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請求書の何が変わるの?軽減税率とインボイス制度

2020年10月から、消費税が10%に上がります。それにともなって軽減税率制度もスタート。酒類や外食以外の食料品と、週2回以上発行される新聞は現行のままの消費税8%が適用されます。
イートインのある店舗などは、軽減税率に対応したPOSレジの導入やスタッフの研修に頭を悩ませていますが、インボイス制度も仕組みと概要をおさえておく必要があるでしょう。インボイス制度は、軽減税率制度実施から4年後にあたる2023年10月から施行される予定です。

この記事では、イメージしづらいインボイス制度の概要と、軽減税率との関係について紹介します。

【目次】

「適格請求書等保存方式」インボイス制度

インボイス制度は、正式名称を「適格請求書等保存方式」といいます。これは税金計算のベースとなる証票制度で、複数税率に対応した仕入税額控除の方式として導入されることがすでに決定しています。
インボイスは、送り状、請求書、納品書のような役割を果たす書類で、複数の税率が混在するヨーロッパでは以前から採用されています。
インボイスには、品目ごとの税率と税額、事業者の登録番号などが記載されていて、課税事業者が発行するものです。原則として記載する必要がある事項を次にまとめました。

インボイス「適格請求書」の記載事項

インボイス「適格請求書」には、次のような項目を記載する必要があります。

  • 適格請求書発行事業者の名称と登録番号
  • 商品/サービスを販売した年月日
  • 商品/サービスの内容(軽減税率対象の場合は、その旨を記載)
  • 商品/サービスの税率ごとに区分した合計金額と適用税率
  • 税率ごとの消費税額
  • 書類交付を受ける事業者の名称

従来の請求書に追加される項目は、適格請求書発行事業者としての登録番号と、軽減税率対象であることを示す文言、税率ごとの会計の合計額、税率ごとの消費税学の4点です。

請求書等保存方式とインボイス制度

従来の方式である「請求書等保存方式」では、仕入税額控除の要件として、

  • 帳簿の保存
  • 取引の相手方が発行した請求書などの客観的な証拠書類の保存

を挙げていました。請求書に適用税率や税額を記載することは特に義務ではありません。
これは、一律8%という単一税率ならば、税額を記載しなくても仕入税額の計算ができるためです。しかし軽減税率が施行されると、税額記載がなければ仕入税額の計算をすることができません。ゆえに、「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が必要になってくるわけです。
なお、軽減税率制度が施行されてからインボイス制度が施行されるまでの間、つまり2019年10月1日から2023年9月30日までは「区分記載請求書等保存方式」という方式での記載事項が必要になります。
これは、現行の記載事項にくわえて、軽減税率の対象品目であることと、その合計の税込対価の額を記載したものになります。

現行制度の帳簿への記載事項と、軽減税率制度が施行されてからインボイス制度が施行されるまでの間の記載事項、インボイス制度の記載事項をまとめると次のようになります。

【現行制度の帳簿への記載事項】
~2019年9月30日まで

1. 発行者の氏名(名称)
2. 取引年月日
3. 取引の内容
4. 対価の額
5. 受領者の氏名(名称)

【区分記載請求書等保存方式】
2019年10月1日~インボイス制度施行まで

1~5項目すべて
6. 軽減税率の対象品目である旨
7. 税率ごとに合計した税込価格

【適格請求書等保存方式】
2023年10月1日~

1~5項目すべて
6. 軽減税率の対象品目である旨
7. 税率ごとに合計した税抜/税込価格と適用税率
8. 適格請求書発行事業者の登録番号
9. 税率ごとの消費税額

軽減税率が適用されて以降は、段階的に必要な記載項目が増えていくイメージです。

インボイス制度の注目ポイント

インボイス制度のポイントは3つあります。

  1. 課税事業者はインボイスの発行が義務づけられる
  2. 課税事業者は発行したインボイスの副本保存が義務づけられる
  3. 免税事業者はインボイスを発行できない

これによって、2023年から事業者の手間は増えると考えられています。
手間だけでなく、専用のソフトウェアを新たに購入したり、業務フローを見直したりとある種抜本的な事務処理の改革をせまられる可能性もあるでしょう。
インボイス制度の施行が迫ってくる頃には、クラウド会計システムの進化などによってそれほど手間を必要としなくなる展開も予想されますが、今のうちから少しずつ対策を考えていっても性急すぎるというわけではありません。

免税事業者とインボイス制度

先に紹介したように、免税事業者はインボイスを発行することができません。これは、インボイスを交付できるのが適格請求書発行事業者に限定されているためです。
インボイスを発行するためには2021年10月1日から受付をスタートさせる「適格請求書発行事業者登録制度」に申請書を提出する必要があります。申請できる業者は課税業者に限られているため、免税事業者はまず「消費税課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者になる必要があります。

・国税庁「適格請求書等保存方式が導入されます」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/300416.pdf

免税事業者がインボイスを発行しないという選択

免税事業者は、売上が1,000万円以下の事業者で、納税義務が免除されています。しかし、顧客に対して消費税を加算請求することは認められています。
これは、免税の範囲が「顧客から預かった消費税」に限定しているためです。事業における消費税は、仕入先に支払った消費税を差し引いた金額で納税します。これは課税業者も免税事業者も同様です。つまり、免税事業者も仕入れの段階では消費税を支払っているため、事業にかかってくる消費税すべてを免除されているわけではありません。免税事業者であっても、仕入れや外注工賃といった経費には消費税が発生しており、支払いをおこなった時点で消費税を支払っています。ゆえに、売上に消費税を加算して支払うことは法的に認められています。

このように、従来の免税事業者は、特別不利益をこうむったり、損をしたりする存在ではありませんでした。そのため免税事業者の中には、課税事業者として登録する必要性がいまいち実感できないという方もいるでしょう。
とはいえ、免税事業者のままだとインボイスを発行することができないため、今後デメリットが生じる可能性があります。
インボイスが発行できない免税事業者からの仕入れでは、仕入れ税額控除が適用されなくなるためです。
これは消費税の仕入税額控除を受けるための条件にインボイスの保存が必要になるから。今後段階的に、免税業者からの仕入税額控除の廃止がおこなわれることになっています。

【免税業者からの仕入税額控除廃止までのスケジュール】
~2023年9月30日:仕入税額の100%控除
2023年10月1日~2026年9月30日:仕入税額の80%控除
2026年10月1日~2029年9月30日:仕入税額の50%控除
2029年10月1日~:控除の完全廃止

免税事業者から発行事業者になるとどうなるか

仕入税額控除が受けられないことは顧客にとってマイナスです。そのため、インボイスが発行できないと、消費税分の値引きを余儀なくされたり取引を打ち切られたりする可能性が出てきてしまいます。
一方、発行事業者になるために課税事業者になると、経理の負担が免税事業者であった時よりも大きくなり、決算上が赤字であっても納税の義務が発生してしまいます。

  • インボイスを発行せず、値段も変更せずに取引してくれるところを探す
  • 仕入税額控除相当の値引きを受け入れてインボイスなしの取引を続ける
  • 課税業者として消費税を納税しつつインボイスを発行する

インボイス制度がスタートして、仕入税額控除が廃止されると、現在の免罪事業者はこの3つの選択肢の中から選ぶという決断を迫られることになります。

インボイス制度と免税事業者のケース別選択

インボイスが発行できる発行事業者になるかどうかは、取引先の種別、売上高といった要素を多角的に分析して決める必要があります。

課税事業者との取引多数ならインボイスの登録推奨

事業の取引相手の大半が課税事業者という場合、仕入税額控除の廃止を理由に値引きを迫られたり取引そのものを停止させられてしまう可能性が高くなります。事業を継続させるためには、消費税の納税義務が発生してもインボイスの発行できる課税事業者になる必要があるでしょう。また、売上が1,000万円に届きそうだという場合は、悩むより先に課税事業者になってしまった方が、インボイスの発行を理由に取引を停止される心配がなくなるため、安心といえます。

メイン顧客が消費者や免税事業者ならインボイス対策は様子見

メインとなる顧客が消費者である場合は、「インボイスがないと仕入税額控除の対象にならない」というポイントはあまり関係がないといえます。
課税事業者間の取引ではインボイスの発行義務がありますが、消費者間の取引では発行義務がありません。軽減税率についても、先に解説した区分記載請求書等の要件がそろっているレシートであれば問題ありません。

例えば、訪れる人の大半が消費者であるレストランやベーカリーなどは、インボイスを発行できなくてもそれほど困ることはないといえます。とはいえ、「大半の顧客は消費者だが、オフィスの社員食堂にパンを卸している」、「テイクアウトの料理をデイケア施設にランチとして配送している」というケースもあるでしょう。こうした場合は、インボイスが発行できない旨を提供先に納得してもらう必要があります。インボイス制度の施行を機に、消費者のみを顧客として運営するよう方針転換するようなことも想定されます。

また、顧客も免税事業者である場合、インボイス発行義務はありません。インボイスは、あくまで課税事業者との取引において発行する義務のあるものだからです。
例えば、フリーランスや個人事務所同士でのやりとりがメインとなっている場合は、無理をして課税事業者になりインボイスを発行する必要はないと考えられます。

インボイス登録より値引きが有利なケースもある

仕入税額控除が完全に廃止される2029年までには、まだ猶予があります。この期間は仕入額の一部に控除が適用されるため、完全に廃止されるまでは相当分を値引きすることで課税事業者との取引を継続できる可能性があります。
もちろん、値引きは事業にとってマイナスですが、無理をして課税事業者となり納税義務を負うよりは値引きをして免税事業者のまま当面営業を続ける方が、負担が少ないケースも想定されます。

インボイス制度の導入時期や規制内容には不確定要素も

インボイス制度は、施行することによって益税を減らすこともできるとされています。益税とは、消費者が支払った消費税が納税されることなく事業者や企業の利益になってしまうことで、一説には特例によって数千億円が益税として企業に吸収されているともいわれています。
しかし一方で、インボイス制度は中小企業や小規模事業者の業務や収益を圧迫するのではないかと危惧されてもいます。

そのためインボイス制度の導入時期や規制内容については、まだ未定となっている要素も含まれています。予想されるダメージや混乱が甚大であれば、それを回避するために何らかの措置をとる必要に迫られると考えられており、政府も平成28年度の税制改正大綱において必要と認められるときは、必要な措置を講ずると記載しています。
ただし、これまでの消費税の計算方法および仕入れ税額の控除から大きく変わる制度が施行されることは間違いないので、今から少しずつ頭に入れておくことが求められるでしょう。

まとめ

インボイス制度は、その性質上軽減税率とセットのように扱われることがあります。消費税の仕組みが変わることにともなう記載事項の変更という点では関係があるかもしれませんが、インボイス制度の焦点は事業者の納税方法が変革することにあります。
制度施行までにそのシステムについて理解しておくことが重要です。

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