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ID-POS:顧客データの活用方法と分析手法

ID-POSは、従来の販売時点情報にくわえて「誰が購入したのか」を記録できるシステムです。
ID-POSで顧客情報を収集することで、POSシステムで使われているデータ分析をさらに深めたり、AIに情報や課題として与え、新たな視点を獲得することが期待されます。
本記事では、ID-POSの概要と、ID-POSで収集できるデータの効果的な活用法について、取り扱う環境づくりについて解説しています。

【目次】

ID-POSとは

ID-POSは、POS(Point Of Sales:販売時点情報管理)の機能に、IDつまり「誰が」という情報を特定できる機能を追加したシステムのことです。
従来のPOSは、

  • どの商品が(What)
  • いつ(When)
  • どれだけ(How many)
  • いくらで(How much)

売れたのかという情報を管理できるシステムです。POSシステムでは、該当の商品をどのような人物が購入したのかについて知ることができませんでした。
しかしID-POSを導入すると、システムに紐づいた顧客情報を入力しているポイントカードまたは店舗の専用アプリなどから、顧客データを取得することができます。
これによってID-POSでは「誰が購入したのか(Who)」という項目を取得することが可能になり、顧客の購買行動の分析データに人物の属性を追加することができます。

ID-POSで得られるデータはAIに与えられる

ID-POSで得られた顧客データは、AIに分析のための情報として与えられます。
また、ある程度データが収集されると、AIのための材料としてだけでなくAIに与える「課題」としても機能するようになります。
例えば、ひと月に売れた商品の数が500個だとしましょう。その500個で得られる情報は、POSシステムでは、

  • 一度に売れた個数
  • 売れた時期(日時)
  • 価格

です。
ですが、ID-POSならば500個の商品に対して「購入者の属性」というデータを取得することができるのです。
一人の購入者について次のようなデータが得られ、この顧客情報をさまざまな切り口でカテゴライズすると、分析の選択肢が広がります。

  • 性別
  • 年齢
  • ステータス(社会人/学生)
  • 来店頻度
  • 購入金額(1回あたり/月ごとの合計金額)

もともと得られる販売時点情報と組み合わせると、「どのような年齢の人が複数個購入する傾向にあるか」、「リピーターとステータスには関連性があるか」、「来店頻度と購入金額はどのような関係にあるか」といったさまざまな分析ができるようになります。

多様なセグメント(集団)ごとの分析をおこなうことによって、より正確な販売予測や、カスタマーを多く獲得するためのマーケティング展開が実施できるようになるというわけです。

ID-POSで取得したデータの分析と活用

では、ID-POSで取得したデータはどのように分析すればよいのでしょうか?
ID-POSを導入すると、一人の人物を、性別、年齢、ステータス、購入金額など多様なセグメントに切り分けられるため、データに振り回されたり充分に活用できなかったりする事態になりかねません。
データを売上につなげるためには、商品軸と顧客軸という2つの軸をもって分析をおこなう必要があります。

ID-POSのデータを商品軸でみる

商品軸でのデータ分析は、何がどのように売れているのかを把握するためにおこないます。代表的な手法には「バスケット分析」、「ABC分析」があります。これらはPOSシステムの時からおこなわれている分析方法で、店舗の売り場で効率よく売上を伸ばすために用いられているものです。

商品軸:バスケット分析

バスケット分析は、一度の購入において、どの商品とどの商品を組み合わせて買う傾向が強いのかを調べるものです。
「アルコール類の棚の近くにつまみになりそうなスナック菓子のコーナーを作る」、「弁当コーナーにお茶などのドリンク類を陳列する」といった陳列手法は、この分析の結果に基づくものです。

商品をレシート単位でチェックして、出現率の高い組み合わせを見つける方法は、目新しいものではありません。しかし、この手法にID-POSで得られる情報を組み合わせると、カスタマージャーニーを作成したり購買の背景をより深いレベルで把握することにつながります。
「弁当とお茶」の組み合わせでいえば、この買い方をしているのがどのような性別、年齢層なのか、来店頻度はどれくらいなのかを知ることで、その後の売り場づくりは大きく変わってきます。来店頻度が多い若年層であれば、昼食や夜食として購入しているという推測が立てられ、月に1〜2回複数個まとめて購入している会社員であれば、家族用や社員用に購入しているという可能性があります。誰がどのような目的でこの組み合わせを購入しているのか、もっというならば誰のために購入しているのか、それが分かれば、従来のデータ分析よりもさらに深いところで顧客を理解することができるでしょう。

商品軸:ABC分析

ABC分析は、売上構成比から商品をABCの3つにランク分けし、売上の好調な商品とそうではない商品をグラフ化する分析方法です。
売上が高い順に商品を並べ、構成比を高い順から足し算をして累積構成比を算出します。すると、売れていないCランクの商品が明らかになるため、商品入れ替えをおこなう時の参考になるというものです。
このABC分析はさまざまなものに応用できるため、POSデータにおいてもっともよく使われている分析方法です。
一方で、Cランクにカテゴライズされた商品を求める顧客には対応できないというデメリットもあり、同じ地域の店舗がすべて同じようなラインナップになってしまうというリスクもあります。
嗜好が多様化した現代にあって、単に売上だけで売れ筋商品のみを豊富に取り揃えてしまうことは危険ともいえます。消費者の幅広いニーズに応えることも、売上を伸ばす重要な要因だからです。

ではこのABC分析に、ID-POSデータを活用するとどのような結果が得られるでしょうか。

商品軸:ABC+R分析

ABC分析にID-POSデータを追加した分析方法は、「ABC+R分析」といいます。これは、従来のABC分析に商品ごとのリピート率(R)をプラスしたものです。
リピート率をチェックすることによって、Cランクに該当する商品を、ある一定のリピーターがいる商品とそうでない商品に分類することができます。この方法なら、固定客の多いCランク商品は入荷個数を減らしつつ取り扱いは維持する、固定客の少ないCランク商品は次月分で入れ替えなど、消費者ニーズを取り入れながら商品の選別をおこなうことができます。

ID-POSのデータを顧客軸でみる

次に、顧客軸でID-POSのデータを活用する方法についてみてみましょう。
顧客軸での分析は、「デシル分析」と「RFM分析」があります。いずれもID-POSが登場してから実施されるようになった分析方法です。

顧客軸:デシル分析

デシル分析は、購入金額で顧客をランクづけする方法です。
購入金額が高ければ高いほど、売上貢献度が高い顧客ということになります。
分析にあたっては、顧客を購入金額が高い順にソートし、人数で10等分します。そのランクをデシル1〜10とし、顧客全体の総購入金額に対する売上貢献度を算出します。
デシル分析には、期間に応じてデシルランクの変動が生じるという難点があります。さらには、

  • 一年に一度来店して100万円分の買い物をする顧客
  • 毎月来店して、一年間で60万円分の買い物をする顧客

のどちらを「重要な顧客」としてみなすかという問題は、業種や店舗の運営形態によっても変わってくるため、客単価のみで優良顧客を選別することが売上UPにつながらないリスクもあります。
このジレンマを解決するのが、RFM分析です。

顧客軸:RFM分析

RFM分析は、顧客のことを「Recency(最終購入日)」、「Frequency(購入頻度)」、「Monetary(購入金額)」という3つの指標でランクづけする手法です。
「Recency」は、直近でいつ買い物をしたのかということ以外に、最近よく来店するかどうかも判断基準になります。
「Frequency」は、ある一定期間に何回買い物をしたか、日頃からよく来店するかどうかといった項目でチェックをします。
「Monetary」では、デシル分析と同様に一定期間でどれだけ購入したか、多く買い物をする顧客かどうかを数値化します。

3つの項目をそれぞれランクづけし、「ロイヤル顧客」、「新規顧客」、「休眠顧客」などにカテゴライズしていきます。
来店頻度が高く購入金額も多い、すなわち複合的に高いランクに位置するロイヤル顧客に対しては、限定セールや先行販売などのプロモーションを実施することで、さらに顧客満足度を高めることができます。
直近の購入がない休眠顧客に対しては、再来店でポイント追加付与などのカムバックキャンペーンを実施するのが効果的といえます。

商品軸と顧客軸の組み合わせで顧客のニーズにそった運営を実現

ID-POSデータは、ここに挙げた代表的な分析方法を組み合わせておこなうことによっても、活用の幅が広がります。
顧客情報の収集がさけばれる中にあっては、そのテクノロジーだけが先行し現場レベルで充分な活用がなされていないケースも少なくありません。従来のPOSシステムで使われてきた分析方法も、見直したり新たなデータを付与することによって、可能性が拓けてくることでしょう。

ID-POSデータ活用をスムーズにおこなう方法

ID-POSデータを扱うための工夫としては、データ活用の環境を整えておくということも重要です。収集したデータを引き出すのに多くのプロセスが課せられたり、必要なデータを探し出すのにどこを探せばいいか分からなかったりという環境では、データを活用することはできません。

データの共通化でID-POSデータをすっきり管理

どれだけ多くのデータを収集できても、データのフォーマットが統一されていないと分析に使う前の準備が煩雑になってしまいます。
特にチェーン展開していたり、複数店舗のデータを総合的に扱う必要があったりする場合、共通化されていないデータはまったく意味をなさない可能性さえあります。
これを防ぐためには、分類のためのマニュアルを整備する、記載項目やフォーマットをあらかじめ統一しておくということが必要になります。

使い慣れたツールでID-POSを扱う

新しいシステムを導入する際のハードルとなるのが、ツールです。今までに使い慣れていないツールは、そのための研修が必要なるだけでなく場合によっては外部スタッフや講師を招かなければならないこともあります。
ID-POSをスムーズに活用するためには、使い慣れたエクセルやそれに近いシステム構造のツールでデータを扱える環境を整えておくことが重要になります。

データ分析は可能な限り高速化を

ID-POSによって取得可能なデータは、場合によって集計・分析に多くの時間を要することもありますが、それでは気になった項目をすぐに比較検討したり、現場のスピード感をもってデータを扱うことはできません。集計・分析に多大な時間がかかると、扱うスタッフのストレスは増加し、充分なパフォーマンスを維持することは難しいでしょう。

これを防ぐためにおこなうのは、あらかじめデータを月次や四半期、1年といった単位で呼び出せるようなシステムを構築することです。
そうすれば期間ごとの利用年代、性別、リピート率といったデータが数秒以内に呼び出せるようになるため、利便性を高めることができます。

まとめ

ID-POSは、AIとの併用によって可能性が広がると考えられていますが、POSシステムの収集データを分析する手法によっても効果的な販促方法や陳列方法のヒントを得ることができます。
社内でID-POSをスムーズに取り扱うために、まずはデータをチェックしやすい環境づくりやシステム構築について自社に合ったかたちを検討してみましょう。

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