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間もなく日本上陸の「b8ta」に見るOMO。近い将来「当たり前」になる未来店舗のカタチ

DXコンサルタントの村上です。「OMO(Online Merges with Offline、オンラインとオフラインの融合)」というテーマは、ここ数年、小売関係のメディアでは何度も取り扱われています。こまめに業界情報を摂取されている方、特にDXの本質を捉えている経営者層にとっては、もはや目新しくもないワードかも知れません。

しかしながら、DXコンサルタントとして様々な企業のお客様とお話をしていると、実は現場担当者の方にとってはまだまだOMOという言葉自体が浸透していないことを実感するのです。

OMOはともするとバズワード的な捉えられ方をされることも多いのですが、実際、あと数年もすると、今までは夢物語だったような小売のカタチが当たり前のものとなる可能性を秘めています。

もちろん、そのような世界観の実現は一筋縄で行くものではありません。逆に言えば、だからこそ、今、OMOの本質を捉えて、すぐ目の前に迫っている小売の未来を形にするための準備をしておかなければ、あっという間に取り残されてしまうリスクがあるのです。

そこで、本稿では、これまでOMOに触れたことがない人にも分かるように、改めてその本質と、未来の小売が実現しようとしていることを解説したいと思います。

目次:

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OMOを理解しないと小売業のパラダイムシフトについていけない

仕事上、私のお客様とデジタルトランスフォーメーションの話などをした時に感じるのが、どうしても「システムとしてのチャネルの統合」や、「その結果どのような機能が持てるのか」「その機能でどんなサービスを提供するか」ということだけにしか目線が行かないということです。これは、現場の担当者の方には特に多い傾向だと思います。

仮にOMOという言葉をご存知だとしても、基本的にオムニチャネルと同義の言葉(あるいはオムニチャネルの延長線上にある言葉)という認識である場合が多く、やはり、システムや機能の話に終始することが多いと感じます。

システムや機能はもちろん大切なのですが、今再現できるものにしか考えが及ばないと、今後必ず訪れる小売業界のパラダイムシフトについていくことができなくなってしまいます。

OMOという概念では、「顧客の行動データ」が非常に重要な意味を持ちます。特に、これまで取得することが難しいと考えられていたリアル店舗における顧客行動データの収集が、小売業界の未来を劇的に変えると考えられているのです。

これから小売業界に起きることを正しく理解するには、やはりOMOについても正しく理解しておく必要があります。

改めてOMOとは何かをおさらいするために、「アフターデジタルの小売ビジネスはOMO型店舗へシフトする」なども参考にしてみてください。

未来店舗の一形態として最注目の「b8ta」

OMOを体現している店舗の事例として、今最も注目すべきなのは、シリコンバレーに本拠地を置くb8ta(ベータ)です。

b8taは、RaaS(リテール・アズ・ア・サービス、サービスとしての小売)のパイオニアと言われており、2015年に米国サンフランシスコで創業。現在では米国内に24店舗、ドバイに1店舗を構えています。今年の夏にはいよいよ日本にも上陸し、新宿と有楽町で2店舗を展開する予定です。

b8taの店舗で扱っているのは、ガジェットやテックプロダクトを中心とした斬新なプロダクトの数々で、b8taへの出品者は、月額1200ドル〜2000ドルの出品契約料を支払って店舗の一角に商品を展示します。

RaaSとしてb8taが優れているのは、顧客が実際にプロダクトに触れて体験することができる実店舗への出店を、まるでオンラインメディアへ広告を出稿するのと同じぐらい手軽なものにしているという点。そして、最大の特徴は、店内に設置したカメラとAIを駆使して、実店舗へ来店した顧客の行動データを取得・分析し、出品者にフィードバックしている、という点です。

取得しているデータは、どんな属性(年齢や性別)の来店者が、どのプロダクトの前でどれぐらいの時間立ち止まったのか、実際に手に取ってみたのか、などなど、これまでのリアル店舗では数値化して定量的に測定することが難しかった類のデータばかり。

これらのデータは契約料を支払っている出品者にフィードバックされ、プロダクトのブラッシュアップやマーケティングに活かされることで、さらに良い顧客体験を生み出す糧となるわけです。

リアル店舗での顧客行動データ取得は「当たり前」になりつつある

このように、リアル店舗における顧客の行動データを取得し、そのデータをさらなる顧客体験の向上に繋げるというループは、店舗というリアルな「場」も含めて全てが常時デジタルに繋がっていることが前提となる(つまり、オフラインという状態は存在しない)これからの時代において、小売業界として「当たり前」の状態となっていくでしょう。そして、それこそが、まさにOMOという概念が生み出す小売の未来なのです。

その兆しは徐々に見え始めていて、例えば蔦屋家電+(プラス)や、昨年リニューアルオープンした渋谷パルコに出店しているBooster Studio by CAMPFIREなどは、b8taと同様、テクノロジーを駆使して店内における顧客の行動を収集し、出品者にフィードバックするスタイルを取っています。

小売業のニュースタンダードを形成する3つのキーワード

上述した3社はいずれもリアル店舗というタッチポイントを第三者に提供するビジネスモデルとなっていますが、当然、同様のテクノロジーを自社のリアル店舗で活用する、という流れもいずれ来ることは間違いないでしょう(実際、福岡に本拠地を置くスーパーセンター「トライアル」では、2018年から独自の店内行動分析の実証実験を行なったりしています)。

したがって、今、OMOとは無関係だと思っている小売業関係者も、これらの事例はもはや決して「最先端」というものではなくなっている、という意識を持つべきです。言い換えれば、自分たちの事業にも同様の仕組みを組み込んでいくイメージを持つべきなのです。なぜなら、いつ何時この動きが加速し、小売業のニュースタンダードになってもおかしくないからです。

特に、リアル店舗内の行動データ取得、分析にフォーカスして言えば、それがスタンダードになるための条件として重要なのが「デバイスの進化」、「AIの進化」、「5Gの普及」という3つのキーワードです。

以下で、それぞれのポイント、そして実現できる未来をかいつまんで列記してみます。

デバイスの進化

今はまだ、店内行動分析に必要なカメラやセンサーの類が比較的高額であるため、特に規模が大きな小売企業にとっては導入コストが莫大になる、という課題があります。しかし、これらのデバイスの価格はいずれ必ず低下します。そうすれば、全国に店舗を展開する規模の企業でも、カメラやセンサーを全店に導入することも現実的となるでしょう。しかし、当然のことながら、その状態になってから初めて準備を始めたのでは遅いのです。

AIの進化

現時点でも、機械学習・深層学習という領域におけるAIの精度はかなり高くなっており、これらの活用がマーケティングをはじめとする事業活動において、すでに重要な役割を担っているのはご存知の通りです。そして、少し先の未来では、単なる顧客の店内行動だけでなく、表情や声から得られる「感情データ」を収集することで、AIの分析精度がさらに加速度的に向上していくことが見込まれています。

5Gの普及

いよいよ実用化が目前と迫った5Gも、店内行動データの活用を加速させる重要な要素の一つです。なぜなら、5Gの持つ特徴である、大容量、低遅延、大量接続によって、店内で収集した感情行動データをAIにインプットする速度と、その分析結果をアウトプットに反映する速度が、ほぼタイムラグなしのリアルタイムになるからです。

すると、オンライン上ではおなじみのMA(マーケティングオートメーション)によるシナリオを、店舗内でリアルタイムに発動させ、接客に反映することなども可能になるはずです。例えば「店舗内でワクワク度が80になったお客様には販売スタッフが◯◯という商品をオススメする」というようなことですね。

かつ、5Gであれば、接客する人間も、その顧客に相性がピッタリの販売スタッフを遠隔地から呼び出してバーチャルライブ接客をする、というようなことまでできるかもしれません。

なおかつ、設定したシナリオの実施評価フィードバックも高速になるため、「リアル接客のABテスト」を実施する、ということまで考えられます。

まとめ

もちろん、ここで挙げた「未来予想図」は、全てが同時に出揃う保証はありません。しかし、繰り返しになりますが、出揃うまで待ってから準備に動き始めたのでは、時すでに遅し、となっているリスクがないとは言い切れないのです。

これからはますますプロダクトの機能そのもので大きな差別化をすることが難しい時代です。だからこそ、店舗での購買体験が少しでも不便と感じられた瞬間に、顧客の選択肢から外れてしまうリスクがあるからです。

テクノロジーはもはや最先端のスタートアップやベンチャー企業だけのものではありません。伝統的な企業も含めて、全ての小売企業が自社のビジネスモデルを俯瞰して、それをどのように取り入れていくか、顧客体験として何が生み出せるのかを、今、生き残りのために真剣に考えなければいけない時なのです。

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この記事を書いた人

村上 永吉
株式会社エスキュービズム DXコンサルティング部シニアコンサルタント
アミューズメント施設店舗責任者やエリアMGに6年従事した後、ORANGE POS販売拡大時期のエスキュービズムに入社。200社以上の店舗システム導入実績に由来する豊富な業務知識と理解に基づいたIT構想の実現提案を得意としている。趣味は麻雀。好きな役はドラが頭のメンタンピン一盃口三色で倍満。

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