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2019年度上半期の小売業倒産数988件、飲食店は下半期も増加か

帝国データバンクは、2019年度上半期の小売業倒産件数を発表しました。
倒産した業種は開業から3年未満の飲食店がもっとも多く、一方で創業100年を超えるような老舗企業も廃業を余儀なくされています。
本記事では、データからみる2019年度上半期に倒産した小売業の内訳や特徴を紹介しています。

また、今後どのような点が倒産につながりかねないポイントとして挙げられるかについても挙げています。

【目次】

2019年度上半期の小売業、飲食店の倒産が増加

帝国データバンクは、2019年度上半期(4〜9月)の倒産件数について988件という調査結果を公表しました。
この数字は前年同期比に対して7.9%増で、倒産件数は3年連続で増加傾向にあります。
倒産した業種でもっとも多いのは飲食店で、件数は375件です。過去10年でもっとも飲食店の倒産件数が多かったのは、東日本大震災が起こった2011年度の732件でしたが、上半期のペースで倒産が相次げば、この数字に迫ることになります。

TDB「小売業者の倒産動向調査(2019年度上半期)」
http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p191002.pdf

増税とインバウンド需要の減少が一因に

上半期の倒産件数が前年比から増加した一因について、帝国データバンクは、消費税引き上げを控えていたことを挙げています。
政府は、期間限定で条件つきポイント還元を実施するなどして小売業者への負担軽減をはかっていました。しかし、軽減税率対応のレジが品薄状態に陥って引き上げ日である10月1日までに納品されなかったり、ポイント還元のシステムの周知が充分ではなかったりと現場レベルでの混乱も見受けられました。

こうした混乱に先立ち、ポイント還元制度の複雑さについていけないとして増税前に中小小売業者が廃業を決意する例もあり、その結果として倒産が増えたのではないかとしています。
また、中国からの観光客による「爆買い」ブームが落ち着いたことや政治的な問題による日韓関係の悪化などでインバウンド消費が減少したことも、倒産件数増加に影響しているとみられます。

原材料費の高騰に消費増税が追い打ちをかける

飲食業やアパレル関連では、原材料費と人件費の高騰も大きな影響を与えています。
2019年4月からは、原材料費および物流コストの上昇に伴うかたちで乳製品、飲料品、麺類製品など食品の値上げが相次ぎました。牛乳やヨーグルトといった乳製品はおよそ10円程度価格が底上げされ、大型ペットボトルの希望小売価格も2018年度から20円上げられました。

このほかに小麦粉の価格が上がっており、飲食店にとっては、増税前の時期に仕入れ値を提供価格に上乗せできるかどうかが焦点になった上半期でもあります。
原材料費が高騰すれば原価率は下がり、コストや人件費を削減しないと以前の売上を維持することは難しくなります。

しかし、2019年10月からは最低賃金の改定によって最低時給が引き上げられています。全国的におよそ20〜30円ほど最低賃金は上がっており、東京都と神奈川県では1,013円、1,011円と1,000円を超えています。全国加重平均額も、874円から901円に上がりました。
そのため、2019年度上半期をどうにか持ちこたえたという事業者は、下半期も引き続き倒産のリスクにさらされることになり、増税による消費の冷え込みと併せて厳しい局面に立たされているといえます。

【2019年度上半期倒産データ】業種別負債額および業歴からみる特徴

景気がよくないのはどの業界も同様ですが、倒産する企業の業歴や負債額は、各業界によって違いがあります。
「飲食店」、「織物・衣服・身のまわり品小売業」、「家具・じゅう器・家庭用機械器具小売業」の3業種の倒産について、特徴をまとめました。

飲食店は参入障壁が低く3年未満での倒産が多い

飲食店の倒産は、全体のおよそ4割にあたる375件の倒産が報告されています。
参入障壁が低いというメリットはあれど、流行や衛生面における評判の影響を受けやすく、リスク要因の多い業種といえます。
街じゅうにオープンしているタピオカドリンクのお店が、半年後に何店舗営業を続けているか……ということを考えると流行の影響はイメージしやすいかと思います。

また、食べログなどをはじめとするレビューサイトに「汚い」、「お皿が汚れていた」という旨の書き込みが投稿されると、場合によっては何らかのきっかけでSNSに拡散され一気に評判が悪くなってしまうこともあります。一部のアルバイト店員が食材をゴミ箱に投げてから調理する映像を投稿して大きなニュースになったこともありましたが、一度不祥事や不衛生なことが話題になってしまうと、そこから評判を回復させるのは至難の技です。

さらに、飲食店にとっては人手不足も重大な問題といえます。物流業と飲食業における人手不足はすでに慢性化していて、少ない人数で店舗を運営することによってサービスが行き届かなかったり激務で店員が辞職してしまったりするケースも珍しくありません。この負のスパイラルに陥ってしまうと、廃業やむなしと考える経営者は多いでしょう。

こうした事情から、飲食業経営業者は入れ替わりが激しい傾向にあります。2019年度上半期に、倒産した3年未満の企業は62件ですが、その36件(およそ6割)が飲食業です。この倒産件数の多さから、過去最多倒産件数を記録してしまった2011年度に迫るほど多くの企業が2019年度に倒産してしまうのではないかと、帝国データバンクは危惧しています。
さらに、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、受動喫煙防止が条例化され、対策の強化を求められることも予想されています。訪れる顧客だけでなく、働く従業員を受動喫煙から守る義務が生じるとされており、飲食店は今後もこうした対応に追われることが予想されるでしょう。

アパレル系の倒産は50億円以上の負債を抱えることも

「織物・衣服・身のまわり品小売業」いわゆるアパレル業は、倒産時の負債額が多額なことが最大の特徴です。
ちなみに、全体の負債規模をみると、1,000万〜5,000万未満がもっとも多く、全体のおよそ7割を占めています。
2019年度上半期における負債50億円以上の倒産は2件でしたが、そのどちらも衣料品販売業者でした。1件めの(株)リファクトリィは2019年5月に民事再生を申請、大阪のマザウェイズ・ジャパン(株)は2019年6月に破産を申請しています。

(株)リファクトリィは、銀座に本店を構え、自由が丘点を中心に首都圏や大都市圏に32店舗を出店、「J.FERRY」など人気のアパレルブランドを展開していました。オンラインショップも好調にみえましたが、粉飾決算が発覚してからは売上が大幅に減少、さらに簿外債務も多額となり、自主再建は難しいと判断して民事再生に至りました。
アパレル系企業は実店舗での販売以外に、EC向け対策が必要になっています。またECの運営にともなって、配送および在庫管理のシステム構築、人手確保などにコストがかかるようになりました。ゆえに多額の負債を抱えることが多く、その分日本経済に与える影響も大きいといえるかもしれません。

老舗企業も廃業せざるを得ない時代がきている

「家具・じゅう器・家庭用機械器具小売業」の2019年度上半期における倒産件数は55件でした。2017年度は96件、2018年度は86件で、このままのペースでいけば、前年度と前々年度を上回ることも充分予想されます。
飲食店は入れ替わりの激しさが特徴でしたが、この業界では業歴100年を超えるような歴史ある企業の倒産も確認されています。
2019年8月に破産した仏壇仏具の販売社である(株)大平仏壇の創業は1872年(明治5年)でした。
原材料費の高騰や人手不足、社会の変化などさまざまな条件が交差し、100年以上の老舗がその歴史に幕を下ろさざるを得ない、2019年はそんな局面となっているのかもしれません。

2019年度下半期はどうなる?倒産に関連しそうな変更点

2019年度上半期は倒産件数が多く、ペースから予想すると過去最多を記録した2011年度の件数に迫る勢いともいわれています。
下半期はどうなるのでしょうか?

下半期における最大の脅威は消費税増税

廃業の引き金になりそうなもっとも大きなポイントは、消費税増税です。ただ単純に8%から10%に引き上げられただけでなく、次のような付帯的影響が企業の経営に負担をかけることが予想されます。

軽減税率「イートイン脱税」トラブル

テイクアウト商品の提供をしつつ、イートインスペースでの飲食が可能になっている店舗は、持ち帰り商品(軽減税率対応で8%)とイートインでの食事(外食なので10%)とで価格を分ける必要があります。各税率に対応したレジの導入だけでなく、スタッフに対するマニュアルづくりや研修の実施などにコストがかかります。

これと併せて、キャッシュレス決済のポイント還元制度に対応している場合は、さらにレジ業務が煩雑化します。
10月1日には、軽減税率対応レジの納品が遅れているといった報告が相次いでいましたが、現在では持ち帰りの8%消費税で会計してイートインを利用する消費者を、ほかの消費者がみとがめてクレームを入れるという事態も報道されています。ネットでは、持ち帰りの低い消費税を払ってイートインを利用する人を「イートイン脱税」、それをみとがめる人を「イートインポリス」と称しており、どちらも混乱を招く存在になっています。
一般的に、イートイン脱税は常習的でない限り「脱税」というわけではなく、「イートインポリス」がレジに報告した内容が法的な証拠になるわけではありません。

しかし、こうしたクレームに対応することでレジスタッフが疲弊したり、イートインスペースを撤去せざるを得ない事態に発展したりするのは大問題で、飲食店の売上低下を招きかねないでしょう。
消費者同士がトラブルになると、店舗側の風評被害にもつながりかねません。飲食店廃業の危機は、こうしたトラブルからのレビュー数値低下や最低評価などから高まります。
テイクアウトとイートイン利用を提供している店舗は、慎重な対応、早急なマニュアル完備が求められるでしょう。

「駆け込み需要」後の増税による買い控え

消費税増税前には日用品などを大量に購入するいわゆる「駆け込み需要」がニュースで取り上げられました。駆け込み需要の後にやってくるのが、増税直後の買い控えです。特に、高額になりやすい家具や家電、消費税引き上げを実感しやすい外食は、当分我慢しようという消費者が多いかもしれません。こうした消費者感情を見すえて、増税後のセールを実施する店舗もありますが、消費者の大きな傾向として消費を控える動きが高まっているため、思うような成果が出ていないともいえます。
こうした冷え込みに対応しきれない小売店は、2019年度下半期に倒産危機を迎えてしまうかもしれません。

粉飾決算受け、金融機関は融資に二の足?

消費増税とは別の懸念もあります。
2019年に入って、長年の粉飾決算が明るみに出るケースがいくつか見られました。このことから、各金融機関とも融資に慎重な姿勢をとるとみられ、中小企業の間で懸念が広がっています。
輸送コストの高騰や最低賃金の値上げなどが重なっている状況で、融資を打ち切られたり縮小されたりしたら廃業せざるを得ないという小売業も少なくないでしょう。
金融機関の具体的な施策や発表については、今後も注意して情報を追っていく必要があります。

世界情勢の及ぼす影響

インバウンド消費は今のところ堅調ですが、かつての「爆買い」はみられなくなっています。
くわえて、韓国との関係について解決の糸口が見えないことも、インバウンド消費に対するマイナス要因の一つになっています。上半期にも影響を及ぼしたとされているアジア諸国の動静は、下半期も引き続き日本の経済に影響を与えるでしょう。

まとめ

増税が実行された2019年度下半期は、小売業にとってどのような日々になるのでしょうか。消費の冷え込みからの回復が早いか、倒産するのが先かという懸念も少なくないなかで、コストカットや売上管理などできることに取り組んでいく姿勢が求められるでしょう。

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