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流通小売業だからこそ求められるCMOの役割

CMO(Chief Marketing Officer、マーケティング最高責任者)という役職は、アメリカの企業などでは比較的多く設置されており、「CMOのいる企業は、いない企業よりも平均で15%業績が良い」と結論づける研究も存在します。

一方で、日本国内では、日本マーケティング協会によって「CMOソサエティ」が発足されるなど、その存在が注目されているのにも関わらず、導入している企業はかなり少ない、あるいは導入してもうまく機能しない、といった状況にあるようです。

日本でCMOが普及しない背景には、欧米との企業文化の違いなど、様々な要因があると考えられます。また、業種によってもCMOが担う具体的な責務は違ってくるでしょう。

本稿では、特に流通小売業にフォーカスしながら、そこでのCMOの役割や、CMOに相応しい人物像などについて考察したいと思います。

目次

マーケティングが担うものは多岐に渡る

CMOはマーケティングの最高責任者ですから、その役割について考えるには、まずマーケティングの定義について考える必要があります。

「マーケティング」という言葉は広く一般的に普及していますが、実はその定義についてはあまり普及しておらず、人によって解釈がまちまちである、という事実があります。その結果、人によってはマーケティング=広告宣伝に関わるものと捉えている人も少なくないのが現状です。

しかし、マーケティングが担うものはもっと多岐に渡っており、それを確認できるのが、多くの書籍や論文の中でマーケティングを定義する際に最も引用される、アメリカ・マーケティング協会(AMA)が提唱している以下の定義です(2007年に改訂されたものが最新)。

“Marketing is the activity, set of institutions, and processes for creating, communicating, delivering, and exchanging offerings that have value for customers, clients, partners, and society at large.
マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである。”

これを見れば、CMOが目を配るべき範囲というのは、決して広告宣伝のためのコミュニケーションだけではない、ということがわかります。流通小売業に当てはめれば、顧客にとって価値のあるもの(=商品)を創造すること、例えば消費者が求める商品を開発することや、その商品を購買しやすくするためのチャネルや物流の整備までもマーケティングの範疇ということになります。

また、中古車販売業のガリバーを展開する株式会社IDOMのマーケティング責任者、中澤伸也氏は、今、マーケターの役割がこれまでのものから大きく変わってきていると語っています。

“私の考えるマーケターの役割は、ユーザーのインサイトを発見すること、どのような付加価値「バリュープロポジション」を構築するかを考えること、そのバリュープロポジションをどのように恒久的にユーザーへ提供するのかという「バリュープロセス」を構築し推進することの3つです。私はこれをIVVと呼んでいるのですが、IVVの仕組み全体を構築していく、サービスマーケティングの開発こそがこれからのマーケターの役割だと考えています”
IDOMが挑む、OMO時代の中古車販売業の確立〜見込み客を「ストックする」デジマ活用術〜 より引用

この中澤氏の発言からも、CMOに必要なのは「バリューチェーン全体を見渡し、各所においてもっともパフォーマンスを発揮できる仕組みを構築できる能力である」ということが伺えます。

DX、オムニチャネル/OMOの実現こそCMOの役割

このように、CMOに求められるのは、例え縦割りの組織の中でも、その垣根を飛び越えて社内を啓蒙し、必要な調整ができる権限と資質といえます。

例えば現状盛んに実現の重要性が叫ばれているデジタルトランスフォーメーション(以下DX)や、実店舗とEC部門をつないだオムニチャネル化、OMOの実現などは、まさにCMOが戦略の立案から実行まで、全面的にリードしていくべき課題と言えます。なぜなら、これからの時代に求められる企業となるために、どのような価値を顧客に提供できるかが、そこには詰まっているからです。

企業によってはDXの推進は情報システム部門、あるいはそれを統括するCIO、もしくは技術部門を統括するCTOが行う場合もあるかもしれません。仮にCIOやCTOがマーケティング視点を持ってそれを行えるのであれば、それでも全く問題ないでしょう。

しかし、そのようなプロジェクトでは、適切なKPI/KGIの設定が必要不可欠であり、その結果如何でもっと投資を広げるのか、方向を転換するべきなのか、勇気を持って決断しなくてはならない場面が連続します。市場を見ながらそれができる適任者は、やはりマーケティングを専門領域として知識と経験を蓄えたCMOであると言えます。

逆に言えば、CMOはテクノロジー領域のトレンドにも精通し、そこから自社に取り入れるべきものを正しく取捨選択できる目を持っておく必要があるのです。

理想的なCMOには広く強い権限が付与されるべき

上記のようなDXをCMOが推進する場合、当然それ相応の権限がCMOに付与されていなければスピード感を持った実行はできません。

まず、そのDX自体が最重要な経営課題である、と認定される発言権が必要となりますし、投資予算を決裁する権限(あるいはそれを財務側に認めてもらえるだけの権限)も必要です。そして、各部門に対してオペレーションの変更を通達できる権限や、場合によっては商品の価格やローンチ時期などを決定できる権限までをCMOが握った方が良い企業もあるかもしれません。

プロモーション等、顧客とのコミュニケーション設計やそれに付随する予算について自由にできる権限については言うに及びません。

もちろん、それだけの権限を与えられるからには、それらを確実に成果に結び付けられる能力も同時に求められるのがCMOという立場であると言えます。

業種によってはCMO廃止の流れもあるが……

マーケットイン、顧客視点の発想が企業を成長させるという確信が、CMOの存在意義に繋がっているわけですが、ここまで見てきたように、極端に言えばCMOが見るべき範囲は企業活動の全てに関わってくるとも言えます。

当然、企業ごとに最適な責務と権限の持たせ方があるわけですが、最近ではCMOという役職を廃止し、CGO(Chief Growth Officer、最高成長責任者)やCCO(Chief Customer Officer 最高顧客満足責任者)といった役職を設置する企業が出てきています。

例えばコカ・コーラ社は2017年にCMO職を廃止し、CGO職を新設しています。アメリカではCCO Councilという組織が早くから設立され(2008年)、フォーチュン100(全米上位100社)のうち22%がCCOというポジションを設置しているという調査結果もあります。

大きな視点で捉えれば、企業ごとに呼び方が違うC×O職であっても、マーケットイン、顧客視点が自社の成長に繋がるという意味では、背負うべき役割には共通するものがあるはずです。

ポジションのネーミングが企業としてのカルチャーや哲学を表す側面もあると思いますが、本当に見るべき大切な部分は、そのポジションをもってどのように組織を引き上げていくかに他なりません。

少なくとも、これからの流通小売業界においては、マーケティングの定義に照らし合わせた時に、CMOだからこそ成し遂げられる、そして成し遂げるべき経営課題が山積していると言えるのではないでしょうか。

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この記事を書いた人
池 有生

広告会社コピーライター、ウェブメディアライター等を経てエスキュービズム入社。趣味はサーフィン。3姉妹の父。ワーク・サーフ・ライフバランスの最適化を模索中。

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