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ショップジャパンが伝える 「マルチチャネルで顧客タッチポイントを増やすコツ」

「ワンダーコア」や「ビリーズ・ブートキャンプ」など、話題性の高いヒット商品を数多く世に送り出してきた「Shop Japan」。

テレビショッピングのイメージが強い同ブランドですが、この4月より、ブランド名を冠したリアル店舗を「ららぽーと湘南平塚」にて展開しています。

通販のプロフェッショナルが、今、新たなチャネルとしてリアル店舗を持つ狙いとは?

今回、Shop Japan事業を手がける株式会社オークローンマーケティングのショップジャパンチャネルデパートメント本部長である浅野茂樹さんをお迎えし、エスキュービズムのITコンサルタント・梅木が、その真意に迫ります。

目次:

スピーカープロフィール

プロフィール:
右:浅野 茂樹(あさの しげき)
1999年オークローンマーケティング入社後、コールセンターにてコミュニケーターのトレーナーやSV事業担当を経て、約10年に渡りショップジャパン商品のマーケティング責任者を務め、数々のヒット商品を世に送り出す。2018年からは、Eコマース・リテール・コミュニケーションセンター等のショップジャパンが展開するチャネル部門を統括するShop Japan Channel Dept.の本部長に着任。
左:梅木 研二(うめき けんじ)
1977年福岡県生まれ。長崎大学経済学部卒業後、伊藤忠テクノソシューションズ入社。
一貫して、流通小売業向けのシステム開発に営業として携わる。富士ソフト在籍時は、大規模Eコマースシステム開発に営業として従事、富士ソフト子会社のVINXにてオムニチャネルシステムの企画・支援の立ち上げに参画。2016年にエスキュービズム入社、2018年に取締役就任。

大根を「大根として売らない」店舗を目指す

梅木:今回リアル店舗を出店されたのが「ららぽーと湘南平塚」だったのは、何か狙いがあったんでしょうか?テレビやインターネット広告における御社のボリュームゾーンのお客様と湘南の商圏には親和性があることを見込んでいたのですか?

浅野:リアル店舗の出店にあたっては2つのプランを持っていました。1つはショッピングモールのようにもともと集客のある場所に出店するというプラン。もう1つは、送客できる場所であれば、一から店舗をつくるのではなく、例えばコンビニの居抜き物件のようなところでもいい、というプランです。その中で、ららぽーと湘南平塚が比較的私たちの条件に合う場所として出てきた、という経緯があります。初動を見ていると、想像以上にショップジャパンを知っていただいているお客様がいて、商品を見て確かめたいとか、実際に触ってみたいという方が多かったですね。

梅木:基本的には売上を狙いに行く、という位置付けになるのでしょうか?メディアの記事などを拝読すると、AIを絡めたレコメンドサービスなどの実験も行なっているようですが。

浅野:売上はKPIとして持っていますが、正直なところ目的はそこではないですね。

梅木:リアル店舗だからこそ取得できるデータを、御社がこれまで積み上げてきたデータ資産とマージした結果、どんなお客様像が見えてくるかを検証するといった狙いの方が強いということでしょうか?

浅野:はい、どちらかと言えば実験店舗という方が正しい表現だと思います。テレビショッピングやネット通販は市民権を得ていると思うものの、通販では購入したくない、実物を見てみないとわからないというお客様は一定数いらっしゃいます。今回の出店は、その方々に対し、安心してお買い物ができる場所となること。

また、私たちの製品は決してシニアだけにフォーカスしたものではないので、幅広い年齢層の方に認知いただき、買っていただくチャンスということで、リアル店舗がどう貢献するかを検証する場としても捉えていますね。

画像提供:株式会社オークローンマーケティング様

梅木:今回の出店で取得できるデータも広がったと思いますが、この実験で一定の感触が掴めた際には、さらにリアル店舗を広げていく計画はあるのでしょうか。

浅野:はい。小売店展開がメインのビジネスではないので、今後数年で数百店舗ということではありませんが、ある程度の規模の地域に1店舗ずつぐらいは設けられるようなキャパシティーが持てるといいなとは考えています。

梅木:そこで取れるデータを、例えば海外のサプライヤー側にフィードバックしたり、卸先に対して提供することでバリューチェーンを作っていくのでしょうか?

浅野:それで言うと後者のイメージの方が近いですね。私たちの商売は、例えば大根をそのまま「大根です」と言って売るような商売ではありません。私たちの原点は29分間のインフォマーシャルで、あの中で認知から購買までのフルファネルを完結しているわけなので、リアル店舗でも、最初は別に要らないな、と思っている商品がなぜか欲しくなるという体験を作っていきたいのです。小売店の卸もやっていますが、他社商品と陳列される棚だと、大根を大根として売られてしまう可能性があり、なるべく私たちがいいと思える売り方ができる棚を確保するためにも、実験的に直営店を展開しようと考えたのです。

1000種を超える新製品のストックをリアル店舗にも活かしたい

梅木:リアル店舗の作りに関して、ベンチマークしているところはありますか?

浅野:オープンした「Shop Japanららぽーと湘南平塚店」は、もともと「商品が体験できる」ことをコンセプトに店舗づくりをしているので、お客様にはショールームのように映っているだろうな、というのが正直あります。ベンチマークではないのですが、ららぽーと湘南平塚には、フランス発祥の調理器具・家電ブランドのストアが入っているのですが、壁一面にびっしりと商品を並べて積み重ねてあり、その商品数に圧倒されました。そのように、しっかりと品数があり、店舗の中で商品を比較したり選んだりできる店舗づくりも考えていきたいですね。

梅木:取扱商品をどんどん増やしていくという考えはありますか?

浅野:ありますね。先ほどテレビショッピングで扱う製品は年間で数製品と言いましたが、実はその数製品に絞る前は何千という製品をストックしています。その中から、独自のリサーチでスコアリングの高い製品のみ媒体費や制作費をかけて販売をしています。そのステージに乗らなくても海外ですごく人気がある製品やユニークなアイデアが1000種類以上ストックされているので、そういったものは直営店でテスト的にどんどん販売しても面白いかなと思っています。

デジタルでも「フルファネル」を実現する

梅木:チラシ以外で、LTVが高い顧客や休眠顧客などに対してはDMなども実施されていると思いますが、DMのレスポンスってどのぐらいありますか?

浅野:具体的な数字は申し上げられないのですが、私たちは効率的に実施している方だと思うので、反応は高いと思います。どちらかというと母数で攻めるというよりは、しっかりとセグメントし、施策やターゲットごとのレスポンスを重要視しています。これは、DMに限ったことではなく、例えば私たちが得意とするインフォマーシャル型の通販は、放送枠ごとのレスポンスをきちんと分析するところから始まります。この地域の、この時間の、この局にはどのカテゴリーの製品のインフォマーシャルを放映すると、どういう反応があるかというものを過去20年分持っています。

梅木:現在抱える課題ははありますか?

浅野:一番急務だと思っているのは、若年層へのビジネスをどう考えていくかです。当社はまだテレビショッピングの売り上げ規模が大きく、そのお客様の大半は60歳以上の方です。ECでも40代のお客様がボリュームゾーンです。高齢化社会が進めばそれはそれでいいのかもしれませんが、だからと言って私たちの製品は決して若い方が使わないものではないので、20代30代の方にどう買っていただくかということを課題として感じています。

梅木:若年層に対して、何をどのように売っていくかという部分は、新たなチャレンジという位置付けになりますか?

浅野:そうですね。正直なところ、ほんの1年前までは、ECはテレビショッピングの受け皿というぐらいの位置付けでした。テレビを見た顧客が検索したら買えるという。しかし、この1年で私たちなりにデジタルシフトを進めてきたことにより、デジタルでも認知から購買までのフルファネルの完結ができています。

コンペティターは同業他社よりも「CtoC」

梅木:ECの売上自体は伸びていますか?

浅野:ここ2年、昨年対比で約30%成長していますね。やはりそれぐらいポテンシャルがあったんだなということを感じています。

梅木:業界平均を圧倒的に上回る数字ですね。その中で若年層の割合はどうですか?

浅野:まだ顕著には伸びていません。30代40代、特に40代のパイが大きくなった感じですね。

梅木:若年層の取り込みに対する課題感はどの業界にもありますよね。プロダクトやサービスに対するジャーニーの入り口をもっとライトに作って間口を広げることだったり、若年層の体験価値を引き上げるためにCRMを再構築する必要性だったり。

浅野:デジタルの世界ではSNS等でインフルエンサーがオススメした製品が圧倒的に売れることもありますよね。しかし、その人たちと組めば必ず売れるのかというと、そうではありません。企業色が出た途端売れなくなったり、そのさじ加減が非常に難しいなと感じますね。若年層に対するアプローチはまだまだ試行錯誤しています。

それからCtoCの市場が大きくなっていますよね。お客様のお買いもの場所の選択肢が広がっていきています。

梅木:確かにメルカリで、ワンダーコアなどがたくさん出品されていますね。御社の競合としては、いわゆる同業他社だけでなく、そういったCtoCで活躍しているプレイヤーも含まれてくると捉えていますか?

浅野:よく他社のテレビショッピング会社さんを同業他社として挙げていただくのですが、競合にはならないのではないかと思っています。弊社は基本的にショップジャパンでしか取り扱わない製品を様々なチャネルで展開しているので、ビジネスモデルが違うかなと思います。それよりも、ショップジャパンの商品を売ることができてしまうため、CtoCの拡大は脅威に感じる部分がありますね。

通常の倍売り上げる、「トゥルースリーパー」のショップ イン ショップ

梅木:最近ではポップアップショップ的な、期間限定の体験型店舗などがよく話題に挙がりますが、御社もそのような形で今後日本全国に展開してテストマーケティングしていこうというような計画はありますか?

浅野:「トゥルースリーパー」という寝具ブランドを展開しているのですが、このブランドに関しては弊社で「ショップ イン ショップ」と呼ぶ売り場を展開しています。関東ではイオンさん、関西ではイズミさんで7坪から10坪ぐらいの寝具売場をお借りし、「トゥルースリーパー」専用コーナーという見せ方をしています。

梅木:御社から販売スタッフも派遣しているのですか?

浅野:はい。配荷のみの売り場よりも売上は約2倍獲得できており、その要因に販売スタッフの派遣があると思います。ゾーニングをし、必ず接客するスタッフを派遣し、製品をフルラインナップで置いて展開しているので、取引先様からも好評です。弊社もセルアウトが進んでおり、非常にうまくいっているケースですね。

梅木:最近アパレルなんかでは「声かけないでバッグ」とかがあるじゃないですか。接客されるのが嫌ですという意思表示のための。アパレルに限らず、リアルな場ではそういうシーンが多いと思うのですが、御社のトゥルースリーパーに関しては必ずスタッフとお客様の間で会話が成立して、脅威的なコンバージョンを生み出しているわけですよね。それは最初からある程度想定されていたいのでしょうか?

浅野:そうですね。寝具売り場にいらっしゃるお客様は、睡眠に何かしらのお悩みを抱えている方々です。なので、お客様の方から「私に合う寝具を探したい」と積極的にお話されますね。

梅木:そうすると販売スタッフに求められるのは、製品のスペックというよりは、ライフスタイルに関するお悩みをちゃんと解釈して解決できる手段に導く力ということですね。

浅野:はい、そうですね。きちんと研修を受けてたスタッフを派遣し、お客様に適切な商品のご提案をしています。睡眠健康指導士の資格を持っているスタッフもいます。

チャネルごとのプライシングまで年間スケジュールでコントロールする

梅木:接客した時のログは何かしらの形で収集、分析されているのですか?

浅野:フィールドセールスというチームを設けています。このチームが店頭に出向き、スタッフと直接コミュニケーションしたり、時には接客しているので、現場のことは定期的に弊社のブランド側にフィードバックしていますね。

梅木:お話を伺うと、実は御社はずいぶん昔から「流通小売業」の側面も持っているのだということがわかってきました。下手な流通小売業よりよほどリアルのことを深く考えていらっしゃるなと。世の中的には通販企業として認知されていると思うのですが。

浅野:どうしてもテレビショッピングが目立ちますからね。しかし成長率だけでいうと、この数年はECと卸のリテールが非常に伸びています。

梅木:ECは市場の伸び率がどんどん鈍化しているというデータも出ていますが、ECで購入はしないけれども店舗でのコンバージョンに貢献しているというものを可視化する公式な指標が今はなく、各企業独自で「貢献KPI」のようなものを策定するケースが増えてきていますが、御社の場合、テレビショッピングやECがキッカケで来店購入に繋がるようなカスタマージャーニーはありますか?

浅野:あります。デジタルの広告はエリアごとに出し分けができるので、ショップ イン ショップに積極的に送客する等、意図的にやっています。

梅木:その流れでリアル店舗に売上が立った時に、それに対するデジタルの貢献を評価する制度や仕組みはあるのですか?

浅野:施策を打ったものに対しては、施策を打ったエリアや期間ごとに全チャネルで結果を分析しているので、リテールに対してデジタルがこれぐらい貢献しただろうというものは割り出すことができますし、実績として積み上げていっています。組織として、ECとリテールとコミュニケーションセンターというのが同じ本部に属しているので、どこで売上が立っても全チャネルで結果を見ようと、メンバー同士の目線統一をしています。

梅木:従来型のリテール企業では、店舗部門、EC部門、最近だとデジタルマーケティング部門が分かれていて、それぞれが在庫供給を受けてそれぞれのチャネルでいくら売り上げたか、ということを競っているというところもいまだに多いように感じます。御社のようにマーケティングと販売を一人の本部長配下にまとめて全体を見るというのは、簡単なようでなかなかできないことなのかもしれません。

浅野:さらに、弊社は同じ本部に「プライシング&マーチャンダイジング」という部署を設けまして、年間を通じて、この時期はどこの売場をベストオファーにするかということまでプランしてコントロールしています。オファーが強いチャネルと弱いチャネルが社内で競合してしまうのは本質的ではないですからね。

お客様にお買いものの楽しさをお届けすることが使命

 
梅木:今浅野さんが管轄されている組織は何部署、何名ぐらいいらっしゃるのですか?

浅野:アルバイトや契約社員を合わせるとコールセンターだけで500名弱います。正社員ですと、100名以上の組織になります。大きくは、Eコマースとリテール、コミュニケーションセンター、プライシング&マーチャンダイジング、それからチャネル専用製品などを扱っている「チャネルブランド」という役割に分けられそれらのディビジョンの下にEコマースだけでも、公式ストアサイト運営、外部ECサイト運営、クリエイティブやマーケティングのチームに細分化され、様々な担当役割があるので大きな組織ではあります。

梅木:それだけの部署、社員を持つ組織のマネジメントをする上で気をつけていることはなんですか?

浅野:私なりにこだわっていることなのですが、例えば私が週40時間働くとして、おそらく3/4は部下のための時間なんですよ。例えば部長クラスだと週に一度は必ず30分の1on1をやります。課長クラスだと2週間に1回、スタッフだと3ヶ月に1回ぐらいになってしまいますがクォーターごとに必ず1on1をして、私が今考えている方向性、会社の現状を話し、社員が今やりたいことなどをヒアリングし、フィードバックをしています。非常にアナログではありますが、本部内でスタッフが感じている課題やキャリアのことは私なりに把握をしていますので、それに応じて異動を促したりキャリアアップのための課題を出したり、比較的スタッフから見ても近しい存在であろうとしています。

梅木:会社のビジョンやミッションだけではなかなか現場で働いている方には伝わりづらいこともありますし、上位者からのメッセージを下のレイヤーまで浸透させるのは大企業になればなるほど難しいですよね。今後、組織をどのようにしていきたいという展望はありますか?

浅野:本部に限らず、会社として「ショップジャパンはただの物売り」という風にはしたくなく、楽しいお買いもの体験をお客様にお届けすることが私たちの使命です。そして、私たちの商品を通してお客様が抱えるお悩みや課題が解決し、楽しい毎日を送っていただけることに繋がると嬉しいですね。

梅木:商品のユニークさだけでなく、買い物の体験にもこだわっているんですね。

浅野:「(インフォマーシャルの)29分」が私たちの根本にあります。インフォマーシャルを見る29分前は決して要らないと思っていた商品も、映像を見続けていると29分後には、買ってしまうんですよね。「この商品を試してみたい!欲しい」と思っていただけるようなエンターテイメント性のあるデモンストレーションや映像づくりが私たちの強みです。
楽しいお買い物体験をお届けし続けてまいりますので、これからのショップジャパンにもご期待ください。

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