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なぜ百貨店は「コンシェルジュサービス」に勝機を見出せたのか

三越、伊勢丹、東急、高島屋、西武——今、並み居る大手百貨店が有料の「コンシェルジュサービス」に力を注いでいます。

百貨店のお家芸とも言える、おもてなし重視の対面接客を打ち出すこのサービスは軒並み好評を博しており、各社は今後も同サービスを強化していく流れになりそうです。

それにしても、デジタル全盛の時代に、なぜ百貨店は人が前面に立つ「コンシェルジュ」という接客手法を選択したのでしょうか。そして、なぜそれが受け入れられたのでしょうか?

コンシェルジュサービスの背景にあるものを紐解いてみたいと思います。

目次:

長らく「訪れる理由」が見失われていた百貨店

まず、百貨店が今展開しているコンシェルジュサービスに行き着くまでの道のりを簡単に振り返ってみましょう。

戦後直後の百貨店は、存在しているだけでその街が潤う存在であり、たとえ買い物をしなくても、週末家族で百貨店に出かけること自体がレジャーとして成立する良質な体験でした。

そしてスーパーマーケットの登場後、百貨店は「高級路線」となり、高価なブランド品と丁寧な対面販売を強みとして、バブル崩壊前までは大いに潤っていたと言えるでしょう。

しかし、自家用車の普及、バブル崩壊後の低価格重視、そしてインターネット普及後のECの隆盛など、様々な天変地異的な環境変化によって、多くの消費者にとって百貨店は「訪れる理由」の見つからない存在へと追いやられてしまいました。

「様々なものが買える場所」や「リーズナブルな買い物ができる場所」であれば、郊外型のアウトレットモールや大型ショッピングセンター、そしてECに軍配が上がってしまうからです。

こうして百貨店は、売上の長期的な減少傾向、地方においては多くの百貨店が閉店に追い込まれるという憂き目に遭っています。

しかしながら、そのような逆境の中でも百貨店の売上を支えてきたのが、「外商」と呼ばれる、一部の富裕層向けの商慣習でした。

百貨店の外商部員は、売り場を通さず顧客の自宅を訪問し、濃密な関係を構築した上で、顧客のありとあらゆるニーズに答える、まさに「コンシェルジュ」のような存在です。そしてこれこそが、現行の「コンシェルジュサービス」の原型になっていると言えるでしょう。

コンシェルジュサービス3つの成功要因

サービスを提供する場所が顧客の自宅か、店内かという違いはあるものの、百貨店が長年培ってきた外商ビジネスでの知識と経験が、現在展開されているコンシェルジュサービスの礎になっていることは想像に難くありません。

それではなぜ、コンシェルジュサービスが現代の消費者に受け入れられ、成功に繋がっているのでしょうか。その要因は、大きく3点あると考えられます。

1:「モノを売ること」を第一義としない

コンシェルジュサービスが打ち出している最大の価値は、モノを売ることではなく、顧客のニーズに応える「提案」にあります。そしてその提案は、もともと百貨店が持っている価値、すなわち「あらゆるカテゴリーの商品が一箇所に集まっている」ことと「専門知識と経験豊富な販売スタッフによる接客」の掛け合わせによって成立しています。

例えばアメリカの百貨店「Nordstrom Local(注※)」などに代表されるように、世界的に見ても、今は「その場で購入させることを目的としない店舗」が増えており、顧客はそこで商品を手に入れる以上の深い体験を得ることに価値を見出す傾向にあるのです。

※商品を陳列せず、オンラインショッピングのピックアップやスタイリングコンサルティング、バッグや靴のリペアなど各種「サービス」に特化した店舗

2:ITの進化

これまで一部の富裕層だけのものだった外商ビジネスの門戸を幅広い顧客層に対して開くことを可能にしたのは、顧客を一元管理するためのDMPやCRMなどの存在と言えます。

これまでは、外商部員が長い期間をかけてコミュニケーションを取り続けることで蓄積していた様々な顧客情報も、システムを活用すれば、たとえ新規顧客であっても情報の管理や共有が比較的スムーズに行えます。

3:「提案」のパーソナライズ

これはITの進化と地続きですが、CRMなどを駆使し、顧客の趣味嗜好などを時にはリアルタイムで共有することで、常に顧客一人ひとりに合わせた最適な提案を可能にしています。

「パーソナライゼーション」はこれからの時代における重要なキーワードであり、対面接客という密度が濃く、熱量の高いコミュニケーション自体をパーソナライズできるのは、これまで培ってきた接客の知識と経験という無形の資産がある百貨店ならではの強みです。

圧倒的にクオリティの高い、パーソナライズされた提案を受けられるという事実は、それだけで百貨店を訪れる明確な理由として成立するのです。

実際、コンシェルジュサービスの開始以降、各社とも想定以上の利用客が訪れており、モノを売ることを第一義にしないとながらも、コンシェルジュの提案を受けた顧客の購買額は結果的に数倍に伸びるケースもあると言います。

コンシェルジュサービス強化に特に力を入れる三越日本橋では、2020年度、コンシェルジュサービスによる50億円の売上増を目指しており、話題になった「西武・そごう」の2020年正月広告よろしく「逆転劇が始まります」といった様相を呈しています。

ブランドや売り場を横断した提案が顧客満足度を高める

コンシェルジュサービスの細かい中身は百貨店ごとに異なりますが、多くの百貨店で取り入れられているのが、「パーソナルカラー診断」です。

これは、顧客ごとに違う肌や目、髪の色などに合わせて本当に似合う色をプロの目で診断した上で、洋服などのコーディネートに活かすというもの。「提案のパーソナライゼーション」からサービスをスタートしているというわけです。

そして、カラー診断を踏まえた上で、洋服だけでなく、靴、アクセサリー、時計などまで含めた全身のコーディネートを、顧客が希望するTPOに合わせて提案してくれます。もし、パーティなどを開催する立場なのであれば、ケータリングの中身から会場装飾まで同時に相談することもできます。

百貨店というと利用客の年齢層は比較的高いというイメージを持つ方もいると思いますが、コンシェルジュサービスの利用者は、意外にも若年層が多いのだそうです。祝い事や贈り物など、伝統的な儀礼や作法が必要なシーンに関する相談も多いと言います。

もちろん、定めるターゲット層や発揮する強みは百貨店ごとに異なりますが、いずれの百貨店も顧客情報をCRMで管理し、ブランドや売り場を横断してパーソナライズされた提案を提供することで顧客の満足度を高めている、という部分は共通していると言えるでしょう。

コンシェルジュサービスを「スーパーコンシェルジュサービス」にするには?

今後本格化するアフターデジタルの世界においては、コンシェルジュサービスの核となるパーソナライズの精度を圧倒的に高めていくことで、百貨店のさらなる強みに繋がるでしょう。

接点を増やして顧客把握の精度を高める

例えば、様々なIoTやAIを駆使することで店内の行動観察などを取り入れたり、百貨店から発信する様々なタイプのコンテンツを用意し、SNSなども含めて積極的に顧客との接点を増やすなど、顧客の趣味嗜好を把握する精度を高める余地はまだまだあると考えられます。実際に接客にあたるコンシェルジュも、把握した趣味嗜好や好意度に基づいて、顧客に合わせてパーソナライズする、という考え方もあるでしょう。

コンシェルジュをインフルエンサー化させる

もう一点、コンシェルジュのプレゼンスを高めて、百貨店が自社で抱えるインフルエンサーとして際立たせるという方向性も考えられます。それが実現できれば、コンシェルジュに会ってコミュニケーションを取ること自体が「百貨店を訪れる理由」になるからです。

インフルエンサー化したコンシェルジュを中心に、顧客のインサイトに沿った様々なコミュニティ(例えば料理、旅、アート、など、可能性は無限にあります)を形成することで、リアルイベントやワークショップなど選択できる打ち手が増えますし、その体験がまた既存顧客のエンゲージを深めたり、新規顧客を獲得するための装置としてもワークするかもしれません。

さいごに

上で述べたような「スーパーコンシェルジュサービス」が実現できれば、百貨店は今後、リッチな体験を提供してくれる場所として、再び圧倒的な存在感を放てるのではないでしょうか。

また、本稿で考察した「提案のパーソナライズ」は、百貨店に限らず、あらゆる流通小売業にとっても、これからの時代におけるビジネスの在り方のヒントになるものです。コンシェルジュという形式でなくとも、顧客との接点を増やし、そこから得られたデータに基づいて最適なサービスを提供するという考え方は、常に念頭に置いておきたいところです。

そして、それを実現するためには、あらゆるチャネルの顧客データを1DBで管理するシステムをいち早く構築しておく必要があることは言うまでもありません。

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