を店舗ごとに登録して、割引のクーポンをアプリで配信。利用者はクーポンを提示することで、割引を受けられます。

ダイナミックプライシングによる食品ロスだけではなく集客効果もあるこの取り組みは、店舗・消費者の両方にメリットがあります。

参照:MAG2NEWS「H.I.S.とポプラがタッグも。ダイナミックプライシングとは何か?」
https://www.mag2.com/p/news/386402/3

駐車場料金もダイナミックプライシング

駐車場予約アプリ「akippa(アキッパ)」は、ソフトウェア開発会社が開発したダイナミックプライシングをリアルタイムにおこなう「throough(スルー)」を導入しました。

akippaが所有している駐車場データをthorrughに搭載されているAIが分析。イベントの有無やその規模・過去の予約などを参考に最適な価格を算出します。関西エリアで実証実験を行い、全国の駐車場に適用していく予定です。

参照:prtimes「akippaがAIを活用したダイナミックプライシング自動化の実証実験を開始 日光企画と協力」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000130.000016205.html

日本ではダイナミックプライシング事業の合弁会社も誕生

ダイナミックプライシングの需要が高まり、2018年には三井物産株式会社とヤフー株式会社が提携して「ダイナミックプラス株式会社」を設立しました。

ダイナミックプラス株式会社には、チケット事業の大手ぴあ株式会社も出資。コンサートやスポーツ、テーマパークなどのチケットプライシングを主とした事業展開を行っています。

またチケットのダイナミックプライシングサービスに限らず、ホテルや駐車場といったサービス産業にもサービスを展開しており、今後ますます活躍が見込まれています。

参照:三井物産公式HP「三井物産とヤフーがダイナミックプライシング事業の合弁会社を設立」
https://www.mitsui.com/jp/ja/release/2018/1226398_11199.html

消費者に不信感を与えると失敗に終わってしまう

AIによる値付けは不透明

プライシング自体をAIに任せて定価より値上がりした場合、消費者に明確な説明ができないと不信感が募り、顧客離れを起こしてしまうケースがあります。

たとえば災害や天候不良が続いた時、野菜は値上がりします。しかし「野菜が高くて困った」という消費者の意見はあるものの、農家に対して不信感を持つ声はあまり見かけません。

それは、「野菜が不作で単価を上げないと採算が合わないのだろう」「温室など野菜を育てるのにコストがかかるのだろう」と、野菜の値上げに対して納得できる理由が想像できるからと推測されます。

不当な値上げは顧客離れにつながる

従来のように人がプライシングをしていれば、値付け担当者から消費者に向けて説明ができます。

しかし、「AIによる算出」という理由だけで大幅に値上げをすると、消費者が納得しきれないリスクがあります。消費者によっては、「企業が儲けるためだけではないか」「不当な値上げである」と疑心暗鬼になることもあるでしょう。

実際にアメリカでは、Amazonが災害時に生活必需品の価格が高騰させたために、世間から厳しく批判されました。

ハリケーンで最大級規模を表すカテゴリー5を記録した「イルマ」が上陸する前、フロリダ州の住民の多くがAmazonで防災グッズを購入したところ、ボトル入りの水などの価格が高騰したのです。

Amazonのアルゴリズムは、購入者の増加を「単なる需要の高まり」と判断して価格を上げたわけです。ですが、災害時にまで値上げすることは非情であるとして消費者の怒りを買う結果となってしまいました。

参照:Forbes JAPAN アマゾンに高まる批判、AI価格調整は「危機時には非情」より
https://forbesjapan.com/articles/detail/17637

AIによるダイナミックプライシングを検討している企業は、上記の点に留意して顧客離れが起きないよう工夫する必要があります。

まだまだ賛否両論があるダイナミックプライシング。自社に導入する際は、消費者の反応をしっかり予測したうえで進めていくことがポイントとなるでしょう。

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