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無人店舗から広がるマイクロマーケットの可能性。顧客体験はどう変化するか

マイクロマーケットは、「小さな商圏」に特化することで今の時代に即したビジネスを展開できる可能性をもっています。

コロナ禍でデジタル化が急速に進んだことで、消費者の購買行動は大きく変化しました。買い方の変化に合わせて、企業はOMO型店舗、ECと連携したコンセプトショップなど新たな売り方を模索し続けています。

発表当初、アトラクションのような「購買体験」であった無人店舗も、時代に即した「当たり前の購買行動」へとアップデートされつつあります。マイクロマーケット化には無人店舗という施策も有力で、コンビニでは夜間のみを自販機販売に切り替える併用型運営もみられます。

社会変容に応じて人々のライフスタイルや購買体験は、確実に変化しています。マイクロマーケット化が進むことで、小売の未来はどのように変化するのでしょうか。

ここでは、商圏を拡大するのではなくマイクロ(点)化することの意義を、社会の変化に関連させて解説しています。

マイクロマーケット化がコスト削減や省人化にもつながることと、「レジ」そのもののあり方が変化する可能性についてもふれ、無人店舗やセルフレジ、自販機型販売といった販売方法について紹介しています。

無人店舗はマイクロマーケットへ進出傾向

マイクロマーケットとは、工場内やマンション、病院、オフィスといった極小の商圏を意味します。

近年では、スムーズなマイクロマーケット運用にあたって自販機型販売や無人店舗が注目されるようになりました。

極小の商圏で成功するには、省スペース化、省人化を達成する必要がありますが、自販機販売や無人店舗ならそのどちらもクリアできるからです。

面や線の商圏からマイクロ(点)へ

これまで、商圏の設定といえば店舗の立地だけでなく、周囲を行き交う人の年齢・性別といった属性、店舗周辺施設と人の流れ、といった「面」と「線」を考慮するのが当たり前でした。

オフィス街や学生街なら昼間人口が多い、商業施設の多い地域なら休日の人口が多い、住宅街であれば夜間人口が多いなどといった傾向が明確に出てきます。これらの傾向をふまえた上でどのような店舗運営を行なっていくかが、成功のカギを握っていました。

しかし、少子高齢化によって人口そのものが減少している、都市に人口が集中していて従来のような「面」と「線」での商圏設定が成り立たない、テレワークをはじめとする働き方の多様化により大きな傾向を把握しにくい、といった事情によりこの手法は通じなくなりつつあります。

例えば、同じような規模のオフィス街であっても、テレワークが浸透している企業が多い地域と、出勤者の業種が多い地域では、昼間の人口は異なってきます。

また、少子高齢化は働き手不足にも直結しており、商圏の問題と人的リソース問題の解決は一本の直線上にあるといってもいいかもしれません。

そこで注目されているのがデジタル技術の導入を検討しながら、店舗の役割を再定義するという方法です。ネットとシームレスな連携をはかれる店舗、無人店舗のように最新技術を使うことで新たな意義を与えられる店舗などが必要です。

ECが普及した今、広い面積を確保して豊富な在庫を用意しておくことは絶対に必要というわけではない場合もあります。むしろ、倉庫や多店舗間での在庫管理をスムーズに行い、スピード感を持って商品を消費者に届ける方がニーズに合致するケースもあります。

コンビニはマイクロマーケット化する?

工場や住宅街、病院、マンションなどにある店舗の中で、特にマイクロマーケット化が進むと想定されているのがコンビニです。

コンビニは、全国に5万店以上展開していますが先に述べた少子高齢化、人材不足の慢性化の影響を大きく受けています。そのため、今後は得られた消費データを活用した効率的な運営形態へとシフトしていくとみられています。

その先駆け的存在が自販機コンビニです。アパレルやスーパーと違って商品説明の機会が少ないコンビニは、自販機型の販売に適しているといえるでしょう。消費データを分析すれば、小さなスペースでも効率的に売れ筋の商品を配置することができます。また、コンビニのフランチャイズ店では24時間営業のための人員配置が大きな課題となっていましたが、これも自販機コンビニなら解消することができます。

コンビニにとって、省スペースと省人化を一挙に解決できるマイクロマーケット化は魅力的であり、実現の可能性が高いシステムです。そのため、自販機コンビニだけでなくさまざまな形でのマイクロマーケット化が進むと考えられています。

マイクロマーケットに適したシステムとは

ここで考えるべきなのは、マイクロマーケットに適したシステムです。

マイクロマーケット化の目的は、店舗の省スペース化、省人化、そして変わりゆくライフスタイルに即したかたちでのアップデートです。

成功させるためには、導入コストに対して何らかの成長や可能性が見込めること、コストカットが目に見える形であらわれること、などが必要になります。

例えば、省人化によって単純作業ではなく人にしかできない創造的な作業に充分なリソースを割けるようになる、人件費を気にせず長時間営業できる、といったことです。

マイクロマーケット化には、先に挙げた自販機型とAmazon Goのような無人店舗型、消費者がレジを自分で操作するセルフレジ決済と、タグやセンサーを活用して買った商品を認識し決済する「商品認識型」などさまざまなシステムややり方があります。マイクロマーケット化について検討する時には、どれが自社の商品や運営実態に合うのかについて調査・検討をしていく必要があるでしょう。

自販機なのか無人店舗なのか

自販機といえば飲料だけと思いがちですが、お弁当やパン、おにぎりなどの食材から、タオル、下着類、化粧品などあらゆるものを自販機で販売することができます。自販機には冷蔵〜冷凍など温度設定できるタイプと常温で販売するマシンがあるので、商品によってそれらを使い分けることができます。

以前から、コンビニでは、店内に自販機を設置しておいて夜間のみ自販機営業に切り替えるといった実証実験も行われています。試験的に導入して結果が得られれば、どこの店舗でも時間で販売方法が切り替わるような営業スタイルがみられるようになるかもしれません。

一方で、無人店舗は、入店から消費者が商品を選び決済するまでの行動をどのように追跡していくかという問題の検討なしに導入できません。言い換えれば、無人店舗は決済システムをどのようなスタイルにするかによって、まったく異なる可能性が拓けていくことになります。

スタッフを必要としない無人店舗は、「店舗」という形を保ちながらも1坪程度のスペースで営業ができるため、まさにマイクロ(点)での戦略展開が可能になります。

セルフレジなのか商品認識なのか

セルフレジは、多くの店舗ですでに導入されていて、実際に消費者として使ったことのある人も少なくないでしょう。セルフレジは消費者が自分で決済というアクションを行うことで、従来の店舗での買い物とあまり大きな差がないという特徴があります。

そのため、新技術に抵抗を感じる、操作しにくいなどという層が多く利用する場所では、セルフレジ型の運営の方が安心して利用してもらえるかもしれません。

一方で、入店から商品選択、決済までを一本化できる商品認識システムの導入は、購買体験をまったく新しいものとして提供できるという強みがあります。

2016年に初めて米国にAmazon Goが登場してからしばらくは、ユーチューバーが万引きを成功させたとする動画をアップするなどトラブルがゼロというわけではありませんでした。

また、日本で行われたコンビニの商品認識システム実証実験も、入店人数が著しく制限されるなど実用とは若干距離が離れた地点からのスタートでした。

しかしそれらは過去のものになりつつあり、現在の無人店舗テクノロジーは、利便性と安全性が格段に向上しています。

無人店舗は顧客の出入りをチェックイン、追跡、チェックアウトのような形で管理しているため、レジシステム自体は不要となります。

オムニチャネルのシステムを整えてデータ連携することで、レジ機能と購買データの収集が行えるため、より包括的なデータ活用が可能になります。

無人店舗のあり方は進化しており、現在では消費者が商品を手に取ってまた戻すという動作をしても正しく購入した商品だけを決済することができるようになっています。

以前の無人店舗は電子マネーやクレジット決済のみでしか利用できませんでしたが、現金決済ができるシステムも登場し、入店時のアプリ認証を設定しなくても運用できるなど、顧客満足度を高める仕組みが完成しつつあります。

Amazon Goの登場は鮮烈でしたが、年月が経過した今では「未来の店舗」ではなくなりました。より現実的な購買体験の構築に向かって、地道に進化を続けています。

マイクロマーケットが持つ可能性

自販機によるマイクロマーケット化、セルフレジや商品認識システムを導入した無人店舗によるマイクロマーケット化、そのいずれにも共通するのは「顧客体験の進化」です。

コロナで生活様式が変化する前から、ECの台頭によって実店舗が提供できる顧客体験は大きな意味を持つようになっていました。

実店舗では、商品が実際に並んでいて顧客はたくさんの商品から自分が買いたいものを選び、店員の説明を聞いたり試着をしたりと商品を「体験してから」購入します。これはオンラインショッピングではできない強みとされていて、顧客体験をいかに提供するかが実店舗の価値を強めるための施策とされてきました。

2020年以降、大きな社会変容があっても顧客体験こそ実店舗の強みというマインドは基本的に揺らぐことがありません。しかし、デジタル技術が飛躍的なスピードで進化していく今、「顧客体験」のあり方自体は大きく変わっています。

実店舗ならではの顧客体験:社会変容で戻るもの戻らないもの

海外では、アフターコロナで訪れる変化として「対面」や人とのふれあいが以前よりもっと特別で価値のあるものになるだろうという予測がされていました。リモート会議やオンライン授業、ウェビナーが当たり前になった現在、この予測はおそらく半分当たっているといえるでしょう。

しかし、オンラインが身近になったことで人々の心境にも変化があらわれているのも事実です。例えば、全国から出張で集まっていた年一回の研修が、実はオンラインで充分効果を実感できるものだった、慣例化していたミーティングの回数を感染対策で減らしたが却って業務効率が向上した、など以前とまったく同じには戻らないのだと実感する瞬間は誰にでもあるはずです。

同様に、 ECが手軽になったり、OMO型店舗の重要性が認知されるようになったりしたことで、店舗のあり方も大きく変容しました。店舗を必ずしも購買につなげるのではなく、「商品と出会う場」として利用するというポップアップショップなどはその典型でしょう。見本を置いたり、試着する場を提供したりして、ショッピングそのものはECに、という方法はすでにアパレル、インテリア用品などの分野で当たり前になりつつあります。

真に価値ある顧客体験を提供するには、行動変容と社会のあり方の変化に対してどのように消費者意識が変化しているか、それを見極める必要があるでしょう。

新技術はやがて「当たり前」に。目新しさだけに依存しない顧客体験を

もうひとつおさえておくべきなのは、驚くような新技術もいずれは普及し当たり前になっていく、ということです。

自販機で飲料以外を購入すること、無人店舗で買い物をすること、これらの購買行動は少数である間は特別な体験ですが、普及してしまえば当たり前の購買行動になります。

コロナウイルスが蔓延した当初、世界的なアーティストがリモートでそれぞれの演奏を収録し、オンラインで世界に発信したライブは大きな話題になりました。ですが、規模の差こそあれオンラインライブ自体はすでによく知られたものになって、多くのアーティストが開催しています。

つまり、目新しさやテクノロジーにのみ気を取られるべきではありません。マイクロマーケット化の目的やその先にある企業成長を見越して、自社に合ったスタイルを確立し、時代に合わせた形に都度アップデートを行っていくべきなのではないでしょうか。

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