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成功する店舗アプリと失敗する店舗アプリ〜徹底的な顧客視点によるUXデザインの重要性〜

今、世界規模で多くのリテール企業が、店舗アプリの開発に力を注いでいます。

OMOの実現が必須となりつつある今、実店舗で様々な効果(集客〜顧客満足度醸成〜リピート)の発揮が見込める店舗アプリは、店舗のDXを推進する上でも重要な項目の一つと言えるでしょう。

一方で、コストをかけて開発したアプリが顧客に使用してもらえず、思うような成果を挙げられない、という企業もあります。

店舗アプリの成功と失敗を分けるポイントは何なのでしょうか。答えはとてもシンプルですが、それは同時に、解決するのが非常に困難な課題でもあるのです。

目次:

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「作ること」自体が目的になっているアプリは失敗する

(本稿も含めて)今は「これからはDXでOMOを実現が必須」といった趣旨の記事が、メディアに並んでいます。その事象自体は間違いのないことです。しかしながら、それを「OMOを実現するために、DXでアプリを作ることが必須」と捉えてしまうのは間違いです。

店舗アプリを作ることも、DXも、そしてその先にあるOMOも、全ては顧客の心を捉えるための手段に過ぎないからです。

DXの本質は、どこまでいっても「顧客がそのサービスを心地いいと感じるか」が全てです。店舗アプリに当てはめた場合、それを使った結果、顧客が能動的にまた店舗に来たくなるかどうか、ということになります。

どうしたら顧客がそう感じてくれるのか、それを設計することこそがUX(ユーザーエクスペリエンス=体験)をデザインです。

徹底的な顧客視点によるUXデザインが成否を分ける

UXは、UI(ユーザーインターフェース=アプリで言えば画面の設計やデザイン)とセットで語られることが多いため、「店舗アプリのUX」と聞くと、アプリの使いやすさのことである、と捉える方もいますが、ここでいうUXとは、アプリを起点とした購買体験全体の設計のことを指しています。そして、UXデザインに必要不可欠なのが徹底的な顧客視点です。

店舗における体験が大事とは言っても、顧客にとって良いと感じる体験はそれぞれです。また、たとえ同じアプリの機能を搭載し同じ体験を提供していても、その価値は企業や業種業態よっても違ってくるはずです。

なぜ、EC全盛の時代に、顧客が自社の店舗を訪れるのか?

訪れた顧客に何を提供すれば満足度が上がるのか?

自社の状況(課題や顧客層)を的確に把握し、これらの問いに明確に答えが出せない限りは、有効な店舗アプリを生み出すことはできないでしょう。

「収集したデータをサービスに還元する仕組み」構築までがUXデザイン

成功する店舗アプリで欠かせないのが、

①顧客がアプリを使用する機会をなるべく増やすこと

②一つ一つの行動から顧客データを集めること

③集めたデータを分析し、サービスに還元する

①に戻る

というループを生み出す設計です。

①は、ここまで述べてきた通り、徹底的な顧客視点で、顧客が能動的に使いたいと感じる機能をなるべくたくさん搭載することが必要です。

そして、②③が、店舗アプリがOMOを実現できる所以となります。

①でタッチポイントとなるアプリへの接触頻度を上げたら、そこから顧客のデータを収集します。データは、集めただけではただの数字ですから、それらを分析し、その結果を既存のサービス、あるいは新規サービスとして顧客の体験に還元します。

こうして、既存顧客はそのブランドや企業そのものへの満足度を高め、好意的な気持ちで再びサービスを利用するのです。この時、利用するサービスが店舗とは限りません。ECかも知れないし、あるいは全く別のタッチポイント(たとえば新規事業など)かも知れません。

顧客とのタッチポイントでの接触頻度を可能な限り増やすことで、そこから得られるデータによって深い顧客理解を生み出し、さらに良い顧客体験をオンライン、オフラインの区別なく、顧客の望むポイントで提供する。

このループを生み出すことこそがOMOの実現であり、店舗アプリは、その「起点」として非常に重要な役割を果たすことができるのです。

店舗アプリが有効なのは、スマートフォンが顧客のあらゆる行動起点になるデバイスだから

極端な話をすれば、顧客視点で突き詰めた時に「アプリは必要ない」という答えにたどり着くのであれば、それでも構いません。

しかし、多くの場合、やはり店舗アプリの存在は重要なものとなるはずです。なぜなら、今の時代、全ての顧客の行動は、スマートフォンというデバイスが起点になっているからです。

スマートフォンには、もはや顧客の生活全てが詰まっているといっても過言ではありません。そして、顧客がこれほど肌身離さず持っているデバイスは、今の所他には見当たらないでしょう。

つまり、顧客との接点をいかに長く頻繁に持てるかを考えた時に、スマートフォンを活用する店舗アプリはどうしても外せない施策となってくるのです。

裏を返せば、今後さらにテクノロジーが進化して、スマートフォンを持たずとも決済ができる(例えば生体認証などで)が当たり前になればその限りではない、つまり、店舗アプリに依存したサービスがむしろ邪魔になる時代がやってくるのかも知れません。

タッチポイントを高頻度にする店舗アプリ機能の一例

それでは、店舗アプリを用いて、どのように顧客と接点を持てばいいのでしょうか。以下でその一例を見ていきましょう。

プッシュ通知

新商品やディスカウントの情報などを、アプリ登録者のスマートフォンに通知し、来店を促進することができます。ジオフェンスなどを活用すれば、店舗の近くにいる特定の顧客に対してのみ、情報をプッシュすることもできるので、効率よくタイムリーな情報を届けることも可能です。

チェックイン

スマートフォンの位置情報やビーコンを用いて、来店時や特定の場所に顧客が立ち寄った時にポイントを貯める、クーポンを配布する、といった仕組みで来店と販売を促進できます。やり方によっては顧客にスタンプラリー的な体験を提供することも可能です。広い店舗であれば店内回遊を促進する使い方も考えられるでしょう。

クーポン

クーポンは最も手軽で有効な販促手段の一つです。上述したプッシュ通知やチェックイン機能と連携させ、クーポンの内容をコントロールすることで、その時々に特定の顧客に対して効率的な販促を実施することが可能です。反面、カンフル剤的な側面もあるため、集客が慢性的なクーポン依存に陥る可能性もあるので注意が必要です。

ポイントカード

こちらも定番のアプリ施策です。それ自体にリピート促進の効果があるのはもちろん、顧客のランク付けを行うことで、購買頻度に合わせた販促施策を展開することも可能です。

取置き/BOPIS機能

在庫管理を店舗とECで統一し、その情報を可視化。アプリ上で商品の取置きや、BOPIS(Buy Online, Pick up In Store=オンラインで購入し、店頭で受け取る)の受け取り場所、返品場所を自由に指定できるサービスは、今後ますますニーズが高まっていくでしょう。OMO時代のスタンダードな機能の一つであると言えます。

「徹底的な顧客視点」に立つこと自体の難易度が高い

ただし、ここに挙げた各機能の説明文は、あくまで企業側からの視点になっていることにお気づきでしょうか。

確かにこれらの機能があることで、企業が大きなメリットを享受する場合もあります。しかし、何度も申し上げているように、UXを設計するにあたり最初からそのメリットだけを見ながら組み立ててしまうと失敗を招く原因となります。

OMOの実現には、そのタッチポイントから取得したデータを、さらなる魅力的なサービスに還元できる仕組みが絶対的に必要なのです。たとえば、新商品の情報をプッシュ通知で顧客に送ったとしても、顧客がそれを「いい」と感じなければ、それは全く意味がないものになります。

生み出す「体験」は、決して派手なものでなくてもいいのです。たとえ地味な施策でも、自社にとっての課題や、顧客のペインポイントを注意深く見極め、それらを取り除くだけで顧客の反応は変わるでしょう。

決して安くはない投資をしたからには、目に見える効果を出すこと、すなわち定めた指標をクリアし続けることは非常に重要です。それだけに、どれだけ気をつけていても、徹底的な顧客視点(それはしばしば、コストだけが嵩み、直接的に売上に跳ね返らないものも多い)に立てるマインドセットを経営者が獲得することは非常に難しいことであると言えるでしょう。

国内外の店舗アプリ事例

最後に、これまでの話を踏まえ、国内外の店舗アプリ事例を見ていきましょう。ただし、企業ごとに持っているブランドの資産や抱えている課題は全く違うため、同じ施策をそのまま自社に当てはめようとしても上手くいくものではありません。

あくまでも、自社で顧客視点に立った場合、どんなことが考えられるか、というインスピレーションを得るための事例とお考えいただく方がいいでしょう。

ユニクロ

以前から全方位的にOMOの実現に力を注いでいるファーストリテイリングのユニクロアプリは、本稿でも例に挙げたような機能(チェックイン、クーポン、ポイントカード、在庫確認、BOPISなど)を幅広く備えており、あらゆるアパレルブランドにとってお手本となるようなアプリであると言えます。

アプリを起動してから1タップで会員証を提示できたり、AIチャットボットを搭載することで幅広い年齢層(特にアプリに触れ慣れていない高齢者)に対するサポートを手厚くするなどUIの作り込みにも優れており、実際、アプリ分析ツールのAppApeの調査によると、主要アパレルブランドのアプリの中でも圧倒的な月間利用者数(800万人以上)を誇っています。

ちなみに、同社が手がける姉妹ブランド、GUのアプリも同様の機能を備えていますが、こちらは店内の商品をスキャンして気になるレンド商品の在庫やスタイリング例が素早くチェックできるなど、より若い世代に向けた作りとなっています。

ナノユニバース

ナノユニバースは以前から、店舗への来店そ促進し、より良い顧客体験を生み出すネイティブアプリの作り込みに全力を注いでいるブランドとして知られています。同社はもともとEC化率も45%と極めて高く、アプリに投資するベースが出来上がっているところから、オリジナリティの高い様々な施策を導入しています。

登録情報に応じて還元率がアップする会員制度(求められる情報を全て入力すると還元率が高くなる)によって顧客データを「納得がいく」形で収集したり、顧客がアプリ上でスクリーンショットを撮ると、画面に商品番号が自動的に付与され、顧客が保存したスクリーンショットをスタッフに見せた際に素早く対応できる、といった機能は特にユニークな部分です。

同社では、リアル店舗でのコンバージョン4%程度のうち、アプリで事前に情報を見てから来店した顧客のコンバージョンは24%にも登ると言い、この数字は、OMO施策におけるアプリの重要性を裏付けていると言えそうです。

ターゲット

海外においても、大手のチェーンストアはこぞって店舗アプリの開発に力を注いでいます。米国大手のターゲットもその中の一つで、同社のアプリは、ディスカウントストアらしく、割引機能が非常にユニークなものになっています。

中でも特徴的なのが「Circle Offers」と呼ばれるクーポン機能で、顧客は店内にある500〜700種類のディスカウント対象商品から、購入したい商品をアプリ内でタップしてリストに登録し、決済時に店舗のレジでバーコードをスキャンしてディスカウント商品を受け取る仕組みになっています。ディスカウント商品は定められた期間内であれば1人の顧客が何度でも購入できるため、それを目当てに利用する顧客も多く、リピート来店の促進効果が高い施策となっています。

また、ターゲットは店舗が広いため、対象商品が見つけやすいようストアマップ上に表示してくれるなど、ユーザビリティに関してもかなり作り込まれたアプリです。

ウォルマート

最後に紹介したいのは、米国小売大手ウォルマートのアプリ施策、それも、現在は撤廃された施策についてです。

いち早くOMO施策への投資を始めていたウォルマートは、2014年から「Saving Cacther」と呼ばれる人気のアプリ施策を実施していました。これは、ウォルマートで購入した商品のレシートをアプリでスキャンすると、AIが自動的に地域の競合店における同じ商品の最低価格を検索し、最安値を顧客に知らせる機能です。

仮にウォルマートで購入した価格より安い価格が見つかれば、顧客はその差額を店舗で使用できるeギフトとして受け取れる仕組みになっており、「(結果的に)最安値で購入できた」という満足感、そして「いつでも最安値で購入できる」という安心感を顧客に与え、同時に次回の来店促進にも繋がる優れた施策となっていました。

しかし、「Saving Catcher」は昨年2019年の5月に撤廃されることになったのです。

この決定について、ウォルマートの言い分は「ほとんど全ての商品を、常に最低価格で提供しているため、必要なくなった」というものでした。それが本当であれば、確かに顧客は最安値で買えたかどうかを確認するために、逐一アプリを起動させる必要などありません。ただターゲットで欲しい商品を手に取りさえすればいいので、そちらの方が顧客体験としてはスムーズで快適なはずです。これは、とことん顧客の面倒を省いた「引き算のUXデザイン」と見ることができるのです。

一方で、こういったテクノロジーを用いて快適なサービスを維持し続けることは、規模が大きければ大きいほど、そのコストは莫大なものになります。そういったコストを削減するために、ウォルマートは「Saving Cathcer」をい撤廃したのだと見る向きもあります。

あるいは、その両方が真実であり要因、ということも考えられるでしょう。いずれにしても、この事例には、UXのデザインにおいて考慮しておくべきことについて様々な示唆が詰まっていると言えるのではないでしょうか。

つまり、本当に顧客のためになり、それが企業の売上に還ってくる店舗アプリのUXをデザインし、かつそのサービスクオリティを維持し続けるのには、想像以上に体力がいることだということです。

だからこそ、有限のコストでDXの効果を最大化するために、まず、自社と顧客にとって何が最優先に解決すべき課題かを見極める必要があるのです。

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