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オーストラリアの小売事情をヒントに、日本における購買体験の質向上を考えてみる

筆者は、本メディアの記事執筆を中心に日本で活動をしていましたが、とある事情で、コロナウイルスの影響が大きくなりつつあった2020年の3月下旬、オーストラリアはシドニーエリアに移住することになりました。

オーストラリアがロックダウンするまさに前日にギリギリの入国を果たしてから約半年。現在のオーストラリアはCOVID-19の第二波をまともに食らっていて、飲食店を中心にビジネスへの影響もかなり大きいと言わざるを得ません。

そのような状況の中で、当然といえば当然ですが、いわゆる「Essential stores」と呼ばれるスーパーマーケットなどの小売店は軒並み好調を維持しています。

筆者が体験しているのは決して通常運転の状態ではないとはいえ、これまで全く無縁だったオーストラリアの小売事情に触れるにつけ、毎日の買い物において購買体験の質が非常に高いと感じる部分が多々あります。

そこで、オーストラリアのスーパーマーケットでの購買体験について、消費者視点で、日本におけるそれとの違いを詳らかにしていきたいと思います。

本稿における重要なポイントは、「消費者視点に終始する」ということです。企業側の事情は一切考慮せず、一生活者として、何に便利さを感じ、質の高い購買体験に繋がっているのかを掘り下げます。日本とオーストラリアでは事情が違う部分も多々あるものの、顧客の体験価値を上げるヒントになる部分が少しでも見つかれば幸いです。

目次:

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オーストラリアにおける二大スーパーマーケット

まず前提として、筆者が生活をしているのは、シドニーの中心地から数キロ北上したエリアです。ごくごく平均的な都市部であり、東京で言えば世田谷区のようなイメージが近いかもしれません。

オーストラリアにおけるスーパーマーケットと言えば、「Woolworhts(以下、ウールワース)」と「Coles(以下、コールス)」がツートップであり、感覚的には一つの町には必ずどちらかの店舗が、場合によっては両方の店舗が存在しています。

冒頭でも述べましたが、COVID-19の影響が拡大しはじめた3月こそ両者とも一時的に売上が落ちましたが、生活と密接に関わっているだけあって、4月にはすぐに業績も回復。さらに、オーストラリアの各種メディアのレポートによると、ウールワースの2020年3月四半期の売上は前四半期(2019年12月期)から10.7%増加して149億豪ドル(約1兆1338億円)、同じくコールスの2020年3月四半期の売上は前四半期から12.9%増加の92豪億ドル(約7,000億円)と、両者とも四半期の売上で前期を上回る成長を見せています。

(出典:Australian Stock Report)https://www.australianstockreport.com.au/insights/woolworths-group-ltd-march-quarter-2020-sales-report#:~:text=What%20are%20the%20key%20features,in%20the%20December%20quarter%202019). https://www.australianstockreport.com.au/insights/coles-group-ltd-march-quarter-2020-sales

オーストラリアのメディアでは、この数字は、小売店が軒並みCOVID-19の影響をまともに受けて閉店せざるを得ない中で、生活必需品を求める消費者が両者に集中したことが要因と分析しています。もちろん、それはあるのでしょうが、それだけの消費者の需要を支えるインフラとオペレーションが確立されている、という部分はやはり注目に値するでしょう。

筆者の自宅近辺にも、ウールワース、コールス併せて4店舗(コールス2店舗、ウールワース2店舗)も存在しており、もっと家に近いスーパーマーケットはあるものの、日々の買い物で両者を能動的に利用する機会が圧倒的に多いです。

それはなぜかと問われたら、やはり購買体験の質が圧倒的に高いから、という結論に集約されます。

以下で、実際に買い物を繰り返す中で感じる購買体験の高さについて述べていきます。今回は、両者に共通の購買体験について言語化することを目的とし、差別化ポイントについてはあえて言及しません。

実際、「便利だ」と感じる多くのポイントは、両者に共通しているものです。

筆者撮影

オーストラリアでは車移動が前提

オーストラリアは、車社会です。そして、スーパーマーケットをはじめ、大型の小売店は、たとえ都市部であっても、大量の車を停めるためのパーキングが必ず併設されています。

日本と比較して圧倒的に利便性が高いと感じるのは、ほとんどのスーパーマーケットにおいて駐車券を必要としないという点です。

比較的新しい店舗の駐車場では、車のナンバーをカメラで認識してバーが開閉するタイプのものが多い印象です。そして、もともと車移動が大前提となっていますから、大抵は2時間までの駐車は無料に設定されています。2時間あれば充分買い物に時間をかけられますし、決済時にいちいち駐車券を差し出す手間がありません。

車での来店が前提となっているということは、すなわち各消費者が大量の商品を購入することが想定されているということであり、店内から駐車場までのカートの動線もしっかり設計されています。東京のスーパーマーケットなどでは店外にカートを持ち出す習慣はあまりないと思いますが、こちらでは全てのスーパーマーケットの駐車場がIKEAやコストコの駐車場のような作りになっている、と考えていただければ、その利便性がイメージできるかと思います。

プライベートブランドの充実ぶりがすごい

これは日本でも同様の現象が起きていると思いますが、両者のプライベートブランドは、品揃え、価格の両面でかなり充実しています。

野菜、パスタ、牛乳やバターなどの乳製品、調味料から洗剤やキッチン用品まで、ありとあらゆるジャンルのプライベートブランド商品が棚に並んでおり、それらはとにかく低価格。一般的なスパゲティは一袋80セントから、開ければすぐ使えるパスタソースは1ドル強で販売されているので、4人分の食事が2ドル(約150円)以下で用意できる計算です。

筆者は一度、プライベートブランドではない食洗機用洗剤をほぼ三倍の価格で購入し、妻に咎められたこともあります。

あくまで主観になりますが、それほど低価格でありながら品質も決して悪くはない、むしろ極めて高いと思います。流通規模が大きいですから、生産を請け負う企業としても大幅なディスカウントに応じることができるのでしょう。

筆者撮影

セルフレジが浸透

最近では日本のスーパーもかなりセルフレジ、セミセルフレジが浸透し始めている状況だと思いますが、オーストラリアではそれより以前からセルフレジが普及しています。

ウールワースもコールズも、このセルフレジの仕様はほぼ同様です。筐体の左側にスキャン前の買い物カゴを置く台があり、真ん中でスキャン(あるいは重量計測)、そして右側に「Bagging Area(バギングエリア)」と呼ばれる袋詰め作業をする台があります。

決済方法は、基本的にクレジットカード(あるいはデビットカード)に主眼が置かれています。たとえば筆者の近所のウールワースでは、セルフレジエリアにある21台の筐体のうち、15台がカード専用のもので、キャッシュに対応しているのは6台しかありません。

現在はCOVID-19の影響もあり、使用できる筐体は1台おきとなっている店舗がほとんどです。

筆者撮影

重量センサーの感度に改善の余地あり?

セルフレジ自体は非常に作りこみが丁寧で、直感的に操作できるUIになっていると感じます。しかし、バギングエリアの重量センサーの感度によって、全くスムーズに進まないことも多々あります。

重量センサーは、スキャン前と後の重量を計測することで万引きを防止するセキュリティ的な意味合いを持っています。今は無料のレジ袋が廃止されたこともあり、マイバッグの持参が基本になっているのですが、マイバッグの中にちょっとしたもの(日焼け止めやら水筒やら)が入った状態でバギングエリアに設置すると、どういうわけかスキャンした商品をきちんとバッグに入れたにも関わらず、「商品をバッグに戻せ」というアラートが出てしまうのです。

そのアラートが出ると、リセットするにはスタッフに操作をお願いするしかなくなるのですが、下手すると一度の会計で5、6回スタッフを呼びつけることになります。空いていればいいのですが、夕方など混雑している時間だと、スタッフが対応してくれるまで時間がかかるので、非常にストレスが溜まります。

この辺り、まだまだ改善の余地はありそうです。

非接触決済カードが主流

オーストラリアにおけるクレジットカードは、すでに非接触型の「タッチ決済」が主流です。筆者はこちらでクレジットカードを作っていないので、未だに日本から持ち込んだICチップ型のカード(こちらでは「ディップカード」と言います。ちなみに磁気テープのカードは「スワイプカード」です)を利用していますが、こちらではもうほとんど利用している人がいないのか、たまにリーダーがうまく作動しないときなどにクレジットカードを店員に渡すと、面倒臭そうな顔をされることもあるほどです。

非接触型カードは、決済にかかる時間が大幅に短縮されるので、消費者にも店舗にもメリットしかありません。衛生面から見ても、自分のカード以外のものに触ることなく決済完了できるタッチ決済は、COVID-19の影響によって日本でも今後ますますニーズが拡大するでしょう。

日本ではキャッシュレス推進という名目でQRコード決済も広く浸透し始めていますが、実際に日々の買い物で使用してみると、利便性の視点では非接触型カードによるタッチ決済(スマートフォンも含みます)一択だろうと思います。

筆者撮影

交通系電子マネーが使えるともっといい

一点、残念だなと思うのは、日本においては当たり前となった交通系電子マネーを買い物の決済に利用するスタイルが、こちらにはない、ということです。

NSW州の公共交通では、「Opal Card(オーパルカード)」という共通のカードを使って電車やバスを利用します。オーパルカード自体はスマホにアプリをインストールすることでオートチャージが可能だったり、週末割引や回数割引が適用されるなど、かなり充実しているのですが、そこまでできるのであれば、日本人の感覚としてはそれを買い物の決済に利用したくなってしまいます。

クリック&コレクト、デリバリーにも対応

やはり、というべきか、ウールワースもコールスも、クリック&コレクトやデリバリーなど、様々な買い物の仕方に対応しています。

筆者はまだ利用したことがありませんが、感染のリスクを減らす意味でももっと利用されるべきなのかもしれません。

一方で、意外なことに両者とも店舗アプリはそんなに充実しているとは思えません。

コールスには店舗アプリ自体が存在しませんし、ウールワースには「Woolwoths Fresh」という、レシピと材料のオンラインショッピングが連動したアプリが存在するのですが、UIが非常に悪い上に動作にも難があり、使う気にはなれません。

この辺り、しっかり機能するアプリの開発がいかに難しいか、ということを端的に表しているとも捉えることができるでしょう。いずれ改善されるのかもしれませんが、現状では利用者はウェブブラウザからオーダーができているから問題ない、という感覚なのかもしれません。

オーストラリアの小売特有の決済システム「Lay-by(レイバイ)」

これはスーパーマーケットの話ではないのですが、非常にユニークなので、最後に少し触れておきます。

オーストラリアの家電量販店やインテリアショップなど、比較的高額商品を扱う小売店には「Lay-by(レイバイ)」という独特の決済システムが利用できるようになっています。

これは、目当ての商品を購入するのに持ち合わせがない場合、レイバイを申し込むことによって店舗に商品をキープしてもらい、少しずつ分割で支払っていく、というシステムです。クレジットカードによる分割払いとは違い、金利はかかりませんが全額を支払うまで商品を持ち帰ることはできません。

いわゆる「現金のある時払い」を体現したシステムですが、最大限キープしておける期間や、一定期間内に最低限支払わなければいけない金額などは定められています。

例えばキープできるのは最大6ヵ月まで、2週間ごとに最低5ドルの支払いが必要、といった具合です。

このシステムは店舗側としてのメリットが見えづらいのですが、消費者側からすれば、日雇い労働者など収入が安定しない人や、所得が低い人たちからは重宝されるものなのかもしれません。

「テクノロジー+いい意味での適当さ」が、心地よい購買体験に繋がっている

これまでの5ヶ月間で感じたのは、オーストラリアにおける小売業のテクノロジーやサービスは、イメージと違ってかなり進んでいる、ということです。

これは偏見でしかありませんが、渡豪前は、オーストラリアはあらゆる面において、いい意味で適当である、というイメージを持っていました。それに付随して、サービスの質は良くも悪くも属人的なものに依拠していると思い込んでいたのです。

しかし、実際はシステム的にかなり合理化されていて、不便さを感じることはあまりありませんでした。

加えてイメージ通りの「いい意味でいい適当」な部分もうまく働いていて、それが日本で感じるある種のストレスを軽減してくれている気がします。

例えば宅配便などは、こちらから何も言わずとも勝手に玄関前に荷物を置いていくため、セキュリティ面は置いておけば、確実に受け取れますし、配達日時指定のやり取りに心を砕く必要がなかったりします。

必要なのはテクノロジーだけではなく、顧客との関係性の再構築

これには賛否両論あると思いますが、ここに、心地よい購買体験を生み出すある種のヒントがあるのではないかと感じています。

つまり、テクノロジーで合理化できる部分は徹底的に合理化しつつ、ある種の適当さを店舗側も顧客側も許容する下地があれば、大抵のことは許せるし、便利なことには感謝して、伸び伸びと生活できます。

もう少し具体的に言えば、買い物時に顧客が選択できる様々な方法をシステムとしてはきっちりと用意しておいて、スタッフはそれを案内しさえすればいいし、できないことはできないと対等に伝えればいい。仮にそこで希望の商品が見つからなかったり、希望に添えなければ、それはもう仕方ないよね、と顧客も割り切って納得できる、そんな世界観が文化として形成されれば、自ずと購買体験の質は上がるのではないでしょうか。

2019年のオーストラリアの幸福度ランキングは世界で11位とかなり上位でしたが、それはここで述べたことと無関係ではない気がしてなりません。

本当の顧客視点で突き詰めたDXを実装し、その後は人間対人間としてスタッフと顧客が対等にコミュニケーションできる世界——つまり、テクノロジーだけではなく、顧客との関係性の再構築こそが重要になる——日本の小売業が目指すべきなのは、実はそういう姿なのではないだろうか、と感じるようになった5ヵ月でした。

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