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街に合わせて店舗を刷新。松坂屋上野店はシタマチと生きる!

大丸や松坂屋を傘下にもつJ.フロント リテイリングは、街の変化に合わせて既存店の機能を大胆に見直すアーバンドミナント戦略を進めています。その最新事例が松坂屋上野店のリニューアルで、2017年11月4日には別館跡地に上野フロンティアタワーが開業します。隣接する本館と共に地域密着型の商業集積「シタマチ. フロント」を形成し、周辺エリアを往来する人々のニーズに全方位で対応します。
従来の松坂屋上野店は、多くの百貨店がそうであるように客層の高齢化が進んでいました。「シタマチ. フロント」は、次のようなテーマで課題の克服を目指します。
 

  1. 上野御徒町エリアを往来する人のニーズを把握
  2. 客層を広げるための新店舗・新機能を追加
  3. 地域固有の観光資源を最大限に活用

シタマチ. フロントのロゴデザイン

上野御徒町エリアを往来する人のニーズを把握。周辺の人は全て顧客

松坂屋上野店は、上野恩賜公園と秋葉原を結ぶ大通りに位置します。御徒町駅や上野駅から近いほか、秋葉原も徒歩圏内です。店そのものが東京メトロ銀座線・上野広小路駅に直結しているだけでなく、湯島天神で知られる千代田線の湯島駅、大江戸線、日比谷線からもアクセスできます。

スポットの密集エリアに集まる観光客

動物園や美術館・博物館、アメ横といった観光スポットが密集するほか、秋葉原から発信される新しい文化にも惹きつけられて、国内外から多くの観光客が訪れます。上野御徒町エリアを往来する人のセグメントとして、第一に観光客が挙げられます。

オフィスワーカーも大事な顧客

鉄道の便利がいいことに加え、バスも5つの路線が乗り入れています。これらは観光客の足回りとして使われるだけでなく、オフィスワーカーにも便利です。林立するオフィスビルは周辺エリアの特徴で、第2のセグメントとして挙げられるのはオフィスワーカーです。

近隣住民の集まるスポットにも

上野御徒町エリアは、江戸から続く下町でもあります。オフィスビルの合間には、マンションや戸建が入り混じります。秋葉原までの道沿いや、湯島天神の周辺エリアも同様で、至る所で住宅の開発工事が続いています。古くからの居住者だけでなく、新たに流入する子育て中の世帯も少なくありません。さまざまな年齢層からなる近隣住民、これが周辺を往来する第3番目のセグメントになります。

取り込めていなかった客層を獲得していく

上野松坂屋店の顧客はシニア中心でしたが、店の外を行き来する人は年齢も性別も国籍までバラエティ豊かで、それらを大別すると観光客、オフィスワーカー、近隣住民に分かれます。取り込めていなかった客層を獲得できれば、店舗の客数は確実に上がります。

街を往来する人を全て取り込むことは、その地域になくてはならない存在になることを意味します。J.フロント リテイリングの山本良一社長は記者会見で、シタマチ. フロントの目的は地元と連携し、街全体に賑わいを生み出すことにあると話していました。
「この街に何が必要かを考え抜き、これまでの文化を土台に新しい下町文化を創造しようという意気込みでシタマチ. フロントを構想した。地域の協力を得て、上野御徒町の街づくりを象徴する取り組みにしたい」(山本社長)


  

百貨店を補完する上野フロンティアタワー

松坂屋上野店と上野フロンティアタワーの2棟で構成する新しい商業集積は、具体的にどういった機能を備えているか見ていきましょう。

松坂屋上野店は、地下1階から地上8階の9フロア構成です。2014年にリニューアル済みの本館のほか、上野フロンティアタワーの地下1階にも観光客のニーズに対応した売場を展開します。これについては後で触れます。
新棟の上野フロンティアタワーは、地上1~6階がグループのパルコが新たな屋号で運営するPARCO_ya、7~10階がTOHOシネマズのシネマコンプレックス、さらに上層の10フロアはオフィスとして貸し出します。

松坂屋本店と上野フロンティアタワーの外観イメージ図

パルコが百貨店と共同出店

パルコは2012年にJ.フロント リテイリングに加わりました。百貨店と共同出店するのは今回が初めてです。既存店の主要ターゲットは20代ですが、PARCO_yaでは「ちょっとおしゃれな おとなのたまり場」をコンセプトに、団塊ジュニアを中心とする30~50代をねらいます。
パルコの牧山浩三社長は、ターゲットの年齢層をあえて上げる理由について、「新店といってもゼロベースではなく、松坂屋のファンがいるところから始まる。そこで成功の確率を上げるには、顧客の連動を考える必要がある。百貨店の客層とは違いを出しつつ世代にはつながりを持たせ、広域から集客したい」としています。
平日はオフィスワーカーと近隣住民を取り込み、土日は観光客を中心に3世代で楽しめる商業施設を目指します。

パルコの取り組みは、先に挙げた3つの顧客セグメント全てに対応するものです。また、顧客の世代も百貨店との相互補完を実現します。
「パルコによって、百貨店では取り込めていない30~40代を獲得できる。たとえば母子が一緒に来店し、母は松坂屋、娘はパルコといった使い分けをしていただければいいと思う。幅広い世代が楽しめる環境を用意することが、地域への貢献になる」(山本社長)
また、TOHOシネマズを導入することで、周辺エリアに欠けていた映画館の機能が補完されます。幅広い世代に街を訪れる新たな動機を作るものです。
なお、オフィスフロアはすでに完売となっています。J.フロントは賃貸収入を得るだけでなく、オフィス需要を取り込むことで商業施設のレストランや、食品売場の売上にもつながります。

施設構成のイメージ図


 

観光地だからこそ求められる機能が充実

 
上野御徒町で暮らす人や働く人のニーズを取り込むことは重要ですが、周辺の最大の特徴は、なんといっても都内有数の観光地であることです。上野恩賜公園を訪れる人だけでも多種多様であり、アメ横や湯島天神、秋葉原まで含めると幅広い目的で人々が往来するエリアであることが分かります。
外国人旅行客が増加しているという統計通り、2016年には上野周辺に304万人の外国人旅行客が訪れました。2年前の1.6倍だそうです。増え続ける国内外の旅行客に周辺情報を提供する拠点となることが、松坂屋上野店の新しい機能です。

コミュニケーションの場としての百貨店

松坂屋上野店は、以前から「上野が、好き。」というコミュニティサイトをサポートしていました。これと連動した売場として、本館2階に「上野が、すき。カフェ」、同じく本館7階には「上野が、すき。ギャラリー」を新設します。
ギャラリーでは、地域をテーマにアート&カルチャーの情報発信に取り組みます。上野恩賜公園に隣接する東京藝術大学をはじめ、博物館や美術館、地元小中学校などとイベントを共催する予定です。

上野フロンティアタワーの地下1階には、「上野が、すき。ステーション」を展開します。
ここではギフトに好適な老舗店・名店の商品を取り揃えるほか、地元の伝統工芸やクリエイターと共催するワークショップを開催します。
観光案内にも力を入れます。店内に巨大マップを設置し、周辺施設やイベント情報を提供します。英語を話せるスタッフが常駐し、外国人旅行客にも対応するそうです。
外国人旅行客の獲得というと、物販につなげることを連想しがちです。しかし松坂屋上野店の場合、インバウンド対応は観光起点で取り組みます。周辺エリアならではのギフトは揃えますが、いわゆる「爆買い」のようなシーンは重視しません。
J.フロント リテイリングの店舗の中で、訪日旅行客の本気のショッピングに対応する主戦場は、東京・銀座に今年オープンしたGINZA SIXだそうです。松坂屋上野店からは約5km、電車なら15分くらいしか離れていません。しかし上野と銀座、街の特性が異なることによって、店舗が追求する役割も変わってきます。

上野フロンティアタワー1階に展開する「上野が、好き。ステーション」


 

まとめ:地域密着によって、オンリーワンの店が生まれる

 
松坂屋上野店は、江戸中期の1768年から同じ場所で営業しているといいます。250年にわたる年月ですから、これまでも時代に合わせて店の機能は変化を続けてきたはずです。今回のリニューアルでは、店舗の利用客と周辺を往来する人とのギャップに着目し、その解消に努めました。そのステップは以下のように総括できます。

  • 周辺エリアにどのような人がいるかを確認しました。上野御徒町の場合、それは観光客・オフィスワーカー・近隣住民でした。
  • 商圏内にいる全ての人のニーズを満たすべく、足りない機能を補完しました。それがパルコやシネコンの新規導入です。
  • 地域に徹底して合わせることで、個性的な店舗に仕上げました。上野御徒町エリアでは、観光地の商業施設として求められる機能を追求しました。

時の経過と共に街を往来する人の流れは変わり、街そのものも変貌します。それでも松坂屋上野店が立地に優れていることに変わりはありませんでした。変化した街のニーズに対応することで、松坂屋上野店は地域に欠かせない商業施設であり続けようとしています。

この記事を書いた人
宮川耕平

流通業界紙で12年にわたり記者として勤務。スーパーやコンビニなどの小売業のほか、食品、酒類、流通に関連するIT分野を幅広く取材。キャッシュレスやペーパーレス、働き方改革をテーマに活動中。

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