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製造業以外でこそ真価を発揮できる?「リーン生産方式」とは

日本は「モノづくり大国」で、製品の品質も世界一、と胸を張って言えた時代がありました。現状はというと、必ずしもそうとは言えない状況です。これは、日本のモノづくりの質が落ちた訳ではなく、他国の各企業のたゆまぬ努力により、世界的にモノづくりのレベルが格段に上がっているためです。

その背景には、「リーン(Lean)生産方式」の存在があります。元来、トヨタ自動車が「トヨタ生産方式(Toyota Production System, TPS)」として生み出された日本発のモノづくり理論は、その後リーン生産方式としてリバイズされ、今や製造業の枠を超えて、あらゆる業種業態の企業に適用され、そこからイノベーティブなサービスが生み出されています。

本稿では、改めてそんなリーン生産方式の基本的な考え方をおさらいしたいと思います。

目次:

TPSは、なぜLeanと呼ばれるようになったのか

前述の通り、リーン生産方式はもともと、トヨタ自動車が開発した製造プロセス、TPS(Toyota Production System)をベースにし、体系化されたものです。そしてTPSは、トヨタ自動車の元副社長・大野耐一氏が米国の自動車工場やスーパーマーケットから着想を得て体系化したものと言われていますから、日米間で輸入を繰り返しながら洗練されていった生産プロセスと言えるでしょう。

1960年代、トヨタ自動車がTPSによって低価格で高品質な自動車を生産し、米国に大量に輸出されるようになると、それが米国の自動車産業に多大なインパクトを与えました。なぜこれほどまでに低価格・高品質を追求することができるのか、そのカラクリに興味を持ったマサチューセッツ工科大学(MIT)のジェームズ・P・ウォマックとダニエル・T・ジョーンズは、TPSの研究を進め、「リーン生産方式が、世界の自動車産業をこう変える」という著書でその内容を発表します。

Leanとは「贅肉がなく引き締まった様」を表現する英単語であり、そのネーミングが示す通り、極限まで無駄を削ぎ落とす生産プロセスは、全米から注目されることになり、多くの製造業においてリーン生産方式が広く採用されるようになったという経緯があります。

リーン生産方式が製造業以外に転用できるワケ

もともとは製造業を中心に採用されていたリーン生産方式ですが、近年では業種業界を問わず、リーン生産方式の思考を取り入れることによって自社の生産性を高める、という取り組みが広く行われています。それは、たとえ商品が無形サービスの場合でも同様です。

なぜ製造業以外にもリーン生産方式の考え方が有効なのでしょうか。それには、自社にとっての「価値」と、「生産性」に着目する必要があります。

自社にとっての価値を見極める

自動車の製造であれば「価値」とは、紛れもなく「品質の良い車」のことになります。では、その品質とは誰にとっての品質かと言えば、車を購入する顧客です。そして、この考え方は、そのまま他の業種の全ての商品に当てはまります。「顧客が求めるもの」こそが「価値」であり、自社にとってそれが何であるかを突き詰め、言語化することからリーン生産方式の思考は始まります。

生産性を高める

「生産」とは「価値を生み出す活動」と定義され、全ての業務プロセスにおいて、それが「価値を生み出す活動」となっているかを意識し、そうなっていないものを「無駄」として徹底的に排除していくことが、すなわち生産性を高めることに繋がります。つまり、自社が生み出すサービスのバリューチェーン全体を見渡し、それぞれの業務プロセスにおける活動が全て顧客が求める価値を生み出せているかどうかを確認し、もしそうなっていなければ、それは無駄なものとして排除もしくは改善していくことで、生産性を高めていくことができます。

リーン生産方式における「無駄」の定義

リーン生産方式の最も大切なコンセプトは、徹底的に無駄(価値を生み出さない活動)を排除することです。そのためには、何が自社の事業にとって無駄であるのかを正しく見極め、それらを「見える化」し、改善しなくてはなりません。TPSにおいても「無駄取り」が最も重要視され、また、TIMから着目されたポイントと言っても過言ではありません。リーン生産方式では、以下の8つを典型的な無駄と定義しています。

1.造り過ぎの無駄

顧客が求めている以上に多くのものを造ってしまう無駄です。有形の商品であれば在庫を抱え過ぎることに繋がります。無形のサービスであっても、枠が埋まらない、顧客が求める以上に豪華にしてしまう(余剰部分が顧客満足度に繋がらない)、といった無駄が発生します。TPSにおいては「最悪の無駄」とされていました。

2.手持ち無沙汰の無駄

前のプロセスの作業を、後ろのプロセスが待ってしまっている状態ができる無駄です。こちらも稼働にロスが発生します。

3.運搬の無駄

これは主に製造業における話ですが、目的なく、部品や製品を仮置きしたり、積み替えたり、移し替えたりすることを無駄とし、必要な時に必要最小限な移動で済む体制を構築する必要があるとしています。

4.加工の無駄

加工することが商品やサービスの付加価値に繋がらない無駄です。例えばBtoBのビジネスで、プレゼン資料の見栄えを必要以上にいじり続けることなどもこれにあたります。

5.在庫の無駄

事業を行う上で、在庫は必要最低限にすることが理想であることは、流通小売業であれば常識でしょう。在庫を切らすことも、無駄に繋がります。

6.動作の無駄

価値を生み出さない人の動きは、すべて無駄なものになります。例えば、「定例会議における発表」が目的となってしまっている資料作りなどもこれにあたるでしょう。

7.不良を造る無駄

不良品、あるいは顧客に提供できないサービスを造り続けることは、その分のコストはもちろん、それらを手直しする時間も含めて無駄になります。特に製造業では、不良品が出たらラインを止めてでもその原因を究明し、そもそも不良品が生まれない体制に改善することが求められます。

8.顧客のニーズに合致しないサービスを生み出す無駄

OMO時代を迎えつつあるこれからの時代では特に、顧客の指向性が掴みやすくなっているだけに、顧客のニーズからズレたサービスはすぐに淘汰されてしまいます。しかし、そのサービスを構築するにはコストも時間もかかります。無駄を生み出してしまうリスクを小さくするためにも、PoCやアジャイル開発など、新しいサービスをスモールスタートで検証できる設計が必要となってくるでしょう。

ちなみに、これらの無駄は、企業の環境によってさらに2種類に分類されます。

第1種の無駄

現状の技術水準や生産環境では取り除くことができない、認識しつつも目を瞑らざるを得ない無駄です。これは、今後ますますテクノロジーが進化していく中で、経営課題として捉え、例えばデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する中で解消していけるものも多いでしょう。

第2種の無駄

価値を生み出すことに繋がっていない、今すぐにでも省くべき単純な無駄です。これは、何がボトルネックになっているのかを明らかにし、体制やオペレーションを改善することですぐに対処できます。

さいごに

「無駄を省く」と言ってしまえば簡単なようにも感じますが、実際は、その上流にある、自社にとっての「価値」とは何か、を突き詰めることは非常に難易度が高いものです。しかしながら、精度の高い価値の言語化ができた暁には、それは業務プロセス改善の際に明確な判断基準を得ることに繋がります。

また、事業全体だけでなく、プロジェクト単位、あるいは日々のルーティーンワーク単位でも、リーン生産方式の思考を取り込むことで、生産性を高め、個人やチームのパフォーマンスを高めることが可能となるでしょう。

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